【デイパックの基礎知識】断崖絶壁で生まれ、街に下りてきた“名作バッグ”の歴史

【断崖絶壁で生まれてから街へ下りてくるまでの歴史を知る】
誰もが一つは持っているだろうデイパックですが、その生い立ちを知っている方はどれだけいるでしょうか。カバンとしての定義や誕生背景など、基礎知識を一から勉強しましょ!

Q.デイパックってナニ?

A. 気軽な行楽用にスペックを抑えた鞄。デイパックの成り立ちにそんな考えを抱いていた人は、断崖絶壁に挑むクライマーたちに向けて開発されたと聞けば驚かずにはいられないだろう。

デイパックがケルティの創始者、ディック・ケルティ氏によって発表されたのは、1970年頃のこと。当時の使用方法は、今日のそれとは随分異なっていた。前提として、クライマーは最も身軽な装備で断崖の頂を目指す。そして目指すべき場所に着いてから、絶景を眺めながら自然を楽しむための食料や衣類をロープで引き上げる。このときに用いられたカバンこそが、デイパックだったのだ。

バックパックといえば大きなアルミ製フレームパックが全盛だった時代。コンパクトかつ軽量なデイパックの登場は、当時のアウトドア市場に革命をもたらした。やがて街へとそのフィールドを広げたデイパックは学生のお洒落鞄となり、今日目にするスタイルが確立されていくのである。

デイパックが生まれる前は教科書や本を直接手で抱えていた?

1950~60年代の学生ファッションといえばアイビールックと相場が決まっていた。教科書やノートの類は裸で持ち歩くのが〝粋〞とされ、ブックバンドでこれを束ねる姿もよく見られた。今客観的に見ると……かなり不便そうですな。

Q.リュックサックとデイパックって何が違うの?

A. リュックサックとは独語でバックパックのこと。だからデイパックも広義ではリュックサックに該当する。

ここで興味深いのは、日本のアウトドア用語には欧州圏の言葉と英語の双方が存在しているという点。この背景には、第二次世界大戦後、日本へ最初にアウトドア文化をもたらしたのが欧州であり、その後、1970年代に入ってアメリカのアウトドアレジャー文化が紹介され、浸透したという経緯がある。

断崖を登り頂上での休息を楽しむ。その際の食料や衣類を収納するのがデイパックの役割だった。当初は登りきってから縄で引き上げていたが、その後、写真のように背負ったまま登れるものも生まれた。

Q.デイパックの“正しい”背負い方ってあるの?

A. 機能面でいえばしっくりくるように背負うのが正解なので、人やモノによって異なるといえるが、ファッション的見地からいえば気をつけるべきポイントはある。それは背負う高さ。デイパックの上部に指2本分ほどの余裕が生まれる高さで背負うと、最もバランスよく見えるのだ。理由のない限り、↓のNG例はゆめゆめ避けるように。

指二本開け

正解は高すぎず低すぎずの背負い位置。背中との間に、指2本分ほどの余裕ができる位置にストラップを調整すると、バランスがいい。

チャラ持ち

えぐすぎぃ~、と語尾を伸ばしているであろう人物像を思わせるのが、ストラップ長すぎのルーズな背負い方。大人は真似しちゃダメ。

マジメ持ち

ストラップを短くしすぎると、マジメ臭全開に。ぴったりフィットさせたいのはわかるけれど、ファッション的には完全にアウトです。

Q.デイパックはどうして“お洒落”になったの?

A.クライマーに向けて開発されたデイパックが、街へと下りるのにそう時間はかからなかった。時代はヒッピー文化が花開いた1970年代の初頭。ヨセミテ渓谷に距離が近いカリフォルニア州バークレーには、アウトドア専門店が数多く軒を連ね、そこではデイパックも扱われていた。

これに目をつけたのが、名門カリフォルニア大学バークレー校の生徒たち。1日分の食料や衣類を持ち運ぶのにジャストなサイズ感は、教科書やノートを入れるのにもうってつけだったのだ。なお、この時代はバックパッキングの流行を受けて、モノを背負うというスタイルが生活に浸透した頃でもあった。デイパックを颯爽と背負いキャンパスへ向かう姿に、学生たちが新鮮な魅力を感じたことは想像に難くない。

思いがけず最先端のお洒落鞄となったデイパックはその後、学校の生協でも販売されるほどのメジャーな存在となる。1985年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、イーストパックのそれが衣装として用いられ、主人公の高校生という役作りに貢献した。

もっと知っ得コラム
デイパックの“?”なディテール解説

当たり前のようにデザインの一部になっているデイパの仕様あれこれ。コレにはちゃ~んと意味があるのです。

【ブタ鼻】ピッケルを掛ける

菱形の革パッチに2本のスリットが入った通称〝ブタ鼻〞。スリットはラダーストラップを通すためのもので、ピッケルの柄を固定するのにこれを用いる。このときにピッケルはデイパ下部のループから通し、落ちることのないよう、ループをねじって固定する。

【ブタ鼻】その他にも……

ブタ鼻に通したラダーストラップやカラビナを使えば、さまざまなものをホールドすることが可能。脱いだネルシャツをここに掛けたり、マグカップを掛けたりといったスタイルが、アウトドアシーンで自然と確立された。1980年代には、ブタ鼻のスリットに直接バンダナを通すのがオシャレとして流行。今や甘酸っぱ~い思い出ですな。

【レザーコンビ】

底面がレザーで切り替えられたデイパを見かけるが、これは単なるデザインではなく強度を保つためのもの。教科書などの重く、硬い荷物を入れても響かないよう、肉厚なレザーで補強しているのだ。一説によると、ジャンスポーツがパイオニアだと言われている。

【2気室構造】

アウトドアブランドのクラシックなデイパに見られるのが、メイン室が上下に分かれた2気室構造。食料やギアなどを分別して収納するのに便利な設計だ。なお、上下の間仕切りはファスナーで留められているのが一般的で、開ければ広いワンルームとして使用できる。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2026年2月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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