身近だけど意外と知らないローファーの基礎知識Q&A

王室で生まれ学校で愛されたローファーの歩みを知っておく

【王室で生まれ学校で愛されたローファーの歩みを知っておく】
多くの人が学生時代から馴染みのあるローファーですが、じつは王室生まれだって知ってた!? 靴の定義や歴史、選び方など、意外と知らないローファーのあれこれをお勉強!

Q.ローファーってナニ?

A. 紐やベルトなどを備えず、それらで調整することなく脱ぎ履きできる短靴のこと。また一般にサドルローファーなどを指し、広義ではスリッポンシューズと同義とされる。起源は明確ではないが、一説によると、英国王ジョージ6世が注文したビスポーク靴がルーツといわれる。

今あるローファーの原型を履いたと言われる英国王ジョージ6世今あるローファーの原型を履いたと言われる英国王ジョージ6世 ※写真では別の靴を着用

また、靴職人ニルス・トヴェレンジャー氏が修業時代に米国で知ったインディアンモカシンと、故郷ノルウェーの街オーランドの伝統靴を融合させ、1930年頃に開発したオーランドモカシンこそが起源との説も。そして、ある米国人が某雑誌でその靴を紹介。

これを参考に米国版オーランドモカシンを売り出したスポールディング・ファミリーなる会社が、商品名を「ローファー(=怠け者)」と謳ったことで、ローファーという用語が広く普及したとされる。しかし今日、私たちが知るローファーの基本スタイルは、’36年に発売されたバスの「ウィージャンズ」によって完成を見たものである。

ローファーってナニ?

Q.ローファーはいつから人気になった?

A. ’50年代に米国東海岸の私大生、すなわちアイビーリーガーらに履かれたことで、アメトラの定番靴として認知された。また、彼らが電話通話1回分のペニーを甲ベルトの飾り穴に挟んで気取ったことで、この種の靴がペニーローファーとかコインローファーとも呼ばれるように。

1950~60年代、ローファーを着用している米国のアイビーリーガーの様子

1950~60年代、ローファーを着用している米国のアイビーリーガーの様子。右隣は、彼らにならってバス「ウィージャンズ」の飾り穴にペニー(1セント硬貨)を挟んでみたもの。

日本では’63年にVANリーガルが登場。アイビーブームに乗って人気に。’64年に出現したみゆき族も得意げに履き、東京・銀座を闊歩した。なお、タッセルローファーはオールデンが考案し、’48年発売。9年後、ブルックス ブラザーズがそれをコレクションに加え、人気となったものである。

Q.自分の足に合うローファーって?

A. 短靴でありながら、紐やベルトなどで締め付けることができないローファーは、それゆえにシビアなフィッティングが求められる。とりわけ注意すべきなのは、概して履き口が低く、大きいため、歩行時に踵抜けしやすい点。

これを抑えるには、親指と小指の両付け根にやや締め付けがあること、履き口がすぼんでいること、ヒールカップの後ろ身頃にある程度の丸みがあることが望ましい。なお、甲の最も高い部分(親指の骨の延長部)がアッパーに押さえ込まれて歩いた時に痛みがあったならば、履き込んでも改善しにくいことから、その靴の購入は思い切って諦めたほうがいいだろう。

自分の足に合うローファーって?

親指の付け根~小指の付け根に至る直線の長さも重要。足に対して、これが長いと足抜けしやすく、短すぎると足が痛くなる。ややキツめが望ましいだろう。

自分の足に合うローファーって?

履き口やヒールカップが十分にすぼまっていれば、踵抜けしにくい(右)が、後ろ身頃が極端に丸いとアキレス腱を痛める。アールはほどほどがいいかも(左)。

Q.ローファー特有のディテールはどんなの?

A. 下記に並べたのは、すべてローファーにしばし見られるディテール。靴ツウを気取りたくば、名称&役割について知っておこう。

飾り穴

飾り穴

甲サドルベルトにうがたれた穴。サドルスリットともいう。(上から)ウェイビー、リバースハーフムーン、ハーフムーン。

モカ縫い

モカ縫い

モカ(甲蓋)とヴァンプ(枠革)のつなぎ目に施される縫製。(上から)拝みモカ、ツイストステッチモカ、合わせモカ。

キッカー

キッカー

ヒールカップに、横一文字に施された刻み&縫製。逆側の足でここを踏み込むことで、靴が脱ぎやすくなるというもの。

ビーフロール

ビーフロール

履き口がダメージを受けやすいため、ヴァンプの付け根部に特別な補強を施したもの。その形状からビーフロールと呼ぶ。

もっと知っ得コラム
揃えておくと便利なローファーの代表型

上では何とも言わず、アイビーリーガー御用達である「ハーフサドル」のコインローファーを軸に話を進めてきたが、一口にローファーといってもヴァンプの形状やモカの形によって、種類はさまざま。異なるシーンで使えるので、ここらで基本の七型を押さえておこう。

フルサドル

フルサドル

靴の上部を覆うように甲のサドルがソールまでたどり着いているデザイン。美麗な印象を持つタイプが多い。フルストラップとも呼ばれる。

ハーフサドル

ハーフサドル

アッパーのモカ縫いの上にのせられる、帯状のサドルがシンプルに甲にかぶせるように縫われている仕様。最もオーソドックスなタイプ。

ビット

ビット

馬具の形状からインスパイアを得た金具が、アッパーの甲部に施されたタイプ。イタリアで生まれたとされ、ラグジュアリーな雰囲気を持つ。

ヴァンプ

ヴァンプ

甲の部分に飾りが施されないシンプルなタイプ。じつはヴァンプローファーは和製英語で、海外ではべネチアンローファーと呼ばれている。

エラスティック

エラスティック

履き口部分にゴム製の飾りをぐるりと施し、着脱を容易にしたタイプ。プレーンタイプからメダリオンまで、デザインも豊富なのが特徴だ。

タッセル

タッセル

甲の部分にタッセル(飾り房)が付いたタイプ。米国の俳優がオールデンに依頼したことから生まれた靴とされ、ドレッシーな雰囲気を持つ。

ドライビング

ドライビング

モデルの名前の通り、車を運転する為に作られたローファー。アクセルを踏み易くするように、ソールがフラットで、ラバータイプのものが多い。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2026年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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