【和ROBE(ワローブ)】普段着としての和装を叶える中綿羽織コートの新しさ

アウター選び。それは、服好きにとって一年で一番テンションがアガる買い物でしょう。と同時に、冬服の大本命ゆえ、それなりの投資も必要だし絶対失敗したくない……。そこで本特集では、物価高や景気の良し悪しも吹っ飛ぶような珠玉のアウターを厳選! 必ずアガりの一着が見つかりますよ!
日本が誇る名デザイナーを直撃
一着入魂! 外套(がいとう)調査2025
名門の傑作アウターのお次にスポットを当てるのは、日本が誇る傑人たちのアウター! てなわけで“外套”調査と称し、国内で注目を浴び続けるデザイナーたちに直撃インタビューを敢行。日本人ならではのモノづくりへの魂が宿る、四者四様の一着をとくとご覧あれ!
「現在と和装の橋渡しをしたい」(斎藤千酒さん)
「ワローブ」という名は、和装の「和」+「ROBE(長くゆったりした衣服)」の造語。ブランド立ち上げのきっかけを、デザイナーの齋藤さんは次のように語ります。
「夏場に浴衣や甚兵衛を着たくてお店に買いに行ったんです。でもピンと来るものがまったくなくて。だったら当社の洋服作りの背景を生かして、自分好みの和装を提案してみたら面白いんじゃないかと。それで自分たちが使い慣れたシャツ生地で浴衣を作ったのがワローブの始まりとなりました」

1981年、栃木県生まれ。服飾未経験ながら、懇意にしていたアパレルメーカー「ネクトリー」のデザイナーにファッション好きを見込まれ、アシスタントとして入社。やがて服のデザインを担当するようになり、2014年に自身のブランドとして「ワローブ」をスタート。
齋藤さんには、このブランドを通して、日本の景色に和装を取り戻したい思いもあったようです。
「今の和装ってフォーマルなところにしか残っていない気がするんです。だからみんなルールに厳格で、ちょっとでも間違った着こなしをSNSに上げようものなら、着物警察に袋叩きに遭う(笑)。友禅着物のようなものとは別に、もっと気楽に、洋服の延長線上で楽しめる和装を目指しました」
そのために取った手法が、洋服と和装のハイブリッド。素材だけでなく、デザイン的にも洋服の要素をミックスすることで、現代の普段着として使える和装を目指しました。その代表作とも言える存在が、「HAORI」シリーズです。
こちらはその名の通り、日本の伝統的な“羽織”をベースとしたコート。羽織紐ではなく、キーリングやカラビナで前を留められるなど、和装を日常的に楽しむための工夫を随所に忍ばせています。下で紹介したのは、そのショート丈版。こちらは今どきのユルっとしたブルゾン感覚で着られます。
「羽織型の良さは、どんな体型の人にも似合い、どんな服に合わせても様になるところ。平面的な構造ですから、簡単に畳めて、持ち運びが楽なのもメリットです」
当初ワローブのアイテムは、着物に慣れ親しんだ人が、普段使いの服として購入するケースが多かったようですが、今ではまったく和装を着たことのない若い世代を含め、幅広い層にファッションとして人気を博しています。
日本人としてのアイデンティティを示せるからと、海外へ行くビジネスマンや留学生が購入することも多く、最近では外国の方にも“侍ファッション”として注目されています。
「ボクは結局、普段着としての和装文化が廃れず、現代にそのまま残っていたらどうなったのかをやっているのかも。ある意味SF的なクリエーションでもあり、アニメや映画で日本の伝統文化にハマった方は、そこにも魅力を感じてくれているのかもしれませんね」

WAROBE[ワローブ]
PUFFER HAORI
今どきのワイドな身幅のブルゾンのような感覚で着られるモデル。袂(たもと)は、動きやすいようボタンで留められるなど、日常着としての工夫が随所に。中綿入りで表地は高密度撥水素材。黒とオリーブグリーンの2色展開。5万2800円(トローヴショップ湯島店)

フラップ付きのポケットも装着

※表示価格は税込み
[ビギン2026年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。
