【マウンテンリサーチ】小林節正さんがゼロから作ったツイードジャケットのこだわり

小林節正さん

アウター選び。それは、服好きにとって一年で一番テンションがアガる買い物でしょう。と同時に、冬服の大本命ゆえ、それなりの投資も必要だし絶対失敗したくない……。そこで本特集では、物価高や景気の良し悪しも吹っ飛ぶような珠玉のアウターを厳選! 必ずアガりの一着が見つかりますよ!

日本が誇る名デザイナーを直撃
一着入魂! 外套(がいとう)調査2025

名門の傑作アウターのお次にスポットを当てるのは、日本が誇る傑人たちのアウター! てなわけで“外套”調査と称し、国内で注目を浴び続けるデザイナーたちに直撃インタビューを敢行。日本人ならではのモノづくりへの魂が宿る、四者四様の一着をとくとご覧あれ!

「オーガニックな山の礼服」(小林節正さん)

山に登るための服ではなく、山側で暮らす人々のための天然素材の服。「マウンテンフォークステーラリング(M.F.T)」のイメージを、小林さんはそう説明します。

小林節正さん

イタリアで靴作りを学び、1993年に自身の靴ブランド「セット」、翌年にクロージングライン「ジェネラルリサーチ」を立ち上げる。現在は「マウンテンリサーチ」を核に「…..リサーチ」を展開。今秋、「マウンテンリサーチ」の新ラインとして「M.F.T」を始動した。

「マウンテンリサーチも当初そんなイメージで始まったんです。でも、アウトドアウェアに機能性を求めると、フリースやナイロン、化学繊維の中綿などを使わざるを得ない状況があり。チーフデザイナーを、長年アシスタントを務めてきた安倍昌宏に昨年から正式に任せたこともあり、大変に身勝手なんですが(笑)、自分では今一度天然素材の枠組みで服を作りたいという気持ちが募ってきて」

これまでの小林さんの服作りは古着を教科書としてきましたが、今回は何かに近づける作業ではなく、ゼロから何かを生み出すことを前提としたそうです。

「素材、それこそ糸を選ぶところから始めました。ボクもいい歳ですが、理想の生地を作る上での水先案内人となる職人の方々は、そろそろ引退してしまう。素材から服を作るにはもう最後のタイミングだというのも、M.F.Tを始動する大きな動機となりました」

そして仕上がったのが、希少な英国羊毛を用いたシャドーグレンチェックのツイード生地。古着の英国ツイードは、防風性を高めるため、目の詰まったヘリンボーン織りとしていることが多いものですが、こちらは日本の気候や日常での着やすさを考慮してあえて平織りに。巧みな洗い加工も貢献し、最初から身体に馴染むクッタリとしたタッチに仕上がっています。

「天然素材へのこだわりから、裏表の縫製糸をナイロンではなく、綿糸としたのもポイント。直線的パターンのワークウェアならまだしも、曲線を多用したテーラードの型紙で綿糸を使うと、途中で糸切れしてしまうので工場が嫌がるんですが、奇跡的にやっていただけるところを見つけることができて。ナイロンと違って綿糸は、光の加減でキラキラせず、着込むほどに糸が縮んで生地の中に沈み込んでいくからいいんですよ」

そんな小林さんのこだわりが満ちた1stコレクションのツイードジャケットやパンツは、ヨーロッパの山間部で暮らす人たちが、日曜日の村の集まりに着ていく洒落着のような雰囲気もあります。

「若い服好きの方から、髪の毛に白いものが混じるようになった世代にも似合う“山の礼服”。とはいえ、もちろんタイを締める堅い着こなしではなく、フーディやセーターなどカジュアルな服に合わせて、気楽に着てもらえたら」

カットアウェイジャケット

Mountain Folks Tailoring[マウンテンフォークステーラリング]
カットアウェイジャケット

燕尾服のようなラウンドフロントが特徴だが、ノッチドラペルや独自開発のシャドーグレンチェックのツイードにより、ラフな着こなしがサマになる。ドローコードと前掛けストラップでシルエットが変更できるのも魅力。19万8000円(…..リサーチジェネラルストア)

カットアウェイジャケット

髪に白いものが混じった世代にこそ着てもらいたい

小林節正さん

 
※表示価格は税込み


[ビギン2026年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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