【メンズビギ】菊池武夫さんが今選ぶ“理想の黒スタジャン”とは?

菊池武夫さん

アウター選び。それは、服好きにとって一年で一番テンションがアガる買い物でしょう。と同時に、冬服の大本命ゆえ、それなりの投資も必要だし絶対失敗したくない……。そこで本特集では、物価高や景気の良し悪しも吹っ飛ぶような珠玉のアウターを厳選! 必ずアガりの一着が見つかりますよ!

日本が誇る名デザイナーを直撃
一着入魂! 外套(がいとう)調査2025

名門の傑作アウターのお次にスポットを当てるのは、日本が誇る傑人たちのアウター! てなわけで“外套”調査と称し、国内で注目を浴び続けるデザイナーたちに直撃インタビューを敢行。日本人ならではのモノづくりへの魂が宿る、四者四様の一着をとくとご覧あれ!

「50年の時を超えて格好良いデザインを」(菊池武夫さん)

50周年の節目に、メンズビギと言えば! の名作を今の感覚で復刻させたかった、とタケ先生。思い浮かんだのが、伝説的ドラマ『傷だらけの天使』で萩原健一が着用したダブルのスーツと、’80年代に万単位のセールスを記録して社会現象化したスタジャンだったそう。

菊池武夫さん

1975年にメンズビギを立ち上げ、日本人としてパリコレに初参加、DCブランドブームの火付け役に。1984年にタケオキクチを設立。業界では“タケ先生”の愛称で知られる。「メンズビギ50周年のアニバーサリーに、僕自身で手を挙げて参画させてもらいました」。

「スタジャンがヒットしたときにはもうメンズビギを離れていたので、外から眺めていました。なので僕にとっては初の試みで。そのときからスタジャンは真っ黒がカッコイイと思っていたんですよね。僕の主な仕事はこうしたイメージをデザイン画にすること。それを形にしてくれるのは、一緒に働いた今のスタッフたちなんです」

そのスケッチを元に作り始め、いざ仮縫いの段階に入ってからは、全員でアーカイブを引っ張り出して、素材使いから型紙から参考に、あーだこーだを重ねたと言います。

「描いていた理想のスタジャンは、全体的に丸っこいカッコいいフォルムになること。ガタイのいい人が着ると抜群に似合うし、女性がユニセックスに着たとしても服自体がスタイルを作ってくれる。前者の体躯を引き立て、後者は隠して補正するイメージかな。素材も最初のスケッチの段階からメルトン×レザーと決めていて、仲間に数十のサンプルを集めてもらって選びました」。

こうしてタケ先生の理想のスタジャンの雰囲気、フォルムを具現化できる素材として、重厚なクレーターメルトンと、それに負けない雰囲気の牛革に着地。サンプルは3度も製作し、首回りや前の開き具合、厚みにもこだわりました。そしてメンズビギのスタジャンに欠かせない背中の英字には「ファッションは肉体的自己表現の道具である」の格言が。スタッフがタケ先生の著書から拾った一文とか。

50th Anniv. 菊池武夫 クレーターウールメルトンスタジアムジャンパー

「自分では発言したこと自体忘れてたんですけど(笑)、我ながら真理だと思う。見つけてくれてありがたいなと。先ほどお話しした内容もようは同じで、僕はデザイナーとして、体の入り方、フォルムが一番大事だと思っているんですよ。これは日本人独特の感性かもしれません。欧米人に比べて体が平板なので、それを服でカバーしていくような作り方、工夫を重ねてきたんですよね。

僕自身もメンズビギ立ち上げ時から腐心してきました。だから日本人の作る服はフォルムや“緩み”の具現化に長けているし、その点が今、日本人目線の服が世界中で熱い支持を得ている理由の根本にあると感じます。この半世紀で作り上げた日本の服飾文化なんじゃないかな」

50th Anniv. 菊池武夫 クレーターウールメルトンスタジアムジャンパー

MEN`S BIGI[メンズビギ]
50th Anniv. 菊池武夫 クレーターウールメルトンスタジアムジャンパー

節目の年に一時帰還した菊池武夫氏が手掛けたアニバーサリーモデル。クレーターのような凹凸感のあるクレーターメルトンに、同じく重厚な牛革と、その革を漉いて作った特注のレザーリブを組み合わせている。14万3000円(メンズビギ 50周年プロジェクト担当)

前からも、横からも丸っこいフォルムが理想!

菊池武夫さん

 
※表示価格は税込み


[ビギン2026年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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