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【トートバッグ進化史】素材選び&便利ディテールを解説

トートバッグの進化

【「冷蔵庫の普及」から紐解くトートバッグの歴史と進化】
今や老若男女誰もが持っているだろう身近なファッションアイテムですが、元々は氷を運搬するための道具って知ってた? その波瀾万丈な生い立ちを勉強していきましょう!

Q.トートバッグってなに?

A. 2ハンドルで、天マチの開口部が投げ込み式のシンプルな手提げ鞄のこと。英語で「Tote」とは「運ぶ」の意味だが、トートバッグの事始めは不明。2ハンドルの手提げ鞄がトートなら、太古からあったはずだからだ。しかし、今日イメージされるトートの原型はエル・エル・ビーンが1944年に発売した「ビーンズ・アイス・キャリア」だろう。

トートバッグってなに

トートのルーツとされるエル・エル・ビーンの「ビーンズ・アイス・キャリア」の雰囲気を色濃く残す「ソリッド・ボート・アンド・トート」。9900円(エル・エル・ビーンカスタマーサービスセンター)

当時、米国の一般家庭では湖などから切り出された氷を買い、自宅のアイスチェストに入れて使用。水が染み出しにくい厚手キャンバスの“アイス・キャリア”は、その運搬用として爆発的にヒットした。

アメリカ・メーン州での氷の切り出しの様子アメリカ・メーン州での氷の切り出しの様子

やがて冷蔵庫の普及でその役目は終わるが、2色使いのファッショナブルで多目的な「ボート・アンド・トート(通称“ビーン・トート”)」に転生。これが世界中で人気となり、今日のトートの普及を導いた。現在、多種多様に進化したトートだが、とりわけ男子がこれらを好んで使っているのは、疑いなく日本である。

Q.トートバッグが浸透したのはいつから?

A. まだトートが一般的ではなかった頃の日本では、服飾関係者などの間で「トート=大きな女性用手提げ鞄」とみなされていた。その認識が改まったのは、1979年の“ビーン・トート”の日本上陸から。

ソニープラザが女性用としてこれを販売。結果、’80年代、トートは大学生や女性を中心に徐々に浸透。さらに同店は’90年頃、エルベシャプリエを輸入・販売。これがきっかけでナイロンバッグ・ブームが始まり、ことにその舟形トートは女子高校生など若い女性たちの間で大ブレイク。

そして、このナイロンバッグ人気は’90年代を通じて続き、その間にファッションなどの男性業界人らがナイロントートを愛用し始め、次第にメンズトートが一般にも浸透していったというわけ。

それにしてもトート史の2大エポックともいえる“ビーン・トート”とシャプリエが、ともにソニープラザによってブレイクしたというのは、興味深い話だ。

Q.トートバッグの素材はどう選べばいいの?

A. メイン素材に多用されるのはキャンバス、革、ナイロンの3素材。トートにとって最も伝統的な素材のキャンバスと、この十数年で人気が高まった革はともに堅牢なうえ、使い込んで自分流の“味”に育てる楽しみがある。

ナイロンは概して耐久性で劣るものの、軽量。色バリも豊富と、カジュアルな素材といえる。と、こうした特性を知ったうえで、合わせたい服、使いたいシーン、自分の好みなども加味しつつ検討し、自分にとって最適のトートを選びたい。

【キャンバス】ナチュラルな表情が魅力の堅牢な生地

キャンバス

太番手糸使いの平織り生地で、主流は帆布と呼ばれるコットン製。うち、生成り仕上げが代表的だ。他にリネン製や混紡系も存在。いずれも強度は革に大きく引けをとらないが、汚れはつきやすい。

【レザー】ちょい重いけれど末長く愛用できます

レザー

味出し系のヌメ革から加工革まで種類はさまざま。いずれも堅牢性で他の素材に勝る。概して重いが、最近では薄く加工した軽量タイプも。生地系トートの持ち手など、サブ素材に使われる例もある。

【ナイロン】軽量で機能性に富み風合い&色が多彩

ナイロン

防弾チョッキにも使われるバリスティックナイロンから、サテンのように繊細な風合いの高密度系までバリエ多彩で、色も豊富。概して軽量という点も人気の理由だ。革とのコンビの製品が多い。

Q.“舟型”トートってどうしてあの形なの?

A. エルベシャプリエが1985年に発売し、’90年代のナイロンバッグ・ブームの火をつけた「907」が舟形トートのマスターピース。日本では正面から見た形から「舟形」と呼ぶが、じつは創始者のエルベ・シャプリエ氏曰く「色気」を表現すべく、横からのシルエットがミロのヴィーナスの腰の曲線と同じになるよう編み出した形なんだそう(下参照)。つまり舟がヒントではなく、舟形の呼び名も偶然の産物ってわけ。

どうしてあの形なの

もっと知っ得コラム
あると便利なトートバッグディテール

トートバッグの生い立ちはこれであらかたOK。で、結局何を買えばいいの? デザインは好みによるけれど、購入時に押さえておきたい「あればベター」な機能する意匠をチェックしていこう。

肩掛けOKハンドル

肩掛けOKハンドル

薄着の季節に購入する際は“冬物着用で肩掛け”を想定し、適切な長さを選ぼう。また、2本手なら肩掛け時、外側の1本が肩落ちしにくいものがベター。写真のような天マチがカーブラインのものは肩掛けが安定する。

天カバー

天カバー

トートは投げ込み式が本来。が、中身が隠せて、荷こぼれしにくく、抜き取りなどの盗難が防げるとあって、昨今はジッパー付き天カバー式が主流に。これに代え、間口にスナップ付きタブを持つタイプも少なくない。

浅底ポケット

浅底ポケット

財布、パスカードケース、スマホ……と、移動中に出し入れする小物が簡単&クイックに出し入れできる浅底の小ポケットがあれば便利。シンプルな構造のトートだからこそこうした機能があると大助かりなのだ。

可変マチ

可変マチ

荷が多い日や外出先で荷が増えた際、エクスパンド(マチ拡張)機能があれば助かる。底マチが増すタイプもあるが、スナップ操作などで横マチが広がる可変マチなら、容量アップに加えモノの出し入れも楽になる。

底鋲

底鋲

底マチがフラットのタイプなら、底鋲付きが重宝するはず。底面の汚れをそれほど気にすることなくどこにでも置けるからだ。ことに使用頻度の高い、デイリー使いのビジネストートには必須のディテールかも。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2025年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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