Mar-19-2024

千葉県・スクールで発見! 津田沼最後の隠れ家ショップに眠る、驚愕コスパの極上Tシャツ【ナニコレ珍名品#7】

ビギンが日本全国津々浦々を行脚し、地方ショップの「オリジナル商品」を掘り起こす本企画。僭越ながら今年で創刊36年目を迎えるビギン、もはやどこにでも置いてありそうなセレクトアイテムに興味はございません。各ショップがウンウン悩んで考えた末に生まれる「ナニコレ⁉」なオリジナル商品にこそ、唯一無二の魅力が、ひいてはそのお店の「スピリット」が宿っているのです!

春到来! 昂る物欲を抑えて、今回は千葉県津田沼の隠れ家ショップへ行ってきました! 独自のコネクションを活かした服づくりを武器に、目から鱗のビックリ価格でオリジナルブランド「SECOURS(スクール)」を展開中なんです。素材よし、作りよし、値段よしの3拍子が揃っている珍名品たちで、賢くファッションを楽しみましょ♪

今回お邪魔したのはココ!

2000年に創業した「スクール」があるのは、東京駅から電車で30分の津田沼駅周辺。約20年前までは数々の古着屋が立ち並んでいたエリアですが、なんと現存するのはココだけ。ファッションビル「パルコ津田沼」をはじめ、多くの服屋が閉店してしまった時代の流れに逆らって、「スクール」が今もお客様から愛されている理由は、コスパに優れたオリジナルブランドを充実させているから。まさしく、長年ビギンが紹介し続けている〝安くてイイもの〟の宝庫なのです。

商品の構成比は、仕入れとオリジナルがおよそ7対3。「インディヴィジュアライズドシャツ」や「セントジェームス」、「パラブーツ」など、オリジナルウェアと相性のいい定番ブランドが揃っています。

オーナーはファッション業界歴=社会人歴の田中大介さん。「パルコ津田沼」のテナントに入っていたアパレルショップから2000年に独立。オリジナルブランド「スクール」は、自分のショップを持ってから12年後にスタートしました。

「人のアドバイスを素直に聞いて、自分の不得意なところは、周りの人にフォローしてもらってきた」と、これまでを振り返る田中さん。技術の高い繊維工場や独自性のあるデザイナーなど、独自の人脈を活かしたモノづくりを得意としており、オリジナルブランドの製品は、二つも三つも語りどころがあります。

では早速、「スクール」のコスパ◎Tシャツから、一緒にチェックしていきましょう♪

名品FILEその1
シーアイランドコットンT

各8580円

個人店のオリジナルはこだわりの品質やディテールを打ち出すケースが多いですが、「スクール」のエライところは、それらを妥協せずに価格も抑えているところ! 採算度外視で実験的な服づくりに挑戦したり、生産工場を海外に確保したり。コスパを追求できるのは、ずば抜けてアパレル業界の人脈が広い、田中さんのネットワークなればこそ。このシーアイランドコットンを使った白Tは、まさにそんなお値打ち品なのです。

このタグがホンモノの証!

シーアイランドコットンとは、カリブ諸島などで栽培される希少性の高いコットンのこと。気候の影響を受けやすく、収穫量は全綿花の10万分の1程度で、「幻のコットン」の異名を持ちます。

繊維が長く、あまり撚りをかけずに紡績できるため、しっとり&艶っぽい糸に仕上がります。その糸で編み立てられた生地は、とにかく滑らかな肌触り。ビギンではお馴染み英国王室御用達の某ニットブランドの代名詞的な素材として愛されています。

フツーはこういうテロッとした生地なのだ

田中さん曰く、通常Tシャツ一枚に対して、シーアイランドコットンの量は150g〜180gらしいのですが、こちらには贅沢に250gも使用! ふんわり編み上げるのが定番ですが、あえて度詰めにして、素材の風合いを保ちつつ、コシのあるヘビーウェイトな生地に仕上げています。

取材日に田中さんが着ていた3年前の初期モデルも、まだまだ現役の様子。洗濯乾燥機にかけても、たっぷりと油分を含んだ糸のおかげで、生地がゴワゴワに硬くならず快適なままなんだそう。

ないものは、作ってしまえ。これは田中さんのモットーで、こちらを開発したきっかけも、愛用していたシーアイランドコットンのTシャツに不満があったから。

「着心地もいいし見栄えもするけど、繊細な生地だからすぐヨレちゃうし、チクスケも気になるでしょ? もしも同じ生地感でガシガシ毎日着られる一枚があったらいいよねって、常連さんと意気投合して作ることにしました」

生地は世界的に有名なメゾンブランドとお付き合いのある、東京の繊維メーカーに特注しています。

「シーアイランドコットンを度詰めにするなんて、素材の良さを殺しちゃいますよ!?なんて、担当者に言われたんですが、そこは強行突破(笑)」

強度を高める古き良きディテール”タコバインダー”も健在

参考にしたのは、古着屋でよく見かけるアメリカ製のスタンダードなTシャツ。ベーシックなアイテムだからこそ、毎年サイズ感を調整して、時代のムードを取り入れています。

「身幅は広げて、着丈をやや短めに。上品さをキープするために、ドロップショルダーにはしないで、袖丈を長くしています。ちょっとの違いなんですが、毎年シルエットには特別なこだわりがあります」

袖付けや袖丈も毎シーズンアップデート中

ちなみに普通のメーカーが同じものを作ろうとすると2万円を超えるそう……なんですが、こちらはなんと8000円台(驚)! カラバリも豊富なので、春を前に大人買いもあり。みなさん、ぜひ一枚お試しを!!

名品FILEその2
バーバリーツイルステンカラーコート

8万5800円

ビギンが定めるグッドプライスとは、ただ価格が安いというわけではなく、多少値の張るものでも、その価値をしっかり語れるもの。その哲学をまさに体現しているのが、「ハイペリオン」にスクールが別注した、ステンカラーコートです。

「ハイペリオン」とは、大阪を拠点に展開するメンズガーメント専門ブランド。ディレクターは「リングヂャケット」や「モデストガヴァン」など国内有数のドレスメーカーで経験を積んだ人物で、ジャパン品質にこだわった美しい仕立てのジャケットは、業界からも高い評価を得ています。


こちらのデザインのヒントにしたのは1970〜80年代のオールド・バーバリーのステンカラーコート。中でも、一枚の生地で作られる“一枚袖”を採用した希少モデルのディテールを踏襲しています。外側にはぎ合わせがないのですっきりとした印象ですし、肩から袖にかけてのラインもマジで滑らか!

その上、一着につき一人の職人が最後まで丸っと縫製を請け負う丸縫い仕様。パーツごとに縫製担当が分かれていないため、仕上がりはまるでテーラーショップで仕立てたかのように美しい♡ よくミリタリーコートで見かける衿裏のジグザグステッチや、ミシンでの縫製が難しい袖先と裏地の縫い合わせなど、手作業ならではの作り込みにも注目。職人の魂が込められていると思うと、気分も上がり、背筋もシャキッ!

 


もちろん、生地はおなじみの先染めバーバリーツイル。光の当たり具合で表情を変える独特のヌメりが高級感を演出し、さらに男を格上げしてくれます。コットン100%の糸を超高密度に綾織りした生地は、防水性にも優れ、多少の雨なら無問題。糸からネイビーに染めているので、色落ちの心配もありません。本家のトレンチコートと同じガチモンです。

裏地は袖先までしっかり。高級なジャケットにも使用されるキュプラ製で、スウェットを着ていても袖通りは滑らか。艶っぽいネイビーのカラーリングもラグジュアリーな雰囲気を醸し出します。

背面はトラッドな赤チェック柄に切り替えされており、ボタンを開けて羽織れば、着こなしのアクセントに!

着るとこんな感じ

シルエットはスタンダードなAライン型。着丈は量産されている市販のビジネスコートよりも少し長めに設定して、カジュアル使いにも対応させています。

「当初の着丈は105㎝(Lサイズ)でしたが、悪役のコートみたいになって、7㎝短くしたんです(笑)。ボタンを開けて羽織った時にポケットに手を突っ込むと、裾がバサッとキレイに広がるような、絶妙な長さに調整しています」

今では同年代のものを古着店で探すと、余裕で10万円を超えてきますし、状態までこだわると好みの一枚に遭遇できる確率も激減しますが、スクールならマイサイズの一枚を賢くゲットできます。ワードローブの格を上げるなら、こちらのコートを追加すべし!

理想のショップ像

今でこそ、真に安い!と思える良コスパ品が豊富な「スクールですが、歴史を遡ると、オープン当初は、ただ価格の安い“売れる服”をセレクトするショップでした。

というのも、田中さんの出自は「津田沼パルコ」にあった大衆向けのセレクトショップ。商品構成はファッションに疎い人にも手が届くカジュアルウェアが中心で、館内の年間売上げランキングの上位に必ず入る人気店でした。

そして、その立役者が、何を隠そう田中さん。独立の際はディベロッパーからサポートを受けるほど期待が寄せられており、練りに練った事業計画書を館長に見せると、トントン拍子でテナントの空きスペースに開業が決定したんだとか。

当時からBDシャツは欠かさずラインナップ!

古巣の経営を参考にした当時のスクールは、近隣のパルコに姉妹店を5軒も展開していましたが、実際は薄利多売の状態で、毎日が超多忙。いつまで続けるのか。そんな考えが頭をよぎり始めた頃、リーマン・ショックをきっかけにショップの方向性を改めることに。

「服を生業にしている以上、自分が本当に欲しい服を売りたかったんですよ。でも、自分が買いたいと思えるような値段じゃないと満足してもらえないのは、これまでの経験から知っている。だったら、憧れのブランド品だけでなく、自分のこだわりを詰め込んだ服を作って、普通の価格で売ろうと思ったんです」

オリジナルブランドを立ち上げて2年後、パルコから撤退し、路面営業に。その一連の流れの中で、アパレル業界に精通した父親の一言がきっかけで、スクールの軸がトラッドに定まりました。

「コンセプトについて父に相談にすると、『お前はアメトラなんだから』って諭されました。思い返せば、昔からボタンダウンシャツが好きだなって(笑)。たまに、何でもかんでもオリジナルで作りすぎなんて言われますが、“トラッド”という立ち返る場所があるからこそ、自由なモノづくりを楽しめているんだと思っています」

シーアイランドコットンBDシャツ/各1万2100円

時代の節目で進化を遂げてきたスクールは、現在、最終形態に突入。昨年、津田沼最古の古着屋の跡地に移店を果たし、ワンルームほどのスペースになりました。

「お店が小さくなったことで、お客様との距離も近くなりました。毎日のように来店するご近所さんもいて、とうとうカウンターにコーヒーのドリップセットを常備(笑)。たわいもない会話のなかで欲しいものの話題になると、それをバイイングや商品企画の参考にしています。おかげさまでECの売上も順調に伸びていますし、肩の力を抜いて、今後ものんびりファッションと向き合っていきたいです」

SECOURS

住所:〒274-0825 千葉県船橋市前原西2-8-7 ダイワティアラ津田沼5 1F

電話:047-411-6606

営業時間:平日12:00am~20:00pm 土日・祝日11:00~20:00

ホームページ: https://www.secours.jp/

※表示価格は税込みです


写真/藤沢徳彦 文/妹尾龍都 編集/鍵本大河(Beginデジタル) 

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