Dec-01-2023

好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]VOL.33

どんな花より印象深い、アブストラクトな花器

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

“謎だけどいいもの”に価値を見出したい

今回は花器なんですが、多分思いますよね。「これ、何?」って。でも、何でもないんですよ。誰が作ったのかも、どこの地方のものなのかもわからない。唯一わかっているのは60〜80年代の日本の陶器ということだけ。

昔から骨董市に行くと、こういう出自不明だけど気になるものがたまにあって買ったりしていたんだけど、最近はそんな謎のシリーズを積極的に集めています。それぞれ見つかるのも全然別の場所だし、デザインにも全然一貫性がない。共通するのは「変な形や色で日本製」ということだけ。

日本だけど和じゃなくて、作り手の気概は感じるけど、一歩間違えたらめちゃくちゃダサくなると思います。もしかしたら当時、喫茶店だとかスナックみたいなゴチャゴチャしたところに置かれていたのかなと思うと、危険ですよね(笑)。

だけど、それが置く場所だったり並べる家具との組み合わせによって、一気に見え方が変わって格好よくなる。マジメな空間にこういうものが唐突にあるのがいいんじゃないかな。洋服と同じで、ハズしの美学ですよね。だから僕にとって"ダサい"は褒め言葉なんです。

この連載でも、誰々がデザインしたどこどこのブランド、というものを紹介してきたけど、こういう何だかわからないけどいいっていうものもやっぱりあるし、そこに価値を見出したい。それがいずれ世の中で高く評価される可能性もなくはないし。投資目的で買うにはリスキーだとは思いますけどね(笑)。(南 貴之)

「アノニマス されど無銘の 名を刻む」

BRAND:UNKNOWN
ITEM:VASE
AGE:1960〜1980s

抽象芸術のような独創的なフォルム。素朴なものから原色まで、文字通り多彩な色柄。一貫性はまったくないが、振り切った個性だけが共通する。右/1万4300円、中/2万4200円、左/1万670円(以上、ギャラリー85.4)

DETAIL

花を挿せるようにこそなっているが、明らかにオブジェとしての側面が色濃い。プリミティブでありつつ、ポストモダンの前衛性も備えているようにも思えてくる。謎多し。

Profile
南 貴之

好事家

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中を巡り、良品を探している。

※表示価格は税込み


[ビギン2022年12月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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