Nov-29-2023

好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]VOL.31

骨太なシンプル設計と、それでも漂うエレガンス

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

さすがペリアン。セレクトでもさすがの格好よさ

この椅子、シャルロット・ペリアンのデザインだと思われがちですが、実は違うんです。正確にはペリアンの創作じゃなく、彼女がセレクトした既製品。

1969年にできたフランス、レ・ザルクのスキーリゾートをペリアンが手掛けているのは有名な話ですが、自分でデザインしたものに交ぜて、チョイスした家具も使っていたみたい。僕も最初はペリアンのデザインだと思ってたから「え? 違うの?」って(笑)。

もちろん広大なリゾートを手掛けるうえですべてをデザインするのが難しかったというのもあると思うけど、その過程で自分がデザインせずとも世の中にすでによいものがあるならそれを使おうという選択をしたんじゃないでしょうか。銘が立ったものとただのアノニマスデザインの間をいくような、そのもののあり方が面白いなと思います。

デザイン的にもペリアンが選ぶだけあって、さすがの格好よさ。スチールにカシメで留めたレザー張りっていうのも攻めてると思うし、上品だけど無骨でいいバランス。細めのスチールの使い方もモダンで、このへんはイタリアらしいデザインっていうことなのかな。スタッキングできて、重ねたときにも絵になります。

昔からいい個体を見かけると買っていたんですけど、最近は高騰しちゃっていてなかなか手が出せなくなりました。そもそも高所恐怖症なのでリフトにも乗れず、スキーを一度もやったことがない僕ですが、このレ・ザルクには、いつか行ってみたいなぁ。(南 貴之)

「スキー宿 目利きのチョイス スベらんなぁ」

BRAND:DAL VERA
ITEM:CHAIR
AGE:1970s

スチール製のフレームに、“鞍”のような重厚感のある極厚レザーをステッチとリベットで固定した、シンプルな設計。製造はイタリアの家具メーカー「ダル ヴェーラ」。19万8000円(フレッシュサービス ヘッドクオーターズ)

DETAIL

座面と背もたれは一体化しているが、生地のレザーにはちょうどこの部分にハギが入っている。これにより体にフィットする自然なカーブが生まれているのも隠れたポイント。

Profile
南 貴之

好事家

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中を巡り、良品を探している。

※表示価格は税込み


[ビギン2022年10月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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