Nov-10-2023

好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]VOL.29

質実剛健でも、繊細なフォルムと中間色のマッチングが洒脱

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

EROMES WIJCHEN エロームス・ヴィヘンのスツール

この脚の長さがチャームポイント

前回のチェアに引き続き、このスツールもやっぱり脚についての話です。これはオランダ「エロームス」のスツールなんですが、一見シンプルで普通だけどちょっと違和感がありませんか? そう、妙に座面が高いんです。 

自分で訪れてみて実感したんですが、世間で言われる通り、オランダってめちゃくちゃ背が高い人が多いんですよ。このスツールはおそらくオランダ国内の需要に合わせて作られているから、僕ら日本人が普段触れている多くのスツールと比べると明らかに脚が長いんです。

たくさんモノがある中にこれが置かれていたら見落としてしまいそうな、ほんの少しの違和感ですが、それを見逃さないのが僕の仕事。グレイッシュな色合いもイイんですが、それ以上にこの脚の長さがやっぱりチャームポイントだと思っています。

以前、知り合いの女性に「男の人ってイス好きが多い気がするんだけど、なんで?」と聞かれたことがあるんです。理由は人それぞれだし、いくつもあると思うけど、僕の場合は美脚好きだからということになるんだと思います。

好きなイスやスツールには座っているよりも、眺めているほうが気分がアガるタチなので(笑)。フェティシズムは置いておいて、やっぱり家具のデザインや設計っていうのには地域性とか、国ごとの文化やカルチャーの違いが明確に出ますよね。

そういう背景に思いを馳せるのも、やっぱり古具のほそ道の醍醐味なんじゃないかと僕は思うんです。(南 貴之)

「長脚に こころうばわれ 蘭国式」

EROMES WIJCHEN エロームス・ヴィヘンのスツール

BRAND:EROMES WIJCHEN
ITEM:STOOL
AGE:UNKNOWN

樹脂の座面に細めのスチールパイプの4本脚というオーソドックスなデザインが、特殊なプロポーションを引き立てる。スタッキングも可能で、複数並べても美しい。1万4300円(フレッシュサービス ヘッドクオーターズ)

DETAIL

EROMES WIJCHEN エロームス・ヴィヘンのスツール

座面の裏側、4本の脚が交わる部分は、卍のように互い違いに向きを変えながら溶接されている。普段は見えない部分にもアイデアと美意識が宿っている、秀逸な意匠だ。

Profile
南 貴之

好事家

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中を巡り、良品を探している。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2022年8月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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