Nov-01-2023

好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]VOL.26

デザイナー、着想源、生産者、すべてが純国産

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

TENDO MOKKO 天童木工のカブトチェア

工場を訪ねて、さらに興味が強まった

最近、プレスルームの一角にある談話室の椅子を替えたんですが、それがコレ。剣持 勇さんのカブトチェアです。スチールの一本脚が昔の喫茶店みたいで、見た瞬間に絶対談話室に置きたい! と思いました。

この人の仕事については本も読んだりしているんですが、僕がこの椅子を好きな理由はメーカーにあります。手掛けている天童木工は山形の会社。グラフペーパーのニットの工場が山形にあって、あるとき出張で行ったら『試編みに1時間くらいかかります』と言われて……。

どうやって時間を潰そうかなと思っていたら、『近くに天童木工さんの工場がありますよ』と聞いて工場を訪ねたんです。いきなり電話もせずに伺ったから、当然向こうもあたふたされてました(笑)。

でも、すごくいい人たちで、とても親切に工場の中を見せてくれて。実際に合板を成形している工程も見せてもらったことで、天童木工でつくられている家具への興味がさらに強まったんです。

日本は海外に比べてメーカーに社内デザイナーがいてものづくりをする傾向が強いと思うけど、天童木工はつくる側とデザインする側を分けて、よいものをつくるっていうやり方を昔から積極的に取り入れているというのが素晴らしい。

外部にデザイナーがいて、ちゃんとした技術を持ったメーカーがそのアイデアをプロダクトアウトする。このチェアのアールも、天童木工の成形合板の技術があってこそ、形になったデザインだと思います。(南 貴之)

「生地の内 木匠たちの わざ、いきて」

TENDO MOKKO 天童木工のカブトチェア

BRAND:TENDO MOKKO
ITEM:CHAIR
AGE:UNKNOWN

名前通り、伝統的な防具を思わせる曲線のカブトチェア。元はゴルフ場のクラブハウス用に考案されたと言われるダイニングチェアで、この張りぐるみの仕様がオリジナル。現行品では合板が露出したヌードタイプも。

TENDO MOKKO 天童木工のカブトチェア

こちらはよりポピュラーな四本脚のタイプ。やはり’60年代の個体で、張り地は現行にはない溶着された合皮。座面と背もたれの包み込むようなフォルムは、座りやすさと見栄えを両立している。17万3800円(グラフペーパー 青山)

DETAIL

TENDO MOKKO 天童木工のカブトチェア

張り地にくるまれた状態でも認識できる、成形合板のアールの美しさが天童木工の技術力の高さを物語っている。体に自然にフィットし、座り心地も至って快適だ。

Profile
南 貴之

好事家

南 貴之

1976年生まれ。PR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中を巡り、日々良品を探している。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2022年5月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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