Oct-19-2023

好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]VOL.21

絶妙な違和感とともに動物を工業デザイン化

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい――。そんな想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

Waltrend LightingのDESK LAMP

ほとんど役に立たない、けどカワイイ

このデスクランプはトゥーカン オオハシという鳥をモチーフにしたものなんですが、言ってしまえば「ただカワイイ」だけ(笑)。デザイナーは台湾人の方だそうですが、それすらついさっき知りました。

出会いはパリで、(ストリートブランドである)フューチャーのアトリエに遊びに行った時、グラフィックデザインをしているフィリックス(・シェイパー)が机にこれを置いていて、思わず『何コレ!?』となったのを覚えています。

この鳥の“デスクを支配している感”がスゴくて(笑)、自分でも日本に戻ってからオークションなどで探して手に入れました。最初にデザインされたのは’80年代で、その後にメーカーをいくつか替えながら販売されていたようで、これは2000年過ぎの個体。

機能的にはライトとして使う時にはクチバシを上げて、そうじゃない時には下げておけばジャマにならないという設計なんですが……まぁ普通にジャマですよね(笑)。でも、配色とかにポストモダンの影響もちょっと感じるし、プラスチックで手頃に作ってある感じもイイ。

こういうポップカルチャー的なものって空間に唐突に取り入れるのがやっぱり楽しい。ハズしの美学ですよね。こういうただカワイイだけのデザインが商品化してるっていうのもいいなぁと思うんですが、おそらく今はもう作られなくなっちゃったみたいなので、商業的にはうまくいかなかったのかな。

だから準絶滅危惧種かもしれません。保護対象ですね(笑)。(南 貴之)

「鳴かねども 愛くるしきかな 照るオオハシ」

Waltrend LightingのDESK LAMP

BRAND:Waltrend Lighting
ITEM:DESK LAMP
AGE:2005

2001年設立の照明器具メーカーが生産した近代の個体。年代や生産メーカーによってフォルムが微妙に異なり、色も複数種あり。クチバシの内側に蛍光灯が付く。2万8600円(フレッシュサービス ヘッドクオーターズ)

DETAIL

Waltrend LightingのDESK LAMP

クチバシを畳んだときの憂いを帯びた佇まいもポイントで、本体を収める箱のデザインも製品のムードを反映したポップなもの。日本での使用には変圧器が必要だ。

南 貴之

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、グラフペーパーの主宰など、型にはまらず活動中。世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探し求めている。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2021年12月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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