Oct-18-2023

好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]VOL.20

商業デザインとは真逆の神秘的&原始的な創作物

まだ見ぬグッドデザインに出会いたい――。そんな想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。

アフリカの部族の仮面と像

文化として脈々と受け継がれてきたもの

パリに行くとよくヴィンテージショップを覗くんですが、たまにアフリカ系の方がやっているお店に出くわします。移民の方が多い国らしいですよね。そういうお店でたまに出会うのが、アフリカの部族の仮面や像。

地域や風土によってカルチャーが違うし、使われる素材もさまざまなんですが、機械じゃなく手作業で作られるこういうアートは普段都会で暮らしている僕たちに、失われた人間の本質みたいなものを思い出させてくれる気がしています。

僕はモディリアーニの絵が昔から好きで、彼がこうしたプリミティブアートから影響を受けていたことや、他にもいろんなデザイナーさんが自宅やアトリエに飾っているのを見かけたことが興味を持ったきっかけ。

もうなんていうか、とにかくモノとしてのパワーがすごいんです。デザインした人が明確な作品も素晴らしいんだけど、古い時代に誰が作ったかもわからないけど、文化として脈々と受け継がれてきたものにも同じくらい価値を感じます。

なかでも僕が惹かれるのは、抽象的なデザイン。写実的ではないけどモチーフの特徴が捉えられていて、人が作った痕跡がちゃんと残っているものが好きです。部族や背景もできるだけ調べはしますが、重要なのはやっぱり作風。

どんな場所でこういうものが生まれたのか、すごく興味はあるんですが、旅の長さに僕は耐えられないと思うから実際に行くのは難しいだろうなぁ~(笑)。きっとそれも含めて、憧れてるんでしょうね。(南 貴之)

「生き続く 銘なき作の 目はいまだ」

アフリカの部族の仮面と像

BRAND:−
ITEM:OBJET
AGE:UNKNOWN

羊を模した面は仮面舞踏の風習で知られるコートジボワールの民族、バウレ族のもの。男性を象った像は作り手も出処も不明。どちらも木製。右/3万8000円、左/4万円(フレッシュサービス ヘッドクオーターズ)

DETAIL

アフリカの部族の像

男性像はかなり抽象化されていて、見方によって受け取る表情の印象も変わってきそう。経年によって生まれた「木の風合い」が、その存在感をさらに際立たせている。

南 貴之

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中を巡り、日々良品を探している。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2021年11月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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