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VITRA ULM STOOL

崇めるよりも、カジュアルに付き合いたい

マックス・ビルのデザインが好きで、昔からユンハンス製の時計や展覧会のポスターなんかを買ってきました。このスツールも’50年代に彼が手掛けたもので、バウハウスを出た後、初代校長を務めてウルム造形大学で使うために作られたのだそうです。

イスとしても踏み台としても使えるし、ひっくり返せば本を載せて持ち運べる。その持ち運ぶときに握る横木の部分の造形が特にすごいなと感心します。用途がしっかりしていて理に適っていて、生産するメーカーこそ数社変わりましたけど、それでもいまだに使われ続けている。

ここで紹介しているのは’90年代のヴィトラ社製のもので、そこまで古くありません。それでも当時からずっと使い続けているからグラつきが出てきていています。今はヴォーンベダルフ製の現行品も一緒に使っているんですが、きれいな質感も使い込んで味が出た表情も両方好き。

本当に興味がある人はオリジナルの’50sのものを探してもいいと思うけどまず見つからないし、出てきても数十万円というような金額になっちゃうからおいそれと使えない。このスツールに関しては崇めるよりももっとカジュアルに付き合えるほうがいい気がします。

コンテンポラリーな空間にもクラシックなインテリアにも合うし、畳敷きの和室にあっても格好いい。当時の大学の写真を見ても、それがいつの時代かわからないくらい古さを感じないんです。いいデザインって、きっとこういうことなんでしょうね。(南 貴之)

「持つ様も 絵になる多用途 良デザイン」

VITRA ULM STOOL

BRAND:VITRA
ITEM:ULM STOOL
AGE:1990s

座る、載せる、運ぶなど、多様な用途に活用できる木製スツール。座面と側面は組継ぎという手法で接合されていて、木工製品ながら釘ひとつない、工法までミニマルな逸品。W39×H44×D29cm。写真は南氏私物。現行品は「ヴォーンベダルフ」製で購入可能。3万7000円(メトロクス)

DETAIL

VITRA ULM STOOL

これ見よがしでなく、座面の板の裏側にマックス・ビルの署名が刻印されているのも特徴。持ち運ぶ際などに、さりげなく覗く。

南 貴之

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。

 


[ビギン2021年3月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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