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GAGOSIAN ROME EXHIBITION POSTER

この先、きっとこういうものは生まれない

コロナ以降、以前よりも家のことに関心が高くなって、部屋やオフィスを見直した人も多いと思います。日本には壁に穴を開けないように、という風潮があるけど、僕は昔から構わず開けちゃうタイプ。どうせ敷金は戻らないと思ってたから(笑)。

そういう目で見ると、壁に何か気分が上がるものを飾りたくなるんだけど、好きなアーティストの作品となると希少だし、金額的にもなかなか手が出ない。でも、ただの複製には興味がない僕にとって、ちょうどよかったのがこういうポスターです。

アメリカのアーティスト、サイ・トゥオンブリーが晩年に行ったエキシビジョンのものなんですが、彼は作品だけじゃなく世に出るものすべてにこだわりを持っていて、ギャラリーに丸投げする人も多い中で、ポスターに関しても「こういう紙にこういう印刷で」とかって注文して刷っていたみたいなんです。

だから紙自体の質もいいし、元のアートワークのシミや水彩の濃淡まで再現されているから、最初見たときは原画なのかと思ったくらいです。本人がご存命だったから生まれたもので、この先回顧展があったとしてもきっとこういうものはできないんだろうなぁ。

年代で言えば最近ですけど、そういう意味でこれも古具ならではの魅力なんじゃないかと思っています。しかし、サイ・トゥオンブリーには何でこんなに惹かれるんだろう。存在感があるのに存在感がないようにも感じる、不思議なアーティストです。(南 貴之)

「熱量と 美学を残した 量産品」

GAGOSIAN ROME EXHIBITION POSTER

BRAND:GAGOSIAN ROME
ITEM:EXHIBITION POSTER
AGE:2008

ガゴシアン・ギャラリー・ローマのオープン時に開催された同作家の個展で販売されたもの。写真は南氏私物。同デザインのポスターをグラフペーパーにて展開中(アクリル額装込)。16万5000円(グラフペーパー 青山)

DETAIL

GAGOSIAN ROME EXHIBITION POSTER

水彩の原画の筆致が高精度でスキャン・プリントされていて、至近距離で見ても量産品とは思えないほどの再現度。紙はミミ付きで、味わい深さにも目を見張るものがある。
 

“孤高の詩人”と称された、無二の表現者[サイ・トゥオンブリー]

サイ・トゥオンブリー

1928年生まれ。米国出身の画家であり、彫刻家。従軍を経て1950年からは拠点をローマに移し、2011年に逝去するまでをこの地で過ごす。時代ごとに作風は大きく変わるが、そのどれもが熱狂的なファンを生んでいる。

南 貴之

南 貴之

1976年生まれ。国内外のブランドのPR業をはじめ、型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。

 


[ビギン2021年2月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘

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