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今回の舞台は、1566年創業、寝具メーカーの西川。同社が開発したマットレスは、あの大谷翔平選手も使用しています。世界で活躍するスポーツ選手からもアツい支持を集める技術とノウハウを応用して、昨春お尻のまくら「Keeps(キープス)」をリリースしました。前半では「部屋中が発泡スチロールだらけになった」というサンプル制作の様子をお届け。後半では、独自性を客観的に証明するために行った実証実験について紹介します。開発担当者、西川の池田さんにお話を伺いました。

前編はこちら

今回のビギニン


西川株式会社 企画開発担当 池田 奨さん

静岡県御殿場市出身。2011年に入社。3年間営業経験を積んだのち、ウレタン素材を使ったマットレス・まくらの企画開発部に移動。大谷翔平選手が愛用する[エアーSX]マットレスの開発に携わった経験も。「趣味はランニングです。休日はフルマラソンに参加することもあります!」

Struggle:
世界初の機械で、座ったままMRI検査を実施

プロジェクトを立ち上げたときはコロナ禍で、ヘルスケアクッション業界は既に飽和状態。たくさんの試作の末に完成したサンプルでしたが、営業部からは「寝具じゃないので、売り場との親和性がない!」とか「そもそも西川が作る意味がある?」など、商品の売れ行きを不安に思う意見が多数あがっていました。「実は、キープスを開発し始めた当初は社内の反応があまり芳しくなかったんです」と、苦笑いする池田さん。

「そんなことはない!必要としている人がいるはずだ!と自分を奮い立たせてプロジェクトを進めていました(笑)。でも、西川だからこそ作れたっていうのはやっぱり打ち出したいところ。そこで、金沢大学の医薬保険研究域保健学系を専攻する教授に、その効果を検証してもらうことにしたんです」

検証に使用したのは、金沢大学のグラビティMRI。任意の姿勢で人体のさまざまな箇所の形態や特徴を画像化できる機能を、世界で初めて搭載した装置です。つまり、このグラビティMRIを使えば座り姿勢のままのデータを取ることができるというわけ。「お尻にやさしいクッションは数あれど、クッションが骨にもたらす影響まで調べているのは珍しいんじゃないかな」と、池田さん。

「一般的にMRIの装置に入る時って寝っ転がって検査しますよね。でも、クッションって座りながら使うものでしょ? 使用後の骨の状態も座ったままで撮影できたほうが、正確な効果を実証できる。ボランティア10名の方に実際にキープスを使用していただき、クッションを使う前と後でデータを見比べてみました」

背骨をまっすぐにして、圧力はキレイに分散

上段の画像は座姿勢を横から撮影したもの。赤い点線が背骨を表しており、クッションの上に座っている方が背骨がまっすぐ立っていることが確認できます。座面に設けられた穴に坐骨がフィットしているので、腰の位置が前にズレず、無理なく正しい姿勢をキープできるのです。

一方で、カラフルな検証データは座圧を下から測定したもの。クッションとの接触面全体に座圧が分散されていることを証明し、圧力は青から赤になるほど大きくなります。それを頭に入れてデータを見ると、クッションありの場合は赤色はほとんど見られず、圧力をうまく外に逃していることが一目瞭然。これは、圧力バランスが坐骨1.0:仙骨1.7:大腿部1.0の黄金比になるように設計された、トライアングルサポートシステム®︎の効果です。西川のヒット商品「医師がすすめる健康枕」の構造をベースにした特別なシルエットを採用しており、仙骨、坐骨、大腿部の3点で体を支えています。

骨盤部の骨盤傾斜角を測定したグラディエントエコー画像(左)。腰部の腰椎前弯角を測定した高速スピンエコー画像(右)。骨盤傾斜角は約13%軽減、腰椎前弯角は未使用時より約364%も改善した。どちらの部位についても、骨の位置は非使用時より使用時の方が正常値に近づいた。

角度を付けるためにクッションはやや厚く設定されていますが、クッション性があるため姿勢や体型に合わせてフィット感は常に最適な状態。座面には坐骨が触れる箇所以外にも穴を設けて通気性も高めています。

姿勢をキレイに正してくれて、疲れにくくてムレ知らず。その快適な座り心地は、骨盤部の骨盤傾斜角と腰椎前弯角を正常値に戻す効果も期待できます。腰にかかる負担を軽減する腰椎前弯に関しては、特に大きな改善が見られました。

「先行販売したクラウドファンディングのプロジェクトでは、992名のサポーターから総額1,000万円を超える支援金が集まりました。実績が立ったおかげで、キープスを見る社内の目も変わったんです!」

Reach:
利用者大満足の「お尻のまくら」誕生!

開発に取り掛かってから一般発売まで約2年の月日を費やした、骨盤サポートクッション・キープス。カラーは売り場で目立つライムイエローを含めた3色展開。“お尻のまくら”というキャッチコピーは、池田さんの考案です。

「“お尻のまくら”という表現については、いろいろと賛否両論がありました。お尻の形をしたまくらだと思われそうという意見が出て、一度はボツにしようとしたんですよね。箱の隅に小さくプリントしているのが、その名残り(笑)。でも、よくよく考えると私自身このワードがすごく気に入っていて。クラウドファンディングで売れた理由を改めて調べると、“お尻のまくら”という言葉に惹かれた方が大勢いたんです。これから準備する新しいパッケージでは、もっと大きく打ち出そうと思っています」

「お尻のまくら」のキャッチコピーが小さくプリントされた現行パッケージ

キープスにはジップで簡単に付け外しのできるカバーが付属します。これも池田さんのこだわりのひとつ。西川だからこその魅力は、その構造以外でも表現されています。

「クッションやマットレスを作り続けてきた弊社は、立体縫製が得意なんです。なので、キープスのように複雑なシルエットでも、ピッタリと形に合わせたカバーを作れます。カバーの表面には抗菌加工を施していますし、汚れてきたら洗うことだってできますよ。やっぱり、寝具と同じように、クッションも清潔に保ちたいですからね。ちなみに、裏面には滑り止め生地を使っています。椅子からずり落ちないので、座り姿勢も崩れません」

「私は会社のチェアに敷いていますが、自分の席から離れるときはお尻が寂しく感じますね」と笑う池田さんのモットーは、使う人にとってやさしいモノづくり。その想いは西川の顧客さんにもしっかり届いており、キープスは売り場でも大好評。マットレスやまくらとセット買いされるケースも多いですし、これまで西川では割合の少なかった若い層を獲得するアイテムとしても、キープスはその存在感が大きくなってきています。

「オフィスやダイニングの椅子に使っていただくのを想定して作っていますが、ソファや床に直置きしている人もいらっしゃいます。なかには車で使っているというお声もいただき、驚きました。当社のラインナップの中では手頃な価格ですし、キープスがきっかけになって西川のファンが増えてくれるとうれしいですね」

そんな池田さんは、キープスから登場する新商品、その名も「腰のまくら」を鋭意準備中! 6月5日よりクラウドファンディングにて先行予約販売を開始しており、これまた大反響が期待されます。忙しい現代人の働く姿勢をサポートする池田さんのモノづくりへの情熱は、留まるところを知りません!

Keeps (キープス)
骨のポジションを安定させることで理想的な姿勢に導くヘルスケアクッション。独自開発のトライアングルサポートシステム®︎を採用し、坐骨にかかる圧力を通常よりも約55%軽減する。素材はクッション性に優れたウレタンフォームで、幅広い種類の椅子に対応。座面に密着する部分が滑り止め生地になったカバー付き。取り外し可能なため、いつでも清潔な状態を保つことができる。イエロー、グレー、ブラックの3色展開。W44×H18×D41㎝。1万1000円(税込)。

(問)西川株式会社/0120-36-8161 (受付時間:平日10:00~17:00)


写真/丸益功紀 文/妹尾龍都

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