好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
後にJBLの社長に就任した米国デザイナーの傑作たち
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい――。そんな想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
無駄のないデザインが本当にモダンです
好きなものが仕事にもなっている僕にとって、唯一の純粋な趣味と言えるのが音楽なんですが、なかでも最高の贅沢がコーヒーを飲みながらレコードを聴くこと。
それで昔のジャズとかをかけるワケなんですが、せっかくなら当時の環境で聴きたいと思い、オーディオの本を買い漁ったりして調べていくうちにいちばん惹かれたのがこのJBLでした。ここで紹介している3つはすべてアーノルド・ウォルフさんという方のデザインで、僕はこの人が手掛けたものだけが好きなんです。
詳しい先輩曰く、オーディオには3段階あって、最初はただ“聴ける”、次がそこに“居る”、で、最後が“匂う”なんだそうです(笑)。
それは僕には深すぎる世界なんだけど、デジタルやCDの音は(二進法で) 0 、1 、0 、1 という信号で処理されるけど、レコードはそこで拾われない音も全部入ってると言われています。
楽器の音はもちろん、それを弾くときの手の音すら入っているそうで、個人的には現代のオーディオよりも音が柔らかいように感じられるんです。とはいえ、やっぱりこの見た目が好き。フォント選びとか鏡面の仕上げとか、無駄のないデザインが本当にモダンですよね。
このパワーアンプ(上)はモノラルだから、ちゃんとした環境で聴くにはもう1台同じものが要るんです。でも、この1台も出会うまでに3年かかったし、いつになることやら……。(南 貴之)
「古アンプ 見た目も楽し 過去の音」
BRAND:JBL
ITEM:AMPLIFIER
AGE:Late 1960’s
上から「SE 400」パワーアンプ、「SG520」プリアンプ、「SA 600」プリメインアンプという内訳。隣のスピーカー、「ハークネス」も同じシリーズのもので、アーノルド・ウォルフによるデザイン。
写真はすべて南氏私物。SE 400(上)の後継機・SE 400SとSG 520(中)は、ヴィンテージオーディオ店「ジュピターオーディオ」にて取り扱いあり。要問い合わせ。SE 400S・SG 520/68万円[セット販売](ジュピターオーディオ)
DETAIL
「ハークネス」はバクロードホーン方式のスピーカー。質感のよい米松を使っていて、それによりずっしりとした低音域が堪能できる。
ボリューム操作のツマミの形状、繊細なヘアラインとミニマルなフォントの組み合わせなど、ディテールまで洗練されている。
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、グラフペーパーの主宰など、型にはまらず多彩に活動中。世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探し回っている。
[ビギン2020年6月号の記事を再構成]写真/若林武志 文/今野 壘