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ラグビー日本代表でも主将を務める埼玉パナソニックワイルドナイツのPR稲垣啓太

日本のトッププレイヤーに加え海外の大物選手も多数活躍し、毎節ハイレベルな戦いが繰り広げられているジャパンラグビー リーグワン(以下、リーグワン)ディビジョン1。2シーズン目の今季は全16節のうち第12節までの72試合が終わり、リーグ戦は残すところわずか4節となった。

新型コロナウイルスの影響で多くの試合が中止となった昨季に対し今季は全試合が開催されており、不戦勝や不戦敗による勝ち点の有無を伴わない純粋な勢力図が順位表に反映されているシーズンとなっている。

開幕から唯一全勝中(12連勝)で首位をひた走るのは、昨季王者であり、リーグワンの前身にあたるトップリーグのラストイヤーとなった一昨季も頂点に立った埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉ワイルドナイツ)だ。旧リーグと新リーグをまたいでの3連覇を虎視眈々と狙っている。

日本代表でもキャプテンを務めるHO坂手淳史を筆頭に、PR稲垣啓太、クレイグ・ミラー、ヴァル アサエリ愛、FL/NO8ベン・ガンター、LO/FL/NO8ジャック・コーネルセン、SO松田力也、SO/FB山沢拓也、CTBディラン・ライリー、FB野口竜司、そして今年4大会目のラグビーワールドカップ出場を目指すベテランHO堀江翔太といった、世界を舞台に戦ってきた日本代表経験者が揃う。

さらに、2019年のラグビーワールドカップ日本大会の優勝メンバーである南アフリカ代表LOルード・デヤハーとCTBダミアン・デアレンデ、オーストラリア代表WTBマリカ・コロインベテといった世界最高峰のトッププレイヤーたちも期待通りの活躍をしており、日本の選手たちと一体となって埼玉ワイルドナイツの快進撃を支えている。

強さの源は、昨季までも大きな武器にしてきたディフェンス力だ。第12節終了時点の総失点はリーグ最少の182点で、総得点(436点)は3位ながら得失点差(254点)は1位。これがチームの安定感を物語っている。トライ数(57トライ)は、2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(59トライ)、3位の東京サントリーサンゴリアス(60トライ)、4位の横浜キヤノンイーグルス(59トライ)、5位の東芝ブレイブルーパス東京(58トライ)をいずれも下回っているが、直接対決でこうしたチームのアタックを封じて勝利している点も現在の結果につながっている。

とはいえ、今季の12勝すべてが快勝だったわけではない。第1節の東芝ブレイブルーパス東京戦は22-19と3点差、第2節の静岡ブルーレヴズ戦は15-14と1点差、第6節の横浜キヤノンイーグルス戦は21-19と2点差の辛勝だった。特に第2節の静岡ブルーレヴズ戦と第6節の横浜キヤノンイーグルス戦は後半40分、すなわち試合終了間際に逆転しており、久しぶりの黒星がちらついた試合となった。ビハインドを抱えても落ち着き払い、特に後半に強く、最後にしっかり勝ち切るのが埼玉ワイルドナイツの強さと言える。

高い経験値と卓越したスキルで劣勢であってもチームを逆転勝利に導くHO堀江翔太
高い経験値と卓越したスキルで劣勢であってもチームを逆転勝利に導くHO堀江翔太

チームの象徴的存在であり、主に後半から途中出場してチームをまとめ上げ、チームを勝利に導くことから「ラスボス」の異名を取るHO堀江翔太はこんなコメントを残している。

「自分たちがやってきたことをしっかり出して、それでも負けたらしゃあない。でも、やってきたことを出せれば勝てる、と僕らは思っている」

一言で言えば「遂行力」だろう。やってきたことをやり切る、ということだが、言うは易し、これができるチームは限られている。毎試合、準備してきたことを遂行する力が埼玉ワイルドナイツにはあり、他チームを大きく上回っているポイントと言えるだろう。

優勝を争うプレーオフトーナメントにはリーグ戦上位4チームが進出することになるが、埼玉ワイルドナイツ(勝ち点54)はすでに進出濃厚と言える状況だ。追う2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(同47)、3位の東京サントリーサンゴリアス(同42)も順当に行けば昨季に続いてプレーオフ進出を果たせるだろう。

FL/NO8リーチ マイケルが牽引する東芝ブレイブルーパスは昨季に続き4強を目指す
FL/NO8リーチ マイケルが牽引する東芝ブレイブルーパスは昨季に続き4強を目指す

注目は、チーム史上初の4強入りを目指す4位の横浜キヤノンイーグルス(同38)と、昨季は4強入りを果たした5位東芝ブレイブルーパス東京(同35)の競り合いだ。リーグ戦唯一の直接対決となった第8節は59-48で横浜キヤノンイーグルスが勝利を収め、その後は勝ち点の差が最大10まで開いた両者だが、現在の差は3。最終節までどう転ぶかわからない状況だ。

埼玉ワイルドナイツと接戦を演じているこれら2チームは、仮にリーグ戦4位に入った場合、プレーオフトーナメント準決勝で1位通過チームと対戦することになる。もし埼玉ワイルドナイツが1位通過したらこうしたチームの挑戦を王者らしく跳ね除けるのか、あるいは下剋上を起こされるのか。混戦模様のリーグ戦、そしてプレーオフトーナメントの行方が見逃せない。

編集者兼ライター
齋藤龍太郎

《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。

文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)

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