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TONITOのラグと原材料
ウールの衣類(右上)が→反毛によってワタ(右下)になり→それを紡績で糸(左上)にして→織りを経てTONITOのラグ(左下)が完成します。

日本では不要になった服のおよそ68%が普通ゴミとして捨てられ焼却処分されています。その量は年間約50万トンと莫大な量…。近年、リサイクル率を上げるため、アパレルブランドや大手スーパーが店頭に古着の引取ボックスを設置し、回収に貢献しています。集められた衣類は故繊維業と呼ばれるリユース・リサイクルの選別業者に渡り、主に国内・海外向けの2次流通、廃棄処分に分けられているということは前編でご紹介しました。

後編は50年以上の歴史をもつ大阪府泉佐野にある故繊維業者、東谷商店が、リユース・リサイクルが難しく、これまで多くを廃棄していたウール製アパレルを再資源化した「TONITO」について深堀りします。

前編はこちら

今回のビギニン

東谷商店の東谷正隆さん

東谷商店 東谷正隆さん

1982年生まれ。50年以上に渡って大阪泉佐野市で古着の卸売を営む東谷商店の3代目。東京での営業職を経て25歳で家業に入る。2020年、廃棄衣料をメインの原材料に、品質と環境的価値を併せもつプロダクトブランド「TONITO」を立ち上げる。プライベートは、中3からドラムを始め現在もバンド活動を継続。二女の父で、娘さんと一緒にライブへ行くこともあるそう。まさかのホコリアレルギーです。

Struggle:
経験ゼロからスタートした未知の商品開発

TONITOのリサイクルウールラグ
TONITOのリサイクルウールラグ。本体はリサイクル混率70%バージンウール30%で、サイドのフリンジはラミー(麻)が使われています。

再生ウール素材の開発に舵を切った東谷さん。自社での商品開発は初体験で、文字通り一からの出発でした。

「インテリア関係の雑誌を見ていて、リサイクル混率を高めるなら素材の特性的に服ではなくラグがいいなと思いました。で、ここからは業種あるあるなんですけれど、故繊維業はあくまで真ん中(中間業者)でしかない。その後の工程、紡績に関しては全く無知で、ウールの古着をどうやってリサイクル素材(糸)にするのか、そこを勉強するところからのスタートでした。不要になった繊維や古着を反毛機と呼ばれる大小のローラーが重なり合った巨大なおろし器のようなマシンでワタ状にする「反毛」という技術があることは聞いたことがあって。大阪府泉大津市に反毛の会社があると聞けば、そこに足を運んだり。あと助けて頂いたのは『カラーリサイクルシステム』ですね」

東谷商店の東谷正隆さん

『カラーリサイクルシステム』は、素材別に再資源化するのが難しい混紡衣類を色別に分けることで衣料や文房具へのアップサイクルを可能にした日本発の循環型繊維リサイクルプロジェクトです。

「現在は、株式会社 colourloop 代表の内丸もと子さんによって運営されていますが、約10年前、京都工芸繊維大学の木村照夫名誉教授と、テキスタイルデザイナーの内丸さん(当時は同大学の博士課程に在籍)、そこに素材メーカー、成型加工業者を加えた『カラーリサイクルネットワーク』が始まりで、そこに東谷商店も参加し、素材となる古着を提供していました。当初は父がメンバーで、何年かしてぼくも加わりました。その繋がりで、繊維以外の知識や色分別について、勉強させていただきました」

集められたウール
集められたウールは、白・オフホワイト・黒・ダークグレー・ライトグレー・モカ・茶・黄・緑・赤・青・紫に選られ、そこからさらに濃い、真ん中、薄いのトーンに分けられて反毛工場へと送られます。

目標であったリサイクル100%の再生ウール素材を作ろうと考えた東谷さんですが、糸作りに悩まされます。

「反毛をやられてる現場の方からすると、ウールのリサイクルっていうと、肌触りや柔らかさの点で劣るというイメージがあったんですね。古着のセーターを持っていくと、こんなんどうしようもないよと言われて、こちらも知識がないので、とりあえずやってくださいとお願いしました。反毛と紡績、どちらの工場にも足を運んで質問しましたね。疑問点は全て相談です。本当に配合からですね。ポリエステルが混じっていると、反毛する際、機械の消耗が激しくなるので、ウール100%のものを集めたり。そういった経験を重ね、今ではリサイクル混率100%ならこう、70%ならこんな感じと出来上がりの生地をイメージできるようになりましたが、当時は工場の方にいろいろとご苦労をかけたと思います(感謝)」

東谷商店の東谷正隆さん

トライアルアンドエラーを経て、ラグに適したリサイクルウール糸は半年で完成。しかしまだ終わりではありません。

「立ち上げにあたって、製品はもちろんですが取り組みも見てもらいたくて、ラグを手織りで出来ないかと考えたんです。アパレルメーカーさんはインドなどで作られてるんですね。ぼくらにそれは無理なので国内で探していたところ、たまたま福祉施設の方と知り合いまして。相談したらいけますよってことでサンプルをお願いしたんです。そうしたらものすごく良いもの上がってきて、そこから製品化に向け、打ち合わせを重ねました。ぼくは現場を見て状況把握しながら進めたいので、必ず見学に行くようにしているんです。コロナで身動きがとれず一年くらいはかかりましたね。施設では障害をもった方が織られているんですが、すごく集中力が必要で、人によって作業時間も異なります。なので、その日のコンディションを見て適切な仕事を振り分けたり、完成品のクオリティを確認する施設の方の存在がとても大事になります」

Reach:
リサイクル素材を使ったプロダクトで意識を広げる

リサイクルウールを使ったTONITOのラグ
リサイクルウールを使用したラグ(奥)と、NEWアイテムのミニサイズのラグ(手前)。

こうして、東谷商店に廃棄衣料再生プロダクトブランドの「TONITO」が誕生。第一弾となるリサイクルウールラグでは手織りの中サイズと、機械織りの大サイズ(BLANKET RUG)が発売されました。

「今回のラグは敷物用なのでリサイクルウールの混率が70%の糸を使いました。100%を目指していましたが、生地にコシをもたせるためバージンウールを30%入れています。触ってもらえばわかるんですが、実はリサイクルウールって思った以上に柔らかいんですね。これは原料に使っている日本のウール製品がメリノとかスーパーファインといった高品質かつ繊維が細いものが主流になっているから。一般的なバージンウール製のラグと比べてもチクチク感がむしろ抑えられています」

リサイクルウールを使ったTONITOのブランケット
TONITOの新作であるリサイクルウールを使ったブランケット(上写真は試作品)。ブラック、グレー、クレージュ、イエローの4色展開で、クレージュ、イエローでは、リサイクルウール100%の糸を使っている。2023年3月上旬発売予定。W100×H150cm。9790円。

TONITOで展示会に参加したところ、リサイクルウールの混率が70%というのは、他ではなかなかない、と、メーカーの反応も上々だったという東谷さん。気になるこれからの展開について訊きました。

「本来やっているのが衣料リサイクルを回す仕事なので、TONITOを通じてみなさんが処分した衣類のその後を考えるきっかけになったり、またリサイクルしやすさを考えて服を作るアパレルブランドさんが出てきたり、そんな意識にアプローチ出来たら良いですね。ヨーロッパではリサイクル事業は国が主導していますが日本はまだそこまでじゃありません。衣類の回収率を上げましょうと訴えるのも大事ですが、今後はその先。回収されたものが、どうリサイクルされて、どう日常に戻ってくるのか、そういうことを考えるフェーズになるのかなと思っています」

東谷商店の東谷正隆さん

第2弾としてミニサイズのラグやブランケットもリリース、TONITOでは今後も新しいリサイクル繊維を使ったアイテムを企画中ということです。

「ウールを最初にやったのは始めやすかったからで、今後は他のリサイクル素材にも挑戦してみたいですね。あとは、ぼくは『(前述の)カラーリサイクルシステム』のメンバーでもあるので。もっと立体的にみんなで協力してやっていけたらなと思います」

服を買う時リサイクル素材が入っているどうかを意識している方も多いと思いますが、手放したその後を考えた時、リサイクルしやすいものを選ぶ。例えば100%同一素材を選ぶ。そんなことも私たちにできることの一つ、なのかもしれません。

TONITOのラグ

本体はリサイクルウール70%に、コシを持たすためバージンウールを30%入れた糸を使ったラグ(写真はRUG SMALL)。サイドのフリンジはラミー(麻)製で、手織りで作られており、チクチクせず柔らかさ風合いともに抜群だ。パッケージのカラフルな紐は、故繊維の生地を再利用している。BLANKET RUG(W145×H200cm)/2万680円。RUG(W50×H75cm)/9350円。RUG SMALL(W30×H45cm)/3520円。

(問)TONITO
https://tonito.theshop.jp

※表示価格は税込み


写真/中島真美 文/森田哲徳

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