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ニュージーランドのオールブラックスと7点差に悔しさにじむラグビー日本代表

オールブラックス戦、悲願の初勝利はならなかった。それでも「歴史的」と言える惜敗だ。

過去10年でラグビー日本代表の強化は飛躍的に進んだ。長らく敗戦続きだったラグビーワールドカップは2015年のイングランド大会で初のプール戦3勝、そして2019年の日本大会ではプール戦4戦全勝で初の決勝トーナメント進出を果たした。2020年は新型コロナウイルスの影響で活動できず出遅れたが、昨年から活動を再開。世界ランキングは10位を維持し、今やランキング1桁の世界の強豪と毎年対戦できるまでに格を上げた。

その末にマッチメイクされたのが、10月29日(土)に東京・国立競技場で開催されたニュージーランド代表戦だ。ワールドカップ最多タイの優勝3度を誇り、全身黒のジャージーを身にまとって世界の全チームに対して勝ち越している唯一のチーム、愛称「オールブラックス」。世界ランキング4位(日本代表戦当時)と昨年から調子を落としてはいるが、世界のトップチームであることに変わりはない。日本代表にとっては栄誉ある、また強化の上でも有意義な対戦となった。

前回対戦した2018年までの対戦成績は日本代表の6戦全敗。ワールドカップでは1995年大会で17-145という大会史上最多失点を記録し、2011年大会でも7-83で大敗している。それでも、日本に迎えての対戦となった2013年は6-54、2018年は31-69と徐々に差を詰めていく。7戦目となる今回は、7月にわずか5点差(15-20)でフランスに敗れた日本代表をニュージーランドが警戒して臨むという点でも貴重な対戦機会となった。

国立競技場でマオリ族伝統のウォークライハカのカマテを披露するラグビーニュージーランド代表
キックオフ直前にマオリ族のウォークライ「ハカ」の「カ・マテ」を披露するニュージーランド代表

前半11分、日本代表はニュージーランドLOブロディー・レタリックに先制トライを許すが(0-7)、19分にSO山沢拓也がペナルティゴールを決めて3-7と追い上げる。26分、32分と立て続けにトライを決められ3-21とされるが、37分に敵陣で転がったボールに反応したSO山沢が得意のキックでボールを転がし、キャッチしてトライ。ゴールも自ら決めて10-21とする。さらに前半終了間際の40分、日本代表は鋭いランでタッチライン際をゲインしたCTBディラン・ライリーから見事なパスを受けたSH流大がトライ。これで17-21、わずか4点差で試合を折り返す。

後半に入るとキックオフ早々の2分にニュージーランドWTBケイリブ・クラークがトライ。17-28と再び引き離されるが、日本代表は16分、ニュージーランドSHフィンレー・クリスティーのキックを日本代表LOワーナー・ディアンズがチャージ。そのままボールを懐に収め、インゴールまで駆け抜けてトライ。24-28と再び4点差とする。 21分にはニュージーランドNO8ホスキンス・ソトゥトゥのトライで24-35とされるも、39分、日本代表は敵陣ゴール前のラックからボールを持ち出したFL姫野和樹がトライ。31-35と再び4点差に詰め寄る。

ラグビー日本代表とニュージーランド代表オールブラックス戦で後半16分にトライを挙げたLOディアンズとSH流大
後半16分に殊勲のトライを挙げたLOディアンズ(右)を祝福するSH流

42分には自陣でのペナルティにより相手に3点を返され、最終スコアは31-38。敗れはしたが過去最少点差を記録した。新たな歴史の扉を開きかけた日本代表は一定の手応えを感じながらも、オールブラックスに勝てるチャンスをものにできなかったという悔しさもにじませた。日本代表キャプテンのHO坂手淳史の試合後の言葉に、それがよく表れている。

「国立(競技場)という場所で65,188人のお客さんの前でラグビーできたことはすごくうれしいですし、素晴らしい経験になりました。勝つという思いで戦いましたが、たくさんのミス、ペナルティがあり最後は届きませんでした。ただ、この1週間やってきたことは間違っていなかったですし、自分たちの目指すラグビーを少しは見せられたかなと思います」

坂手の言葉通り、国立競技場には改修後最多記録となる65,188人が来場した。今年7月に行われたパリ・サンジェルマン対川崎フロンターレの64,922人を上回ったことは、日本のラグビーファンが代表に寄せる期待の大きさを表していると言えよう。ワールドカップを除く試合での国内最多観客数というマイルストーンを打ち立てたラグビー日本代表が次に狙うのは、やはり勝利という結果だ。

実は、日本代表の旅は続いている。オールブラックス戦の翌週に欧州へと発ち、11月12日(土)にイングランド代表と、20日(日)にフランス代表といずれも敵地で対戦するのだ。イングランドとは来年のワールドカップ、フランス大会での対戦が決まっており、今回はその前哨戦となる。同大会ホスト国のフランスとの一戦は日本代表が大会中の拠点にするトゥールーズで行われ、どちらも意義深い注目の大一番となる。

坂手キャプテンは、ニュージーランド戦後の記者会見でこうも語っている。

「これから修正して、最後に勝つところまで持っていけるようなラグビーをこれから作り上げていきたいですし、またがんばっていきたいと思います」

過去、イングランド、フランスからも勝利を得ていない日本代表にとっては挑戦の連続となるが、歴史を変えるチャンスでもある。今こそ結果を残して来年のワールドカップに向けて弾みをつけたいところだ。

編集者兼ライター
齋藤龍太郎

《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。

文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)

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