ジー・エム・ティー 横瀬秀明さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #085
「有名メゾンにも認められた日本文具史に残る傑作万年筆」
ジー・エム・ティー 代表 横瀬秀明さん
万年筆が昔から好きなんです。最初は服飾業界の先輩方がスーツの胸ポケに挿しているのを真似して買ったんですが、使ううちに万年筆独特の書き味の虜に。それでヴィンテージを含めていろいろ集めていたんです。
この万年筆は6年前に購入しました。きっかけはエルメスのお店で、ある万年筆を見つけたこと。それはキャップがなく、軸を回すと通常とは逆側からペン先が出てくる画期的な構造。一発でシビレましたが、かなりお高い(笑)。で、製品チラシだけもらって帰ったんです。
そのチラシが凝っていて、有名な日本画家が開発秘話をお洒落な漫画にまとめていた。さすがエルメスと関心しながら眺めてたら、そこに元ネタがパイロットの「キャップレス」と書かれていた。
そこですぐさま文具店でキャップレスをチェック。見た目も持った感じも高級感があり、なんだこれで十分じゃないかと(笑)。
実際使い勝手も優秀。思い立ったときに素早く書け、気密性の高いシャッターによりインク漏れや乾燥の心配も不要。カートリッジ交換も楽です。だから最近ではこればかり使用。
それにしても60年代から日本にこんな優れた万年筆があったとは……完全に不覚でしたね。メールが当たり前の今だからこそ、逆に手書きが強く印象に残ることも。手紙をしたためる朝の日課に、ちょっとした幸福をもたらしてくれる、日本の傑作万年筆です。
PILOT[パイロット]
キャップレス万年筆
キャップのない世界初の万年筆として1963年にデビュー以来、多くの人に愛されてきた隠れ名作。横瀬さん愛用のものは、初代と同じ回転繰り出し式の「キャップレス フェルモ」。2万2000円(パイロットお客様相談室)
ジー・エム・ティー 代表
横瀬秀明(よこせひであき)
1965年生まれ。94年に東京・代々木上原で「GMT」を創業し、トリッカーズやジャラン スリウァヤ、アイランドスリッパなどの名靴ブランドのインポーターを務める。セレクト店「バーニッシュ」も経営。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。