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池之端銀革店のUKサドルベルト

日本の職人の手技で醸し出された切り目の美しさにもうっとり

レザーソールの最高峰と謳われるオークバーク(oak bark/樫の樹皮)レザーのタンナー(皮革なめし業者)といえば、独・ジョー・レンデンバッハ(Joh. Rendenbach/2021年に廃業するも、独タンナーのキルガーが「J.R. by Kilger」の名称で事業を引き継いだ)と双璧をなすJ.&F.J.ベイカー(J.&F.J.Baker/1862年創業)が著名です。

英国南西部の中堅都市エクセターの東に位置するデヴォン州コリトン。この地においてJ.&F.J.ベイカー(以下、「ベイカー社」と記載)は19世紀半ばから今日にいたるまで、世界的に珍しいオークバークから抽出されるタンニンエキスを用いつつ、古典的な製革法とされるピットなめし(なめし層を満たしたタンニン溶液の中に生皮を漬け込んで製革するなめし法)を堅持しています。その真正のタンニンレザーは希少で高価ですが、粘りとコシがあり、摩耗などの耐性に富み、しかも使い込むことでしなやかに変化するといった特長を有し、それゆえに英国靴の聖地ノーサンプトンの名だたるメーカーがこぞって底材に使用しているほか、他国の高級靴ブランドにも採用されています。

もちろん、ベイカー社は靴底用の革だけを生産しているわけではありません。オークバークなめしの技術を駆使しつつ、元来が馬具用素材として英国で誕生したトラディショナル革のブライドルレザーなども生産していますし、某メゾンからの依頼で独自に開発したシボ革の「ロシアンカーフ」も、じつは同社の製品革なのです。

さて、ここで紹介するのは、大ヒットした「コンパクト財布」をはじめとする革小物などでおなじみの池之端銀革店(2004年創業)が、そのベイカー社のサドルレザーを使って製作するパンツベルトです。サドル(saddle)とは馬具の鞍(馬の背に取り付ける座部、または荷台)のことで、そこに使用される革には強いコシや堅牢さとともに、人のカラダにも馬の背中にもなじむ適度なしなやかさが求められます。オークバークで深くなめされたことで、これらの条件を満たす以上の品質をもつベイカー社の革はサドルレザーの最高位に立つものであり、このベルトには、そんなプレシャスレザーが使われているワケです。

「UKサドルベルト(UK SADDLE BELT)」と銘打たれた本品は、池之端銀革店がこの9月中旬に受注を開始したばかりのセミオーダー製品。東京・池之端にある直営店など、取り扱い各店舗にてウエストを採寸(1インチ刻み)し、革のカラー、バックルの形状を選択すると、そこから製作が始まり、およそ1か月後に納品されるシステムとなっています。

ここで注目したいのは、ベルト本体のコバに施された仕上げの表情でしょう。日本の職人が手作業を駆使し、手間を費やして丁寧に仕上げた、その切り目には品があり、誠に美しく、ベイカー社製サドルレザーの質感にもみごとにマッチ。じつはベルト作りがルーツの池之端銀革店の真骨頂を見る思いがします。しかも、この革&切り目仕上げが独自開発のシルバー925製バックルとともに、使い込んでいくにしたがって、さらに深く、味わいある表情に変化するのです。

と、稀少な最高級サドルレザーを使い、これに職人の卓越技が組み合わさった、この「UKサドルベルト」。世の靴好き&革好きの感性&志向に直球で刺さるのはもちろん、その堅牢さゆえに末永く愛用できるベルトをお探しの方にも絶対オススメしたい逸品なのです。

ベイカー社のピットエリア

ベイカー社のピットエリア。ここには、それぞれにタンニン濃度の異なる溶液で満たされた複数のピット槽が並んでおり、原皮は最初に濃度の薄い槽に浸され、やがて段階的に濃い槽へと移されながら、1年以上をかけてなめされていく。「ピットなめし」と呼ばれる、この古典的なタンニンなめし法は、一般的なドラムなめし(巨大ドラムの中になめし剤と一緒に原皮を入れ、回転させながらなめす技法。太鼓なめしともいう)に比してすこぶる効率が低く、手間を擁するものの、タンニンが十分に芯通しされるため、深くなめされて極めて良質な革に仕上がる。

池之端銀革店のUKサドルベルト

この美しい切り目仕上げは、日本の職人の手技によるもの。革の裁断面にペーパーがけで下地処理を施し、ワックスで磨き上げること数回。これにより、ベイカー社のサドルレザーが醸す質感にマッチした流麗で味わい深いコバに仕上がる。天候や湿度などにも左右される、この繊細な作業は熟練の職人たちとともに培ってきた池之端銀革店ならではの技術によるものだ。

池之端銀革店のUKサドルベルト

バックルは池之端銀革店オリジナルのピンバックル・タイプ。その尾錠枠の側面に同店のブランドマークとともに、バックルがシルバー925(スターリングシルバー)製であることを示す数字「925」と、ジャパンメイドであることを表す日本国旗の刻印が施されている。なお、バックルには馬蹄型(写真上)とスクエア型(写真下)の2タイプから、また、ベルト本体は黒、またはこげ茶の2色から選択できる。

池之端銀革店の
「UKサドルベルト」

本体素材:英・J.&F.J.ベイカー社製サドルレザー
バックル素材:シルバー925
バックル形状:馬蹄型、スクエア型2タイプから選択可
ベルト幅:28mm
サイズ:28インチ(71cm)~42インチ(106cm)まで、1インチ(2.5cm)刻みで対応
カラー:黒、こげ茶
付属品:引き出し型ボックス、巾着
販売形態:受注生産(セミオーダー)
製作期間:注文後、1か月前後
価格:各6万3800円

問い合わせ先/池之端銀革店 ☎ 03-3828-6605
https://www.ginkawaten.co.jp/

※表示価格は税込


文/山田純貴

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