特集・連載
本格靴ブランド「オールデン」の超キーマンが語る“その時歴史が動いた!!”
本格革靴会議 「モノを大事に」なサステナ社会だし、物価高で「本当に永く使えるモノ」が欲しいし、「今こそ本格靴が必要!」と強く思うからこその珠玉の革靴100連発。おいそれと買える値段じゃないものも多いけど、だからこそ詳細解説したいワケです。ってことで、初心者もツウも納得する「一生靴」をここで見つけてください! この記事は特集・連載「本格革靴会議」#17です。
オールデンは、ビギンが本格靴を語る際に絶対ハズせない(!)ブランドです。ってことで、オールデンの歴史をキーマンとともに復習! これを読めばエポックな出来事はもちろん、知られざる裏話も学べて、このアメリカ代表 本格靴ブランド、オールデンがもっと好きになっちゃいます。
「オールデン」超キーマン
ラコタ 顧問
血脇孝昌さん
東京・浅草で靴の部材関連会社を営む家庭に生まれ、早くから靴に親しみ、オールデンにも強い関心を抱く。1991年、東京にてラコタを創業し、94年にオールデンの日本総代理店に。
1948年
名優の無茶ブリから名作「タッセルモカシン」誕生
ハリウッド俳優ポール・ルーカスはビスポークで手に入れたタッセル付きの紐靴が気に入り、「より履き心地のいい靴を。もっとカッコよく!」とNYとLAの2つの店にビスポークオーダー。偶然、両店が製作依頼した先がオールデンでした。
そこで同社はそれをスリッポンにデザインし、名優の期待に応えたのです。こうして誕生したのが世界初のタッセルモカシン。1948年にはそれが製品化もされ、一躍アメトラを象徴する一足になりました。
TASSEL MOCCASHIN/タッセルモカシン
史上初のタッセルモカシンの末裔。写真はそのバーガンディコードバンタイプ「563」となる。オールデンで最も細身のアバディーンラスト採用。レザーソール。16万9400円。
1981年
『インディ・ジョーンズ』で数々のピンチを乗り越える相棒に!
冒険映画『インディ・ジョーンズ』の主人公インディアナ・ジョーンズ博士が劇中で履いたインディブーツ、こと405ブーツ。オールデンで最も幅広なトゥルーバランスラストが採用されたワークブーツです。
一説に、同博士を演じたハリソン・フォードは大工だった時代から、この靴を愛履きしていたそうな。なお、彼の出世シリーズ『スター・ウォーズ』のハン・ソロ役を後任したのがオールデン・エアエンライクというのは奇妙な一致です。
INDY BOOT/インディブーツ
雨に強いストームウェルト仕様で、米国ではラインマンらがリアルワーク用としてご愛用。ラストはトゥルーバランス、アッパーはクロムエクセル。ネオコルクソール。11万7700円。
1994年
血脇氏、オールデンの工場裏手・古びた倉庫で「ミリタリーラスト」発見!
血脇さんがミリタリーライクなプレーントウを作りたい!とオールデン社訪問時に直談判。案内されたのが工場裏手の古びた倉庫で、「これは使える!」と確信できる木型を探し出しました。それが通称ミリタリーラストの「379X」。
これで作られた靴は目を見張るほどにカッコよく、オールデンの社長もその出来映えに太鼓判を押したとか。ミリタリーラストのプレーントウ男らしすぎて、このラストでブーツも!とタンカーブーツが生まれたのです。
TANKER BOOT/タンカーブーツ
職人によるハンドスキンモカ縫いが美しいコードバンブーツ。1912年にマンソン博士が開発した軍用ラストをベースにしたラスト「379X」を採用。クレープソール。18万1500円。
1995年頃
パリの超有名バイヤー「ピエール・フルニエ氏」が扱う
1952年以降、ハンディキャッパー用オーソペディックシューズを生産してきたオールデンが、そのノウハウをもとに1963年、健常者向けに完成させたのがコンフォートラストのモディファイドでした。
そして、その快適な履き心地に惚れたフランスの名バイヤー、ピエール・フルニエ氏が自身の店「アナトミカ」で、このラストが採用されたアルガンコンオックスを取り扱ったことで、Vチップと通称されるこのモデルの注目度が高まったのです。
ALGONQUIN OXFORD/アルガンコンオックス
Vチップとも呼ばれる名靴。モディファイドラスト採用で、V形に尖ったスプリットトウは、このラストに馴染むよう考案された意匠だ。カーフ製。レザーソール。11万4400円。
1995年
日本人向け「バンラスト」、懇願のうえ、完成! もう甲が痛くな~い♪
「若い頃からアメトラ派だったので、ブルックス ブラザーズのローファーにも憧れていました」と血脇さん。それの製造元がオールデンだったワケで、必然的にオールデン印のローファーにも魅了されていったとか。が、欧米仕様は日本人の足に馴染みにくい。
ということでオールデンに相談して登場したのが、日本人向けに改良したバンラスト。甲がやや高く、ストラップは少し後方に。「我慢して履く」というローファーの常識が覆されました。
PENNY LOAFER
グラマラスな印象のハンドスキンモカがアイコンの超美コードバンローファー。日本人の足にフィットするよう改良された、バンラストを採用。レザーソール。17万4900円。
2018年
TOKYO“ラスト”ストーリー。「丸の内オールデン」にサラリーマンが恋をした♡
ブルックス ブラザーズ ブラックフリースのディレクターも担ったデザイナー、トム・ブラウンは2000年代から自身のコレクションにドレッシーなグラントラストのオールデンを加え、人気を博しました。
そして2018年、ラコタハウス 丸の内店のオープンに合わせ、件の幻ラストがついに日本上陸! 「オープンの頃、多くのビジネスマンが来店されて、なんと店の前に行列ができたんです!」(血脇さん)というほどの注目を集めたのでした。
Alden[オールデン]
STRAIGHT TIP
オールデンには珍しい内羽根式シューズ。米国靴らしい丸みを見せつつもシャープなグラントラストは、この内羽根デザインと相性抜群だ。カーフ製。レザーソール。11万6600円。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。