特集・連載
大人の色気も醸し出せる「柔らかスリッポン」は今でも別腹なのだ(笑)
本格革靴会議 「モノを大事に」なサステナ社会だし、物価高で「本当に永く使えるモノ」が欲しいし、「今こそ本格靴が必要!」と強く思うからこその珠玉の革靴100連発。おいそれと買える値段じゃないものも多いけど、だからこそ詳細解説したいワケです。ってことで、初心者もツウも納得する「一生靴」をここで見つけてください! この記事は特集・連載「本格革靴会議」#09です。
名門ブランドの注目作をお題に、4名の靴賢者+編集長イチカワがあーだこーだと本音で言いたい放談! じっくり読み込んでいただければ、今買うべき本格靴が見えてくる!?
上段/左から、イラストレーター 綿谷 寛さん、ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター 日髙竜介さん 下段/左から、スタイリスト 武内雅英さん、編集・ライター 小曽根 広光さん、ビギン編集長 イチカワ
楽チン至極な履き心地に加えスタイルをノーブルに仕上げる
市川 オリエンタルの↓のローファー、今すっごく売れてるんですってね。
Oriental[オリエンタル]
アルバース アンラインド
丸すぎず尖りすぎない秀逸な木型や、グッドイヤーながらアンラインド仕様により足馴染みが早いことで、ただいま大人気。表情豊かなグレインレザーも◎。5万7200円(ワールド フットウェア ギャラリー 神宮前本店)
日高 「アルバース」というモデルです。オリエンタルブランドの売り上げの7割以上がこれです。バランスのいい木型に加えて、アンラインド(裏地なし)の柔らかな履き心地が大好評。
日高さん「WFGでもアンラインドの柔らかい本格靴がとにかく売れてます!」
小曽根 一度こういう靴を履くと、普通の靴が硬く感じるんですよね。
市川 そこでここではいわゆる“ベルジャンシューズ”(※)的なモデルに着目してみようかと。アンラインドを突き詰めると、この3足に行き着くのでは? まさに代表的なモデル。
上/サントーニフェランテ 左下/ヴィアッジョ 右下/ボードイン アンド ランジ
どれも上質スエードを使いリッチに見えますね(綿谷さん)
綿谷 いかにも素足履きが似合いそうな小洒落たスリッポンばかりだね。ビギンでこの手を紹介するのは初めてじゃない? MEN’S EXの誌面かと思われるよ(笑)。
小曽根 確かにどれもドレス上級者に人気のモデル。とくにイギリスのボードイン アンド ランジは一時期毎号のようにMEN’S EXで紹介していました。イタリアのファッションスナップにも頻繁に登場するし、このブランドがベルジャンシューズ人気の起爆剤になったのは間違いないです。
①ボードイン アンド ランジ
ベルジャン人気に火をつけたボードイン アンド ランジ
市川 ちなみにフェランテ ヴィアッジョって、イタリアのフェランテの別ラインですか?
③フェランテ ヴィアッジョ
イチカワ「柔らかいから機内履きにもいいかも」
小曽根 そうです。よりモダンでリラックス感あるモデルを揃えたライン。選ばれた店舗のみで展開しています。
武内 この3足のような柔らかスリッポンは、脱ぎ履き楽チンなだけでなく、今らしいリラックス感や抜け感を上品に演出できるのも大きな魅力。フォルムは端正だから、スーツに合わせてもこなれた感じにキマるんですよね。
フォルムは端正だからスーツの足元にハマる(武内さん)
綿谷 でもスエードのこういうクタッとした靴って、一日ガンガン歩いたら壊れない? クルマで移動する人限定の靴?
日高 実際ドライビングシューズ的に履く人もいますが、この3足はすべてヒール付きのラバーソールですから、長い距離を歩く日じゃないなら大丈夫です。名門サントーニなんてこんなに屈曲するのに堅牢なグッドイヤー製ですよ。旅先でも重宝するのでは。
グッドイヤーなのにこんなに曲がるサントーニ
②サントーニ
市川 キメキメのスーツに合わせるとちょっとキザすぎるかなぁ、ウチの営業担当にもいたけど(苦笑)。ビギン的には崩して履きたいと思いますね。
小曽根さん「イタリア靴もいいでしょう?」 日高さん「柔らかいけど作りもイイ」
(※)ベルジャンシューズ
上品ながらリラックス感もある、とお洒落巧者から高い人気を誇る柔らかいスリッポン。元々はニューヨーク5番街にあった高級百貨店「ヘンリベンデル」の創設者ヘンリ氏が、ベルギーの靴職人と一緒に作り上げたことから「ベルジャン」という名が冠されたという。じつはNY生まれの靴。
①BAUDOIN & LANGE
ボードイン アンド ランジのサガンストライド
最近のベルジャンシューズ人気の火つけ役。柔らかくて丈夫な上質スエードを使用した定番「サガンクラシック」をベースにソールをラバーソールにしたもので、より日常的に履きやすい仕様に。7万5900円(コロネット)
②SANTONI
サントーニのヌオーヴォ カルロス
カジュアルにもドレスにも馴染む定番木型「カルロス」シリーズを使用。アンラインド&カップインソールでストレスフリーな履き心地を叶え、独自製法によりグッドイヤーと思えない屈曲性も実現。15万5100円(リエート)
③FERRANTE VIAGGIO
フェランテ ヴィアッジョ フォー ユナイテッドアローズのヴィエンナ
コインローファー型のベルジャン。リラクシーなアンラインド仕様だが、型崩れを防ぐためトウ部分のみ裏地を当てているのが上手い。ヒールのあるビブラムソール装着。4万4000円(ユナイテッドアローズ 原宿本店)
「イタリア靴はサンダルにも色気あるよね」―小曽根さん
DUCAL[デュカル]
グルカサンダル
フィレンツェの名門メーカーが手掛けたグルカサンダル。ラウンドトウのダブルモンク靴をカットアウトしたようなデザインゆえ、スーツやジャケパンにも合わせやすいのがいい。8万3600円(トレーディングポスト 青山本店)
ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター
日髙竜介さん
[愛靴:WFG×オリエンタル ジョセフ Ⅱ]
靴好きが高じて製薬業界から転身。古今東西の名靴に足を通してきたが、最近のお気に入りは写真のモンク靴。「スリッポン感覚で気軽に履け、撥水スエード&ラバーソールで雨にも強い。デザイン的にも幅広い装いに合うので、気がつくとこればかり履いています」
編集・ライター
小曽根 広光さん
[愛靴:ジェイエムウエストン ゴルフ]
兄弟誌「MEN’S EX(メンズ・エグゼクティブ)」のエースとして活躍するほか、多数の雑誌やWEBでも執筆。クラシックな装いと靴が好み。「じつは昔はモード好きでしたが、12年前にゴルフを買って徐々にクラシック志向に。“今のボク”を作った大切な靴です」
スタイリスト
武内雅英さん
[愛靴:パラブーツ ワークブーツ]
ドレスにもカジュアルにも強く、全編集部員が頼りまくり。撮影現場ではいつもサンダル履きだが、名靴を多数所有し、とくにブーツのコレクションはかなりのもの。「このワークブーツは廃番となると知って慌てて購入。ワークブーツなのに革が柔らかで極上の履き心地です」
ビギン編集長
イチカワ
[愛靴:ブルックスブラザーズ タッセルローファー]
若い頃から給料の大半を靴に注ぎ込んできた靴バカ。このタッセルローファーはオールデンがブルックスのためにOEMしたもの。「日本ではモディファイドのVチップが人気ですが、本国ではこのアバディーンラストのタッセルも大定番。所有オールデンの中で一番思い入れがあります」
イラストレーター
綿谷 寛さん
[愛靴:山陽山長 岸三郎]
ご存じ、日本で最も忙しいファッションイラストレーター。この日お持ちいただいた愛靴は、ご自身がデザインを担当し、3年前に50足限定で発売されたもの。「じつは古いロブ・ロンドンのカタログにあった靴から着想。ギリーのホワイトバックスって珍しいでしょ?」
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。