特集・連載
日本人が履きやすい&使いやすい! ジャパン・プレーントウは侮れない!
本格革靴会議 「モノを大事に」なサステナ社会だし、物価高で「本当に永く使えるモノ」が欲しいし、「今こそ本格靴が必要!」と強く思うからこその珠玉の革靴100連発。おいそれと買える値段じゃないものも多いけど、だからこそ詳細解説したいワケです。ってことで、初心者もツウも納得する「一生靴」をここで見つけてください! この記事は特集・連載「本格革靴会議」#05です。
名門ブランドの注目作をお題に、4名の靴賢者+編集長イチカワがあーだこーだと本音で言いたい放談! じっくり読み込んでいただければ、今買うべき本格靴が見えてくる!?
上段/左から、イラストレーター 綿谷 寛さん、ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター 日髙竜介さん 下段/左から、スタイリスト 武内雅英さん、編集・ライター 小曽根 広光さん、ビギン編集長 イチカワ
一見クセのないルックスに日本的な美意識と技術を凝縮
綿谷 この4足は全てプレーントウか。みんなトウがポッコリした愛嬌あるフォルムで、なんだか和むね(笑)。
市川 オン・オフ兼用靴としては、今はボリューム感ある外羽根のプレーントウも使いやすいんじゃないかと。
小曽根さん、日高さん「日本人が履きやすい&使いやすい!」
日高 実際売れてます。昔は基本の革靴といえば内羽根のストレートチップでしたが、完全に逆転。オールデンの990みたいな靴が欲しいんですが……なんて方が頻繁に来店されます。
市川 ちなみにここで紹介したのは全てジャパンブランドです。
①カルマンソロジー
小曽根 カルマンソロジーは今かなり勢いのある靴ブランド。職人技の古典的ディテールをふんだんにちりばめつつ、モダニティあふれる靴に仕上げるのが得意ですよね。シンプルなプレーントウでもその美点は存分に感じられる。
カルマンソロジーに施された「トウの補強パーツ」
綿谷 一見ボリュームがありながらウエストをキュッと細身に絞り込んだラストもいいね。ステッチも非常に緻密。
武内 真鍮製のトウスチールを標準装備しているのも個人的にはツボ。
②ショセ
市川 ショセは得意のナチュラルコードバンでムードたっぷりに仕上げてますね。焼けると飴色になってますますいい雰囲気に! 綿谷さんの敬愛するノーマン・ロックウェル(※)の世界観で作ったモデルらしいですよ。
綿谷 あ、そうなの? そういえば木型もアーリーアメリカンな感じかも。
アーリーアメリカンテイストのぽってり
③フット・ザ・コーチャー
武内 フット・ザ・コーチャーはあの“マーチンソール”を現代の技術で再現した独自開発ソールを装着。ポストマンシューズ的な雰囲気もあるけれど、じつは木型はなかなかシャープでモードライクにも履ける。アッパーは撥水レザーですし、装いも天候も選ばない現代の最強実用靴といえるかもしれません。
④ナナミカ×リーガル
市川 究極の実用靴といえばナナミカ×リーガルも。なんとこちら、防水・透湿素材の雄、ゴアテックスを搭載!
日高 ゴア社の基準って厳しいから、作るまでに相当苦労したでしょうね。
市川 前シーズンから発売を開始して、人気すぎて定番化したみたいです。
綿谷 いやはや国産靴の進化はすごいね。どのプレーントウも文字通りクセのないプレーンなルックスなのに、日本的美意識や高度な技が炸裂。ビギン読者の基本の一足として間違いないね。
綿谷さん「リーガルはやっぱイイ靴だよ」
(※)ノーマン・ロックウェル
米国の雑誌『サタデー・イブニング・ポスト』の表紙を50年近く描き続け、「アメリカに愛された国民的イラストレーター」と称される偉人。綿谷画伯が描く“リアルタッチ”イラストにも、その息吹が宿る。豊富な服飾の知識を活かしつつロックウェル・テイストのイラストだなんて、世界でも画伯だけ!
①CALMANTHOLOGY
カルマンソロジーのA735
シンプルなプレーントウでも独特のモダニズムを感じます(小曽根さん)
ボリュームのあるトウに、ウエストは細身な1504ラストと重厚なダブルソールの組み合わせ。アッパーはペーパー掛けの後にワックスと手アイロンできめ細やかに仕上げた“吟スリキップ”だ。10万7800円(カルマンソロジー)
日高さん「ステッチも美しいとても丁寧な作り」
②chausser
ショセのC-7930
どんな色に育っていくか今から楽しみ♡(綿谷さん)
十八番素材である希少なナチュラルコードバンを使用。ボッコリしたトウがノスタルジックな雰囲気を加味。ブーツが人気だったショセだが、その汎用性の高さで最近はプレーントウ人気爆発。9万3500円(ショセ ル コアン)
綿谷さん「味わい深い色に育つね~」
③foot the coacher
フット・ザ・コーチャーのエス・エス・シューズ
程よくシャープさもありモードライクにも履ける(日高さん)
多数のメゾンから別注依頼がくる人気作。グリップ力と耐久性に優れた独自の「ルフトソール」を搭載。ベーシックでオールソールも可能と、まさに長く愛せる一足だ。4万9500円(ギャラリー・オブ・オーセンティック)
日高さん「なるほど、マーチンソールと合わせるか」
④REGAL
ナナミカ×リーガルのゴアテックス プレーントウ
雨に強いだけでなくカタチも仕立ても隙なし(イチカワ)
リーガル定番のサドルシューズの木型をベースに現代の日本人の足に合うようモディファイ。グッドイヤー製ながら防水透湿素材のゴアテックスをレイヤードして雨にも強い一足に仕立てた。5万3900円(ナナミカ 代官山)
武内さん「オーセンティックに使えるね」 イチカワ「この見た目でゴアなのか」
今さら聞けない本格靴講座[トウの種類]
いつの時代にもTPOに応じた靴選びができて損をすることは絶対ありません。ここでは本格靴の代表的トウデザインをおさらい。どんなシーンに相応しいのか今一度ご確認を!
[主な4つのトウデザイン]各々どんな印象かちゃんと言えますか?
1.ストレートチップ
この4デザインのなかでもっともフォーマルな印象。アイレットとトウの間に横一線の切り替えが施された「キャップトウ」のうち、穴飾りのないものをいう。冠婚葬祭向き。
2.プレーントウ
飾りのないシンプルなトウは、ややフォーマルなイメージ。冠婚葬祭にも対応できるとされ、スーツはもちろんカジュアル服にも合わせやすく、活躍の場が広い万能なデザインだ。
3.Uチップ
つま先と甲の革の縫い目がU字を形成するデザインは狩猟靴やゴルフシューズがルーツとされ、その印象はややスポーティ。休日お洒落着にも、平日仕事着にも合わせやすい。
4.ウイングチップ
トウに翼を彷彿させる飾り穴を備えた意匠は、狩猟靴などが起源。かなりカジュアルな趣でフォーマルな場には不向きだ。この名称は米国式で英国式では「フルブローグ」と呼ぶ。
ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター
日髙竜介さん
[愛靴:WFG×オリエンタル ジョセフ Ⅱ]
靴好きが高じて製薬業界から転身。古今東西の名靴に足を通してきたが、最近のお気に入りは写真のモンク靴。「スリッポン感覚で気軽に履け、撥水スエード&ラバーソールで雨にも強い。デザイン的にも幅広い装いに合うので、気がつくとこればかり履いています」
編集・ライター
小曽根 広光さん
[愛靴:ジェイエムウエストン ゴルフ]
兄弟誌「MEN’S EX(メンズ・エグゼクティブ)」のエースとして活躍するほか、多数の雑誌やWEBでも執筆。クラシックな装いと靴が好み。「じつは昔はモード好きでしたが、12年前にゴルフを買って徐々にクラシック志向に。“今のボク”を作った大切な靴です」
スタイリスト
武内雅英さん
[愛靴:パラブーツ ワークブーツ]
ドレスにもカジュアルにも強く、全編集部員が頼りまくり。撮影現場ではいつもサンダル履きだが、名靴を多数所有し、とくにブーツのコレクションはかなりのもの。「このワークブーツは廃番となると知って慌てて購入。ワークブーツなのに革が柔らかで極上の履き心地です」
ビギン編集長
イチカワ
[愛靴:ブルックスブラザーズ タッセルローファー]
若い頃から給料の大半を靴に注ぎ込んできた靴バカ。このタッセルローファーはオールデンがブルックスのためにOEMしたもの。「日本ではモディファイドのVチップが人気ですが、本国ではこのアバディーンラストのタッセルも大定番。所有オールデンの中で一番思い入れがあります」
イラストレーター
綿谷 寛さん
[愛靴:山陽山長 岸三郎]
ご存じ、日本で最も忙しいファッションイラストレーター。この日お持ちいただいた愛靴は、ご自身がデザインを担当し、3年前に50足限定で発売されたもの。「じつは古いロブ・ロンドンのカタログにあった靴から着想。ギリーのホワイトバックスって珍しいでしょ?」
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。