特集・連載
待ったなしでどっちも欲しい!?「マッタ」と「マッツァ」の今昔物語
本格革靴会議 「モノを大事に」なサステナ社会だし、物価高で「本当に永く使えるモノ」が欲しいし、「今こそ本格靴が必要!」と強く思うからこその珠玉の革靴100連発。おいそれと買える値段じゃないものも多いけど、だからこそ詳細解説したいワケです。ってことで、初心者もツウも納得する「一生靴」をここで見つけてください! この記事は特集・連載「本格革靴会議」#04です。
名門ブランドの注目作をお題に、4名の靴賢者+編集長イチカワがあーだこーだと本音で言いたい放談! じっくり読み込んでいただければ、今買うべき本格靴が見えてくる!?
上段/左から、イラストレーター 綿谷 寛さん、ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター 日髙竜介さん 下段/左から、スタイリスト 武内雅英さん、編集・ライター 小曽根 広光さん、ビギン編集長 イチカワ
靴好きなら待ったなしで欲しい!? 蘇った「マッタ」と「マッツァ」
超軽量で歩きやすい最高級ラバーソール
市川 ジョンロブといえば本格靴好きの終着駅ともいえる名門中の名門ですが、最近はこういうポコポコしたラバーソールの靴もよく作ってますね。
ジョンロブのウィリアム ニュースタンダード
小曽根 ここ数年「本格靴でもより歩きやすいものを」という需要に応えて、定番モデルのソールが続々と進化。この「ウィリアム ニュースタンダード」というモデルも、アイコンであるダブルモンクに新しいラウンドトウ木型と軽量ラバーソールを組み合わせ、現代的なボリューミィなフォルムに。ちょっとモードなテイストもありますね。
綿谷 かと思えば、こちらのシングルモンクはちょっと懐かしい雰囲気。
ジョンロブ×ユナイテッドアローズのマッタ Ⅱ
小曽根 90年代のジョンロブを代表する「マッタ」、その後継「マッタⅡ」(※)ですね。昔のMEN’S EX編集部でも、大先輩たちが好んで履いていました。
綿谷 流麗なシルエットがいいね。ノーズが少し長く感じる人もいるかもしれないけど、だからこそジョンロブのエッグトウの美しさが際立っている。
美麗なエッグトウ際立つ秀逸なラスト
市川 じつはこれはユナイテッドアローズ別注。同店はたびたび“今は買えないジョンロブ”を別注で蘇らせていて、靴好きの自分としては毎回指をくわえて見ているんです(笑)。この「マッタ Ⅱ」は本気で狙おうかな。
武内 スーツ上級者向けのモンク靴という感じだよなぁ。編集長になってスーツを着る機会も多くなったから、思い切って行っとく?
綿谷 もし市川くんがこの靴を買ったら、スーツは吊るしじゃダメだよ。
武内 同じく90年代に一世を風靡したといえば……この靴はどうです?
小曽根さん「えええ! あれ、マッツァじゃん!?」 日高さん、綿谷さん、武内さん「まさか……マッツァ!?」
日高 おお、懐かしい。これはあのシルバノ・マッツァじゃないですか!
シルバノ・マッツァを再現した、エヌ・ジーダブリューのパイピングブーツ
武内 2023年の春夏にデビューする予定の「N.GW」というブランドのモデルですが、今特集のために特別に早出し掲載させてもらいました。
小曽根 マッツァそのままですね。なんでこんな靴が生まれたんですか?
武内 マッツァを当時日本に紹介したチームが再結集し、95年のオリジナルラストとパターンを用い、当時の系列生産工場にて作っているんですよ。
日高 程よくモードな味もあり、当時はプラダとかの黒のスリムスーツに合わせて履いてたけれど……、今のスタイルにもバッチリ合いそうですね。
武内 太いパンツに合わせても似合うでしょうね。ジャストサイズの501とかでもカッコいいし。当時もいたけど、もちろん軍パンにも似合う。
市川 マッツァは自分がビギン編集部に入る前に流行っていた靴ですが、今の目で見るとまた新鮮。マッタとマッツァ、どっちも欲しいなぁ。
(※)「マッタ」と「マッタ Ⅱ」
90年代に登場した「マッタ」(ラストは「8695」)。その後、ラストを「7000」というややシャープなラストに乗せ換えて生まれたのが「マッタ Ⅱ」。つまり、ただでさえ品のあるマッタをさらにドレッシーにしたのがマッタ Ⅱなのだ。
本格靴の“殿堂”ジョンロブ今昔物語
モンク靴の究極はやっぱりココですね(武内さん)
今(2022):ウィリアムが歩きやすいライトソールに
John Lobb[ジョンロブ]
ウィリアム ニュースタンダード
1945年にウィンザー公のために作られた元祖ダブルモンクシューズに、0015ラストとライトウエイトウォーキングソールを与え、現代的にアップデート。見た目に比して抜群に軽量だ。21万6700円(ジョン ロブ ジャパン)
こんなジョンロブあるの?(綿谷さん)
昔(1990s):90年代に一世風靡したシングルモルクが復活!
John Lobb×UNITED ARROWS[ジョンロブ×ユナイテッドアローズ]
マッタ Ⅱ
バックルをやや後方に配置したシャープさが魅力。本作は90年代登場の「マッタ」の後継「マッタ Ⅱ」で、よりシャープな仕上がりに。スエードもあり。10月末発売予定。各27万7200円(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)
当時は洒落者がみんな好んでたね(日高さん)
本格靴の“伝説”シルバノ・マッツァ今昔物語
90Sリバイバルの今改めて気になる名デザイン(小曽根さん)
今(2022):来年、遂に本格復活! Begin創成記の主役
N.GW[エヌ・ジーダブリュー]
パイピングブーツ
最先端のイタ靴として90年代に大ブレイクしたシルバノ・マッツァ。なかでも最も売れた(累計10万足以上販売!)モデルを忠実に再現したのが今作だ。1周回ってカッコいい。2023年1月発売予定。10万2300円(ヒットマン)
昔(1990s):あの頃、マッツァはすごかった!
大胆なデザインで当時のファッションピーポーを虜に
90年代後半はシルバノブランドの靴作りが世を席巻。なかでもビギン誌面を頻繁に飾ったのが、シルバノ・ソリーニ氏率いるマッツァの靴。自分はその頃、バイト先の竹村店長がマッツァのローファーを履いているのを見て、欲しくて欲しくて(笑)。
ただ自分の足が大きくてなかなか出会えず、やっと手に入れたのがスクエアトウのコードバンスニーカー(写真左)。ボリューミィな木型や大胆なスクエアトウに痺れたなぁ。価格は9万円……当時の全貯金だったのも今では懐かしい思い出です。(イチカワ)
ワールドフットウェア ギャラリー ディレクター
日髙竜介さん
[愛靴:WFG×オリエンタル ジョセフ Ⅱ]
靴好きが高じて製薬業界から転身。古今東西の名靴に足を通してきたが、最近のお気に入りは写真のモンク靴。「スリッポン感覚で気軽に履け、撥水スエード&ラバーソールで雨にも強い。デザイン的にも幅広い装いに合うので、気がつくとこればかり履いています」
編集・ライター
小曽根 広光さん
[愛靴:ジェイエムウエストン ゴルフ]
兄弟誌「MEN’S EX(メンズ・エグゼクティブ)」のエースとして活躍するほか、多数の雑誌やWEBでも執筆。クラシックな装いと靴が好み。「じつは昔はモード好きでしたが、12年前にゴルフを買って徐々にクラシック志向に。“今のボク”を作った大切な靴です」
スタイリスト
武内雅英さん
[愛靴:パラブーツ ワークブーツ]
ドレスにもカジュアルにも強く、全編集部員が頼りまくり。撮影現場ではいつもサンダル履きだが、名靴を多数所有し、とくにブーツのコレクションはかなりのもの。「このワークブーツは廃番となると知って慌てて購入。ワークブーツなのに革が柔らかで極上の履き心地です」
ビギン編集長
イチカワ
[愛靴:ブルックスブラザーズ タッセルローファー]
若い頃から給料の大半を靴に注ぎ込んできた靴バカ。このタッセルローファーはオールデンがブルックスのためにOEMしたもの。「日本ではモディファイドのVチップが人気ですが、本国ではこのアバディーンラストのタッセルも大定番。所有オールデンの中で一番思い入れがあります」
イラストレーター
綿谷 寛さん
[愛靴:山陽山長 岸三郎]
ご存じ、日本で最も忙しいファッションイラストレーター。この日お持ちいただいた愛靴は、ご自身がデザインを担当し、3年前に50足限定で発売されたもの。「じつは古いロブ・ロンドンのカタログにあった靴から着想。ギリーのホワイトバックスって珍しいでしょ?」
※表示価格は税込み
[ビギン2022年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。