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天然皮革

桁違いのスペック

フェイクレザーも超進化してますが、天然皮革と比べれば、優秀さで遠く及ばないのが実状。そこで「耐久性」「サステナビリティ」「歴史」の3つのポイントを例にして、それぞれキーとなる数値から、その桁違いともいうべき高スペックを解いてみましょう。

10年以上長持ちする

微細な繊維がギュッと稠密に絡み合ってできている皮革は、同じく衣服や袋物、履き物などに多用されるファブリックやフェイクレザーと比べ、耐久性や強靭性で勝っている。

なので適切なケアを心がければ、余裕で10年、20年……と使い続けることができるのだ。これまさに、自然界が人類にもたらしたサステナブル素材といえるだろう。

100%自然に還る

上記で「革は長持ち」と述べているけれど、それは数十年、数百年という単位での話。数千年以上の長い年月の間には、有機物で構成されている革は自己酵素や微生物による作用、あるいは加水分解などによって腐敗し、やがて土に還っていく。

このことからわかるとおり、革は環境にやさしい100%エコロジカルな素材ということなのだ。

100万年以上歴史がある

200万年前、すでにヒト属のモ・ハビリスは皮革を利用していたと考えられており、その後のホモ・エレクトスは地球寒冷期、体温保持を目的に毛皮を着ていたことから、私たち現生人類も出現時の20万~30万年前から革を活用していたのは疑いない。

と、ヒトと革の関係には100万年を優に超える、長くてどデカいスケールの歴史がある!

太古からたどる革の革命譚
革作りは人類最古の製造技術のひとつなのです

人と革の関わりは太古にさかのぼります。狩猟で得た鹿や牛などの肉を食するうちに、廃棄物となる皮革を利用するようになりました。

1万年前には皮を革にする加工、すなわちなめしが始まります。それは焚き火を利用する燻くんえん煙なめしと、獣脂などを用いる油なめしで、これらを組み合わせる複合なめしも行われていたようです。こうした革作りを指して「人類最古の製造技術」と呼び、これが工業の始まりとみなす研究者もいます。

皮を煙でいぶす
松の葉を燃やしてじっくりいぶす

 
紀元前8000年頃、“皮”を煙でいぶして獣脂をつけ“革”を作るようになった

現代人にも馴染み深いタンニンなめしが本格的に始まったのは、5000年前のエジプトや西南アジア。樹皮や実を潰したエキスに皮を手作業で浸け込んでいたようで、その様子はエジプト壁画にも描かれているとか!

なめしているエジプト壁画
なめしているエジプト壁画です

 
紀元前3000年頃、樹皮や実を用いる植物タンニンなめしがエジプトなどで定着する

そして時は流れて18世紀後半、産業革命の流れで、硫酸を用いたより化学的かつ効率的なタンニンなめし技術が考案され、革がグッと身近に。

効率的なタンニンなめし技術
秘伝のエキスに漬け込む

 
1768年、タンニンに硫酸を溶解させるという効率的ななめし技術が考案される

一方、タンニンなめしと並んで一般的なクロムなめしの始まりは新しく、19世紀後半のこと。エメラルドの原料であるクロム化合物によるなめし効果が発見されたことがきっかけです。

タンニンが1か月程度の時間を要するのに対してクロムは1日程度と、はるかに短時間でなめすことができるため、革製品が大量生産されるように!

クロム化合物によるなめし
1~5回でのスピードなめし

 
1858年、エメラルドの原料であるクロム化合物が革をなめす効果を持つことが発見

そして現在、クロムによる環境への悪影響を最小限に抑えるように、クロムフリーなどの環境に配慮したなめし&加工法の開発が盛んに試みられており、革の“革新時代”が到来。悠久の歴史を持つ革は、さらなる進化の真っ最中!

解説してくれた革の第一人者

いいでしょ!

ライター 山田純貴さん
ライター 山田純貴さん

1992年にビギンでの編集&執筆を開始。革に関する体系的資料があまり存在していない時代から、綿密な取材によってわかりやす~い革のコンテンツを数多く作成してきた。通称「革博士」。
 

※参考資料/『原始時代の皮革』元・北海道大学農学研究科 竹之内一昭著、『皮革産業の年表(Timeline for the leather industry)』マイク・レッドウッド著


[ビギン2022年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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