マグニフ 中武康法さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #065
「王道だけど王道じゃないひねくれ者のビーン・ショルダー」
マグニフ 店主 中武康法さん
みんなが持っているものには興味のない私が、エル・エル・ビーンのトートシリーズを集め始めたのは10年ほど前。古書の買い取りを希望するお客様がきっかけでした。
その初老の紳士は、デニムの上下に解れたハンドルを色とりどりの刺繍で繕ったボート・アンド・トートを携えていました。中から取り出したのは、服好きのバイブル『Made in USAカタログ』。このトートの格好よさに開眼した瞬間でした。
シリンダー・トートはトレンドのサコッシュに代わるバッグを探すなか、とある女性誌で見つけて昨春購入。まずは柔軟剤入りの熱湯に浸し、洗濯機に突っ込んで柔らかくしました。リジッドデニムを穿いて風呂に浸かったり、洗濯機で糊を落としたりするのと同じです。
使い心地は、対角線上に備わるワンハンドルが抜群に肩掛けしやすく、両手を空けたい手ぶら派にとって理想的。シャツ一枚のような軽装によく合い、必要最小限の荷物が収まるコンパクトサイズも通勤に最適です。
休日には晩酌セットを入れてキャンプに持参。筒型なのでウイスキーや故郷宮崎の芋焼酎・霧島、炭酸水メーカーがすっぽり収まり、中で倒れることもない。直置きしたときに自立するのも助かります。
いいものを愛着を持って使い続けたいけれど、王道じゃ満足できない。そんなひねくれ者にとっては実にいい塩梅のトートなんです。
L.L.Bean[エル・エル・ビーン]
シリンダー・トート
24オンスのコットンキャンバスを使用した定番のボート・アンド・トートをベースに、筒型に仕立てたトート。イニシャル刺繍でカスタムも可能。W24×H36×D14cm。6490円(L.L.Beanカスタマーサービスセンター)
マグニフ 店主
中武康法(なかだけやすのり)
1976年生まれ。神保町の古書店勤務を経て2009年、同すずらん通りに雑誌メインの古書店「マグニフ」をオープン。メンズファッションに強く、ファッション関係者から厚い信頼を寄せられている。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。