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IITOのアーサ フットボールTシャツ

美味しい料理は食材選びから。グルメな人でなくとも、納得する条件ではないでしょうか。たとえば鮮度のいい魚の刺身は絶品ですし、余計な味付け不要で、焼いても煮ても、記憶に残る“口福”な味わいを堪能できます。

そして、それは洋服にも通じること。洗練されたデザイン、ボディラインを美しく魅せるシルエット。製作者のこだわりはさまざまなディテールに宿りますが、上質な糸で織った、または編んだ生地を使用していなければ見栄えも着心地も半減します。袖を通したとき“幸服”になれる一枚とは、素材の良し悪しでその適否が決まると言っても過言ではないでしょう。

第一紡績

さて、今回の舞台は熊本県荒尾市。県北西部に位置する人口5万人ほどの都市で、世界文化遺産に登録されている「三井三池炭鉱」の坑口や、九州最大級のアトラクション数を誇る遊園地「グリーンランド」がある場所としても知られています。

ファッション業界で有名なのは、1947年創業の「第一紡績」です。漁業用の漁網をつくる製網工場から、その歴史をスタートし、紡績工場へ移行しました。国内で唯一、同じ敷地内に紡績工場と染色加工工場を保有する「こだわりの素材メーカー」として、良質な糸や生地の生産、販売を現在まで続けています。知らないうちに、第一紡績産の素材の洋服を着ている人も多いでしょう。

第17回に登場するビギニンは、これまでタオルに使われることの多かった糸「ASA®(アーサ®)」にスポットをあて、綿100%の肉厚生地にもかかわらずその風合いはシャリっと。そんな新感覚Tシャツを企画した、素材の伝道者。この道20年以上、第一紡績の髙本崇史さんに開発秘話を伺いました。

今回のビギニン

第一紡績 髙本崇史

第一紡績 髙本崇史

1995年、第一紡績に入社。生産管理、企画開発、営業などジャンルに縛られない職種を経験。その知見を活かし、現在は「売る側」と「作る側」の架け橋的な役目を担う製販コントローラーチームのユニット長として活躍中。プライベートではアウトドアに興味あり。

idea:
素材の良さをもっと広めたい

第一紡績 髙本崇史

この道27年の髙本さんは、工業系の学校を卒業したのち第一紡績へ入社。「機械を扱う現場に配属」と予想されていたそうですが、蓋を開けてみると縫製の生産管理部配属に。会社の変革期を迎えた2011年に企画開発部へ移動し、紡績、編み立て、染色加工の知識も身につけました。

「その頃、会社では掛け算方式の開発に挑戦していました。原料×紡績機×生地の組織×加工みたいな。当社は紡績以降の工程も一貫してできるので、無限に開発ができるんです」。

開発を通じ、改めて製品の元となる素材のスゴみを知った髙本さん。生産管理、企画開発の経験を会社から買われ、2016年に発足した自社ブランド開発チームの初期メンバーに選出されます。

第一紡績 荒尾の和糸現在は販売終了しているものの、今でも問い合わせがあるんだとか。

初の自社ブランドとしてリリースしたのが、上質な肌着ブランド「荒尾の和糸®」。百貨店から販売をスタート、地元の強力なバックアップも追い風となり、都内のアンテナショップなどにも卸しが始まります。その勢いで、2018年春夏シーズンにカジュアルウェアブランド「IITO®(イイト®)」が誕生。髙本さんはブランド事業のチーム長として「IITO®」の立ち上げをリードしました。

「IITO®は素材の良さを伝えるブランドです。上質な素材のウェアをカジュアルに着てほしい。ただブランドの立ち上げについては、ずぶの素人。手探りの状態からスタートを切りましたが、さまざまな出会いもあり、今では人気セレクトショップなどでも展開していただいています」。

IITO イイト

“いい糸”を使っているから、「IITO®」。たとえば、ブランド誕生以来続くTシャツシリーズには「PURE BREEZE®(ピュアブリーズ®)」という糸が使われています。PURE BREEZE®は、綿本来のやわらかさや光沢を引き出す甘撚りで作られています。甘撚りはタフネスに欠けるのが弱点ですが、第一紡績の独自ノウハウを駆使することによって普段使いに耐えられる強度を備えており、まさに大人の日常着としてうってつけ。ビギンマーケットでも取扱い中ですが、「とにかく肌触りがいい!」と評判です。紛れもなく、「PURE BREEZE®」はIITO®を代表する人気シリーズと言えましょう。

IITO®のコンセプトは「素材の良さを紹介する」こと。「PURE BREEZE®」に続き、2018年秋冬シーズンに今度はもちもち柔らかな「MIDAIR®(ミッドエアー®)」シリーズを発表。さらに2020年、髙本さんは第3弾となる新シリーズをスタートします。

trigger:
スタッフの間で密かに人気だった“備蓄TEE”を思い出す

IITOのDESERTCOT ASAシリーズ

第3弾としてリリースされたのが、吸水性のいいヘビーウェイトな生地が特徴の「DESERTCOT ASA®(デザートコット アーサ®、以下DCA)」を使ったシリーズ(上写真)です。

「素材のブランドとして、また他ブランドと差別化を図るため、看板シリーズとなっていたPURE BREEZE®とは正反対の製品も作ろうと考えたんです。柔らかなソフトタッチではなく、サラッとした肌離れのいいドライタッチ。そこで頭に浮かんだのが、私が入社した頃に社員のなかで評判だったTシャツだったんです」。

そのTシャツとは、吸水・速乾素材「ASA®(アーサ®)」のB品で作ったスタッフユニフォーム。汗水流し働いているときは、肌を柔らかく包む生地より肌離れがよくシャリ感のある生地がいい。B品といえど、機能性や素材感が大きく変わりはしないので、そのニーズに「ASA®」100%Tシャツがピッタリハマったというわけです。

「ASA®」が生まれたのは、じつは今から40年以上前。第一紡績の独自の素材選びと紡績方法(後編で詳しく解説します)で紡がれた綿糸です。しかし、気温や湿度に影響を強く受ける紡績機を使うため、生産に適した時期にまとめて糸を準備しておく必要があります。だから、安定した供給を補償できず、デリケートな分、当時はB品も出やすかった。「ASA®」100%Tシャツは、スタッフの間で“備蓄TEE”という愛称で親しまれていました。

第一紡績 髙本崇史

「『ASA®』はタオルや靴下に使用されるのがほとんどでした。Tシャツにしても光沢のある上品な見えづらにならないため、百貨店などの高級志向な市場では鳴かず飛ばずの状態で(笑)。ファッション感度の高い人にしか、その魅力を理解してもらえなかったんです。ちなみに『ASA®』という糸名は、“麻のような肌触りだから”という理由で名付けられたわけではありません。フィルムカメラの感度のASA規格に由来します」。

「ASA®」に新シリーズのヒントを見出した髙本さん。しかし、過去の経験から「大丈夫かなぁ」と弱腰に。結果として「ASA®」の構造を真似たコットン×ポリエステルの糸「DCA」を新シリーズの素材として選びました。しかし、時代が変われば人の好みも変わります。

「私の心配をよそに、独特のサラッとした生地感が好評でして。『受け入れられるんだ』って思いました。『DCA』シリーズの商品を携えて営業にいく社員も増えたんです」。

ASA アーサ

となると、次に挑戦したくなるのは「ASA®」100%のTシャツ。じつはこの「ASA®」、第一紡績が世界で初めて開発に成功した特別な糸なんです。「開発に相当な苦労があったと聞いています」と、髙本さんも誇らしげ。なぜ「ASA®」は綿100%なのに、吸水・速乾性に富んだ機能素材なのか。後半では、気になる「ASA®」の構造に迫ります。

後編:無理矢理に綿100% に続く

IITOのアーサ フットボールTシャツ

IITO® / ASA® BaseballTシャツ
「ASA®(アーサ®)」を採用した新シリーズの1着。シルエットはゆったりとしたベースボールTシャツがベース。裾をラウンドさせるなど、スッキリ着こなすための工夫もひかる。中肉厚のサラリとした肌離れのいい生地はアウトドアシーンにも最適だ。9900円(税込)
ビギンマーケットでも取り扱い中

IITOのピュアブリーズクルーネック半袖ポケット無

IITO® / PURE BREEZE® THE classic T
超長綿をこだわりの技術で甘撚りした、ブランドのアイコン的素材「PURE BREEZE®(ピュアブリーズ®)」を使用。綿100%でありながら、シルクのような滑らかで上品な肌触りを堪能できる。無駄なディテールを一切排除したデザインに、素材で勝負する意気込みが感じられる1枚。7590円(税込)
ビギンマーケットでも取り扱い中

(問)IITO
https://www.ichibo.jp/

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写真/松山タカヨシ 文/妹尾龍都

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