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Southwick サウスウィック ケンブリッジ

世は楽チン方向に舵を切って機能ばかりを追い求める、言わば変化球全盛時代。ですが160キロのどストレートを知らずして、定番モノ好きと名乗るワケにはいきません。シップスによる紺ブレ界の北極星・サウスウィックの再生ストーリーに、魂を震わせるべしっ!
 

昔も今もこれからも変わらない紺ブレを作るのが至上命題

篠原 渉さん
サウスウィック ディレクター
篠原 渉さん

 

コロナ禍におけるアメリカでの物作りは至難の業でした

矢澤 崇さん
サウスウィック プロダクション マネージャー
矢澤 崇さん

サウスウィックの名を継ぐという、各国の洒落者が注視するこの一大プロジェクトを完遂するため、シップスは最強コンビを結成。モノ作りの現場を渡り歩くことで深遠な知識を有し、かつ骨の髄までアメトラを愛する上のお二方が全力投球することで、人類遺産を再生!

「米国製を堅守して歴史と文化を丸ごと受け継ぐのが使命」
―チーム SHIPS

サウスウィックの矢澤 崇さんと篠原 渉さん
左/矢澤さん 右/篠原さん

あのサウスウィックが閉鎖される……。2020年に突如駆け巡ったこの一報に、世界中の服好きが衝撃を受けました。同社は1929年に米国マサチューセッツ州ローレンスで設立され、2020年まではかのブルックス ブラザーズの傘下として、その最高峰ラインのスーツを製作。

メイド・イン・USAを貫き続ける極めて希少なテーラリングファクトリーとして、名だたるブランドのOEMも請け負ってきた、言わばアメトラの殿堂です。競売にかけられていたこの名門の商標権を取得したのは、なんと我らがシップス! 上層部からその吉報を伝え聞いた矢澤さんは、驚きのあまり言葉を失ったといいます。

Southwick サウスウィック
(Southwick/サウスウィック)

「サウスウィックを再生させるという重大な責務を果たすために、会社から下されたミッションは、アメリカ製を貫くこと。ただ名前を使うのではなく、サウスウィックが築き上げてきた歴史と文化を丸ごと継承していくためには、アメリカで物作りしなければならないんだと。熱のこもった指令に、やってやるぞ!と奮起しました」

この一大プロジェクトを成就させるために最強の布陣を敷くべく、当時他のセクションを担っていたシップスきってのアメトラ賢人・篠原さんと黄金タッグを結成。

Southwick サウスウィック

2人で数多の資料を掻き集めて研究し、ディスカッションを重ね、展開する商品の大枠を決定し、晴れて実際に製品作りを担ってくれる=アメトラの息吹を吹き込んでくれる米国工場を探し出すことに。

「シップスのNYオフィスの力を存分に借りながら、あらゆるツテを辿り、ジャケット、シャツ、パンツ 、タイと、それぞれの製品作りに特化した工場をイチから開拓していきました」。

なかでもアメトラの象徴とも言うべき紺ブレの製作には、最も心血を注いで臨んだと、篠原さんは熱を込めます。

Southwick サウスウィック ケンブリッジ

「実はコロナ禍の影響も考慮して、新たに開拓したアメリカの工場に加えて、念のため日本国内のドレス工場にも、同じサウスウィックのヴィンテージブレザーと仕様書を送り、サンプルを製作してもらったんです。すると不思議と全然違う製品が出来上がった」。

「国内工場のブレザーは極めて美しくて非の打ち所がない。けれどやっぱりアメリカ工場で作ってもらったサンプルのほうが、グッと胸にくるものがあったんです。うまく言葉にできないんですが、“あぁ、こういう紺ブレこそアメトラだよな”と感動させられた」。

「段返りの3つボタンやナチュラルショルダー、パッチポケット、フックベントといったアメトラ意匠は、双方とも漏れなく詰め込んでいるのに、仕上がりは別物。その差を生むのは、使う機械の違いはもちろんですが、アメリカの風土も作用しているように思えてなりません」

アメリカン・ウーレン・カンパニーのウール生地を使い、ウォーターバリー社の金ボタンを添えて、徹頭徹尾メイド・イン・USAを貫いた、新生サウスウィックの顔役。世界一正統な紺ブレの再生に、多くの服好きが感涙するはずです。

ザ・アメトラ遺産 奇跡の復活劇

Southwick サウスウィック ケンブリッジ

Southwick[サウスウィック]
ケンブリッジ

アメトラを象徴するディテールを全部入りさせながら(下記参照)、アメリカのテーラリングファクトリーで仕立てた、新生サウスウィックのマスターピース。何より嬉しいのは、生地やボタンまで米国メーカー製を貫いた、ピュアメイド・イン・USAってこと! 汎用性を追求して中肉のウール生地を採用しているため、3シーズン活躍。超一生モノ・アメトラ遺産。9万9000円。サウスウィックのシャツ2万5300円、同タイ1万3200円(シップス 渋谷店)

“だからサウスウィック”総点検!!

 

①金ボタン

Southwick サウスウィック ケンブリッジ

《名門ウォーターバリーが手掛ける金ボタンの輝きは悶絶もん♡》
アイコニックな金ボタンは、かのブルックスも重用する、米国のウォーターバリー社製。「象徴たるサウスウィッククレストを入れ、値の張る“プレミアムゴールド”カラーで製作してもらいました。輝きが強く、威厳も十二分!」
 

②ナチュラルショルダー

Southwick サウスウィック ケンブリッジ

《アメトラ紺ブレ然とした脱力感を生むナチュラルショルダーも完コピ》
パッドに頼って構築的に見せない、いわゆるナチュラルショルダーもまた、アメトラ紺ブレの真髄のひとつ。「パッと見背筋がピンと伸びるクラス感はあるのに、羽織ったときに肩肘張って見えない、キモとなるディテールです」
 

③ラペル縁のステッチ

Southwick サウスウィック ケンブリッジ

《幅や運針まで突き詰めたラペル縁の芸術的ステッチワーク》
「段返りのロールの美しさにも目を奪われますが、ラペル縁の精緻なステッチにもまた、アメリカの仕立て屋のプライドを感じます」。端から何mmの位置にどれだけの細かさで針を入れるか、微に入り細を穿つようにこだわったそう。
 

④フックベント

Southwick サウスウィック ケンブリッジ

《実は色気を出すのが難しいフックベントにもバッチリ入魂!》
そもそもフックベントを取り入れるには相応の技術を要するそう。「ただ綺麗に作るのではNG。国内工場のフックベントは、美しいけれどなぜか心が躍らない。米国工場が手描けるベントには不思議な色気が秘められているんです」
 
※表示価格は税込み


[ビギン2022年5月号の記事を再構成]スタイリング/武内雅英(CODE) ヘアメイク/北村達彦 イラスト/TOMOYA その他のスタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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