モヒート 山下裕文さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #053
「在宅時代がもたらした開封の愉しみ」
モヒート デザイナー 山下裕文さん
人に直接会いに行く機会が減って、そのぶんオフィスにいる時間が増えました。それと同時に、封筒の開封や段ボールの開梱作業も心なしか増えた気がしているんです。それらを「さて、まとめて開封するか」というとき、デスクに転がっているビクトリノックスに手がのびるんですよね。
もともと、文房具のような小さくて目的の限られた道具が好きで集める癖があるんです。ここで紹介しているビクトリノックスも同じ道理で、何かを切るためだけの機能しか持たず、2枚のブレードが効率的かつコンパクトに格納された設計とフォルムが大好きで、20代の頃から少しずつ蒐集。
とはいっても現行品ではなく、スイス軍で実際に使われていた当時のヴィンテージなど古いものが中心なんですけどね。古いものは外装も金属製で、握ると少し手に感じる重みもイイ。
新旧合わせてかれこれ50本以上所有していて、それぞれの時代でちょっとずつ変化していくディテールも面白いんですよ。話すと長くなるので、今回は割愛させていただきますが(笑)。
最近、洋服のデザインを描くときにステッドラーの極太鉛筆を使うのですが、それを削るのにも便利。軍用の系譜を継いだ一流ツールを日常使いする、事務所での時間が個人的な至福になっています。
VICTORINOX[ビクトリノックス]
マルチツール
大小2つのブレードを備えた折り畳み式マルチツール。山下さんは都内の専門店や出張先の海外でヴィンテージを蒐集。相場はおよそ1000円~1万円。現行品は「エクセルシオール」2200円(ビクトリノックス ジャパン)
モヒート デザイナー
山下裕文(やましたひろふみ)
1968年生まれ。今はなき伝説的ショップのプレスバイヤーを務めた服飾業界の重鎮。その後ブランドやショップのコンサルタントを手掛け、2010年モヒートを始動。文房具への強いこだわりを持つ。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。