リプレイス 岡本龍一郎さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #050
「アフリカの民族楽器はいにしえの温もり纏うアートだ」
リプレイス コンセプター 岡本龍一郎さん
家具の世界では、かつてイームズ夫妻がそうしたように、世界中から民藝品やスーベニアを集めて創作のヒントにするデザイナーが多い。彼らへのリスペクトとして、同じく民藝品を買い付けようと5年前にボストンへ行ったとき、ちょうどアフリカのブースが出展されていたんです。
華美に装飾されていない素朴さが魅力のアフリカ民藝品。なかでも人気のスツールや布などを漁っていると、見たこともない古びた楽器を発見。
調べてみれば、ジンバブエに居住するショナ族が儀式や祭礼に用いたカリンバという民族楽器で、3000年も前から存在するというから面白い。オルゴールの原型とも言われていて、親指で金属の鍵盤を弾くと優しい音色を奏でます。
おもちゃみたいな気軽さで直感的に弾けて楽しいし、ピュアな音色が日頃のストレスを癒やしてくれます。疲れたときや仕事で煮詰まったときは、カリンバを弾いてリフレッシュするに限りますね。
また楽器ながら、アートとしても楽しめるのがいい。アフリカらしい古き温もりやプリミティブな面持ちは、欧米インテリアのハズシにもなります。カリンバ自体あまり知られていないし、ましてや部屋に飾る人は滅多にいないだろうけど(笑)。私の家では傑作家具に並ぶ秀逸なインテリアです。
Hugh Tracey[ヒュートレイシー]
カリンバ
約3000年前にルーツを持つアフリカの民族楽器は、西洋の音階に調律し世界に広めたヒュートレイシー社製。10ドルで購入。ヴィンテージを探すのは困難だが現行なら2万円前後、他社製なら数千円から購入可。(本人私物)
リプレイス コンセプター
岡本龍一郎(おかもとりゅういちろう)
1973年生まれ。独学で設計を学び、ベイクルーズの店舗設計を10年以上担当。’18年より、リユースインテリアショップ「リプレイス」のコンセプターに。カリンバは調律せず、不揃いな音を気ままに弾くのが岡本流。
[ビギン2022年4月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。