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アウトドア界のリーディングカンパニーであると同時に、環境危機や社会問題に対して責任をもってビジネスをする「レスポンシブル・カンパニー」の先駆者であるパタゴニア。今では日常生活においても必要不可欠な存在ですが、その起源は50年前の1972年に提唱した”クリーンクライミング”まで遡ります。そこには、今では必須となった”サステナブルな生き方”の答えが詰まっていたのです。

【HISTORY】
パタゴニアは最初っから
環境保護を考える企業じゃなかった!?

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード。自身もクライマーで、首には”クリーンクライミング”で提唱した回収可能なギア、ナッツ等が掛けられている。

創業者のイヴォン・シュイナードは1965年にクライミングギアメーカー「シュイナード・イクイップメント」を始めました。クライミングの際に、岩に打ち込む鋼鉄製ピトンが主力商品で、1970年頃には米国最大のクライミングギアメーカーへと成長。ただピトンは、打ち込むと抜き出して回収することが困難だったのです。シュイナードはある日、自分が作ったピトンがいかに大好きな岩場を傷つけているかを目の当たりにし、業績を顧みず自社のベストセラーであるピトン事業の代わりに、岩壁を傷つけないチョックやナッツというギアへの切り替えを推奨。今から50年前の1972年に、“岩を傷つけずに登ること”、そして”自然のままの岩を登る体験を次世代から奪わないこと”を目的とする、“クリーンクライミング”という新しいスタイルを提唱するに至ったのです。

1972年のカタログの冒頭には、シュイナードとビジネスパートナーのトム・フロストが「山には限界がある」と、ピトンの使用中止を呼びかけるエッセイを寄せた。

右上の写真は、1972年の「シュイナード・イクイップメント」のカタログで、チョックの使い方が丁寧に解説されています。そのなかで、シュイナードのクライミング仲間であるダグ・ロビンソンは“クリーンクライミング”に関するエッセイを寄稿。「岩を思い、他のクライマーを思い――クリーンに登ろう」という言葉を綴りました。共感したクライマーたちは、続々とピトンではなくチョックを使うようになり、今日では当たり前のクライミングマナーに。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」というシュイナードの理念のもと、1973年に設立されたパタゴニア。いわば“クリーンクライミング”とは、パタゴニアの歴史を紡ぐ”はじまりの1ページ”だったのです。

【HUMAN】
若きクライマーたちの
”笑顔とその先”

左から三宅宏明/スタッフの間では「ロック」の愛称で親しまれ、自他共に認めるクライミング好きの29歳。ベディー・ジャスジョット/19歳の大学生。学校帰りやパタゴニアでの勤務後、ほぼ毎日クライミングジムに通っている。江畑 暖/クライミングと登山をこよなく愛する、スタッフきっての山好き。パタゴニアのアンバサダーでもある天才クライマー、アレックス・メゴスを敬愛する30歳。

パタゴニア 東京・渋谷のスタッフには、クライミングを愛してやまない若きクライマー達がいます。聞けば、クライミングは想像以上に誰でも気軽に始められるんだとか! 彼らのクライミングを純粋に楽しむ姿から、“クリーンクライミング”を紐解くきっかけを探ってみましょう。

街のジムから始める人も多い

勤務するパタゴニア 東京・渋谷にて、クライミングの楽しさを語り合う3人。

―そもそもクライミングを始めたきっかけはなんですか?

三宅:専門学校時代に部活動がなく、運動をしたくてジムでボルダリングを始めたのがきっかけですね。
ジャス:僕は小学生の頃から木登りなど、何かと登る遊びが好きで。すると母が「こういうおもしろいスポーツがある」と教えてくれたのが、クライミングでした。
江畑:何年生の頃から始めたの?
ジャス:2年生だったかな。
三宅:早いね!
ジャス:江畑さんは?
江畑:僕はもともと山が好きで、中学、高校と部活で登山をやっていて、大学時代にアウトドアショップでアルバイトをしていたんです。そこの店内にボルダリングの壁があって、営業が終わってから、試しにやってみたのがきっかけだね。

今では街のボルダリングジムをきっかけに、クライミングにトライしていく人も多い模様。ジムではマナーや作法、岩場の情報なども教えてもらえるから、仕事終わりや休日のアクティビティにしてみては?

自分の壁を打ち破る
その達成感は格別

―ずばり、クライミングとはどんな存在なんですか?

三宅:クライミングジムで働いていたときは、ほぼ毎日登っていたこともあり、ご飯を食べるかのように、日々の習慣でしたね。なくてはならない存在といいますか。
江畑:わかる! 登っていない日々が続くと、なんだかソワソワしてくるんだよね。
三宅:そうそう。あと、やっぱりクリアしたときの達成感が、言い表せないくらい好きで。
ジャス:達成感でハマっていく人は多いよね。僕はクライミングジムに行くと誰かしら仲間がいて、コミュニケーションをとれるのも楽しみ。岩場でも仲間と一緒に登るのが好きですね。クライミング自体が、友達みたいな感覚もあります。
江畑:僕にとってはゲームのレベル上げ、みたいな要素もあるんです。昨日出来なかったことが、今日はできた!って。それがクセになるんですよね。あと岩を登っているときに、「登れるか、登れないかわからない。ここは高いし、ちょっと怖いな……」、というところを押し切れると、すごくアドレナリンが出る! するとまた、次のチャレンジがしたくなるんですよね。

クライミングはエクストリームスポーツのような印象を持っている人もいるけど、じつは人それぞれのレベルに応じてできる、自分との闘い。予想以上にアプローチしやすく、気付けば虜になってしまうスポーツなのかもしれません。

“クリーンクライミング”の精神は
50年後の今、若きクライマーに
継承されていた

―最後に“クリーンクライミング”について、どう考えていますか?

三宅:”クリーンクライミング”に共感していることも、パタゴニアで働く理由の一つです。僕らは山岳地域を登攀するアルパンクライマーではなく、道具を使わず手足で岩場を登るボルダリングがメインなので、ギアを伴う“クリーンクライミング”は実践していません。ただ僕らの間でも、マナー違反によって大好きな岩場がなくなってしまうことがある。それはもちろん嫌ですから。
江畑:そうだよね。僕らのようなフリークライマーにとっても、自然に負担をかけないことは必要だし、スタッフになる前からシンプルに、大好きな遊び場である自然を守りたいと思っていました。例えば人為的に岩を削る行為“チッピング”によって、ありのままの岩場を登るクライミング本来の楽しさが失われてしまいますからね。
三宅:実際にクライマーのマナー違反によって、入れなくなった岩場もあるからね。
ジャス:手に付けるチョークによって岩場の景観が悪くなることもあります。登り終わったらブラッシングといったマナーも大事ですよね。ただ僕は、意識が重要だと思っています。“クリーンクライミング”の精神を持っていれば、岩場だけに限らず、さまざまな環境保護につながる行動を積極的に取れるようになると感じています。

一見、雄大に見える自然でも、身勝手な行動によって、本来あるべき姿が簡単に傷ついてしまうもの。岩場を傷つけずに登ろうとする“クリーンクライミング”の意識自体が、さまざまな環境保護につながっていく。クライマーでなくとも、自然環境と接していくうえで、よきヒントになるのではないでしょうか?

【PRODUCTS】
過去と未来を繋ぐ
限定コレクション

“クリーンクライミング” 50周年を祝うカプセルコレクションの一部を抜粋。いずれも環境に配慮した素材を使った、未来へとつながるプロダクトです。

クリーン・クライム・カタログ・リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットン・Tシャツ/「シュイナード・イクイップメント」のカタログの表紙を、バックのグラフィックに採用。ボディは、土壌を修復し、動物福祉を尊重し、農家の生活を向上させることを目指す、最高基準のオーガニックコットン製。5280円。

コットン・イン・コンバージョン・ミッドウェイト・ラグビーシャツ/シュイナードが1970年にスコットランドを訪れた際、「クライミングに最適かも」とラガーシャツを購入したことに由来するプロダクト。ヘキセントリックロゴもポイントだ。1万3750円。

アルプライト・ダウン・プルオーバー/リサイクルされた漁網を用い、海洋プラスチック汚染の削減に貢献する、ネットプラス・ポストコンシューマーリサイクル・ナイロン100%を使用。3万4650円。

【作品概要】
2020年春、コロナ禍で海外への挑戦が閉ざされた横山勝丘(ジャンボ)は新たなクライミングエリアの開拓を求めて、初めて屋久島を訪れた。想像以上の岩場の豊かさにワールドクラスのエリアになる可能性を確信したが、ローカルクライマーとの間に小さなしこりを残してしまった。 翌年、改めてローカルクライマーとともにエリア開拓することを決意し、倉上慶大とともに再び屋久島へと向かった。人、スタイル、時間が繋がり、クライミングコミュニティはより深みを増す。開拓というプロセスをローカルクライマーと共有し、ともにエリアを作り上げることで、2人はクライミングの奥深さを再発見した。

ご希望の方はコチラからお申し込みください。
尚、3月31日(木)21:00からYouTube公式アカウントにてプレミア公開を行います。

問い合わせ先/パタゴニア日本支社 カスタマーサービス☎0800-8887-447
写真/松島星太 文/桐田政隆 スタイリング/佐々木 誠 編集/増井友則(e-begin)

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