コンバース

蕎麦スス流 SOBA Su Su Ryu

Vol.80

水道橋とんがらし

天盛りそば+ネギトロ丼
680円+500円

とんがらしの天盛りそば ネギトロ丼

立ち食いそば屋には数々の有名店があって、その土地で長く営業し馴染みの顧客に愛される知る人ぞ知るお店、あるいはTVやネットのグルメ情報で取り上げられて一般的な知名度を持つお店など、指折り数えれば首都圏に数十の有名店がある。

とんがらし

今回ご紹介する「とんがらし」は神田三崎町で長く営み、路麺マニアならずとも近隣では超有名な存在。名物は山のように盛られた天ぷら。まさに「名店」と呼ぶにふさわしく、その証拠に昼時ともなると長い行列ができる。時間を惜しみ「早い」を第一に尊ぶ路麺客の行動としては異例のことだ。

数年前のこと、ご高齢の店主ご夫婦が引退されることとなった。後継者のないことから閉店かと危ぶまれていたのだが、幸運なことに継承を熱望するかた(法人)が現れ、日数をかけた入念な引き継ぎを経て、現在も同じ場所、同じ味、同じ店名で営業が継続されている。

当初は旧来の完全立ち食いスタイルのままであったが、2021年には改装され、椅子席のみとなった。またこの頃を境に自販機をとりやめ、接客担当が先頭から順番に注文を口頭で受けたのちに代金を前請けするシステムとなるなど試行錯誤のあとが伺える。

とんがらし

メニューは先代からの名物「天盛りそば」を中心とするところには変わりない。その他の品には多少変化あり。選べる三種の野菜天ぷら、マグロネギトロ丼、日替わりタネのそば、などが加わった。人気の「ひもかわうどん」は健在で、そばの替わりに選ぶことができる。

筆者は行列を避けて開店10分前から並んでみた。既にひとり先客あり。首尾よく定時に入店・着席できた。ここは迷わずおすすめの「天盛りそば ネギトロ丼セット」をいただいてみよう。

とんがらしの天盛りそば ネギトロ丼

■そば:ゆでめん、白っぽくて細長い。やわっとした食感。ずるずるすすりたくなる。
■つゆ:昆布主体に鰹節の効いたマイルドなだし、やや塩気のあるカエシ。ひもかわうどんにもよく合う。ネギと生姜を添えるか提供前にたずねられる。生姜はやや個性が強いので、お好みで選ぶとよい。
■天ぷら:海老、イカ、茄子。やや小ぶりな海老は豪勢に5〜6尾。コロモはかっちり揚がっている。甘味と弾力あり。イカは大ぶりで噛み切りやすく風味良し。茄子には野菜の滋味あり。

とんがらしの天盛りそば

丼を上からみわたせば、山のような天ぷらの迫力にまずは圧倒される。海老・イカ・茄子は、そばの上に横たわるのではなく、むしろ縦に立った状態。屹立する海老天をまずはひとつまみし口に運べば、海老のもつ旨味がじんわりと広がる。次いで茄子は皮の紫色も麗しく、中は甘くみずみずしいシャッキリ加減。イカは噛むほどに滲み出る旨味あり。とても上等な天ぷらだ。

天ぷらを楽しんだところでそばにとりかかる。細めのゆでめんはやわやわで、天ぷらの立派さに比べると妙にアンバランスではあるのだが、それがこの店らしさ。あくまでも立ち食いそば屋なんだぞという主張が感じられて頼もしい。

とんがらしの天盛りそば

食べ進んだところで気がついたのは、旧店ならばこのあたりまでさしかかると、いつのまにか天ぷらのコロモがはがれ、海老やイカは裸の状態となり丼には大量のコロモが散乱するところであるが、今回はそれがない。昔のもあれはあれで悪くはなかったが、このほうがより良いと思う。調理に工夫のあとがみられて好ましい。

とんがらしのネギトロ丼

注目のネギトロ丼はネットリした脂とマグロならではの濃厚な風味で、さっくりした食感は鮮度の高さが窺い知れる。小ぶりな丼にこんもり盛られた分量はそばのサイドにちょうど良い加減だ。面白いのは「タクアン」を混ぜたものを選べること。歯触りと風味に変化があってこちらもうまそうだ。次回は食べてみよう。

とんがらしのネギトロ丼

いろいろな点でかつての老夫婦の時代と異なる展開となったとんがらし。ほとんど別物といってもよいし、昔を懐かしむ声もあるのだが、筆者としては新生とんがらしの味とオペレーションにむしろ好印象を感じたひとりである。なによりもうまい立ち食いそば屋がひとつ残ったのは奇跡ともいえるわけで、こういう継承は大歓迎だ。

筆者が食べている間にも続々と来客があり、やがてすぐに行列となったのを見て、名店の代替わりはひとまず順調かと安堵したのである。

とんがらしの案内看板

■DATA
住所:東京都千代田区神田三崎町3-2-10 風水神田三崎ビル 1F
アクセス:JR水道橋駅 西口より徒歩4分
営業時間:11:00-21:00
定休日:土日祝
評価:3点 ☆☆☆
 
※2022年3月25日を以て、日本国内での営業を終了予定。

※本記事は、2022年2月1日取材当時の情報です。
(取材時は「まん延防止等重点措置」により15時閉店となっておりました)

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写真・文/ケビン(平林啓一)
オートバイに乗って900軒の立ち食いそば店を探訪。最盛期には年間300軒を食べ歩く。立ち食いそばチェーン店・個人経営店にかかわらず食す。また、生めん・茹でめん・冷凍めんにこだわらず、どれも大好き。

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