アンドワンダー 池内啓太さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #036
「メカニカルな自転車にデザインの情緒を感じた」
アンドワンダー デザイナー 池内啓太さん
自転車が好きで、常に2〜3台は所有しています。昨年、かつて存在したアメリカの自転車メーカー、クラインのマウンテンバイクを手に入れました。
自転車界ではロードバイクが人気で、昔の名車もすごく高価。その点、MTBはそこまで人気じゃないからヴィンテージでも意外と手が届きやすいんです。この「マントラ」も’90年代当時の価格から3割程度安い、約10万円で購入できました。
昔のMTBって、いろんなメーカーの試行錯誤が表れていておもしろいんです。なかでもクラインの「マントラ」は超異質。そもそも自転車の機能を追求すれば大体は形状が似てくると思うけど、クラインはテクニカルな面だけでなくデザインの情緒的な部分も大事にしていて。
たとえばこの極太のフレームとかね。少し扱いづらいけど丈夫で、他にはない遊びが利いている。マジョーラカラーという見る角度によって色が変化する塗装もいい。ここまで微妙な色のニュアンスを表現している米国の工業製品も珍しいんじゃないかな。
とまぁ、独特の奇抜さにマニアの間では浮世離れしたデザインとも言われていますが……。キレイめなファッションにハイテクスニーカーを合わせる違和感がいいように、街乗りにあえて浮世離れした自転車を楽しみたいですね。
KLEIN[クライン]
マントラ
2000年代に消滅した米国の自転車ブランド。フレームをキャンバスに見立てた美しい塗装が人気で、自転車好きから一目置かれる。’90sのマントラは弾数が少なく、見つけるのはやや困難。相場は10万円前後。(本人私物)
アンドワンダー デザイナー
池内啓太(いけうちけいた)
1978年生まれ。某アパレルブランドのデザインチームで活躍後、2011年にアウトドアブランド「アンドワンダー」を創設。旅好きが高じて10年ほど前から自転車にハマる。今走りたい場所は、広島の尾道。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年2月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。