特集・連載
米富繊維 大江 健さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #029
100人をめぐる、これからのシン・スタンダード モノを持たない風潮の今、本当に価値のあるモノってなんだろう? 身の丈に合わないモノはいらないし、ファストな使い捨てモノなんてもっといらない! とはいえ一切無駄を省いた生活もなんだか味気ないような……。大切なのは、何を所有するかよりも、どう向き合うかという視点。モノ選びの賢人たちは今、何を選び、どんなライフスタイルを志向するのか? 100人への取材を通じて、これからのスタンダードを探ります。 この記事は特集・連載「100人をめぐる、これからのシン・スタンダード」#29です。
「スローなキャンプには1万円の軍幕テントがいい」
米富繊維 代表 大江 健さん
焚き火をしながら本を読む。最近はソロキャンプにハマっていて、自然のなかでゆったりと過ごすのが最高の癒やしです。服装はフィッシャーマンニットにバブアーと、普段着と変わらないクラシックスタイル。単にカッコイイし、スローなキャンプには天然素材の服が合うなぁって。
そうすると、テントだけハイテクというわけにはいきません。同じくクラシックなテントといえばキャンバス製ですが、重いしあまり実用的じゃない。そんなとき見つけたのが、フランス陸軍の’90年代のデッドストックです。
ナイロン製の無骨な軍幕テントは、2本のポールを両サイドに立てるだけ。一般的なドーム型よりシンプルな作りで、5分もあれば組み立てられます。
キャンプ中は自分の時間をいかに長く確保するかが重要。そのため広くて快適なテントでなくても、雨風がしのげてパッと準備できさえすればいい。そういう意味でもミニマルな軍幕テントは相性がよかった。1万円前後とフレンドリーな価格も魅力でしたね。
そもそも気の利いたハイテクギアなんてなかった頃、昔の人たちは必要最低限の道具で野営していたはず。そんな前時代のスタイルに共感するところもあるのでしょう。どんなハイテクテントも、この軍幕テントにはかないません。
フランス軍の’90年代 F-1テント
’90年代フランス陸軍のデッドストック。軽量なナイロン素材に、設営が容易な2ポール設計。グランドシート一体型で虫等の侵入もしにくい。ネットでの販売価格は1万円前後。(編集部調べ)「F-1テント」(本人私物)
米富繊維 代表
大江 健(おおえけん)
1977年生まれ。山形のニットメーカー、米富繊維の代表取締役社長。2010年に立ち上げたファクトリーブランド「コーヘン」は、斬新なニットテキスタイルが好評。お気に入りのキャンプ場は、山形の蔵王坊平。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。