特集・連載
国が違えば個性も違う! 国別ミリトラ四天王
TRADトラウザーズ虎の巻 イージー仕様やBIGシルエットの台頭で、“ユルい着こなしこそGOOD”とされる昨今。でもそろそろ秋に向けて、締めるとこは締めません?ってのが本企画のメッセージです。パンツ、もとい“TRADトラウザーズ”に穿き替えるだけで、カジュアルアップが完結。お洒落巧者への近道として、暗記すべきキーワードは……TRY!トラ!トラ!トラ! この記事は特集・連載「TRADトラウザーズ虎の巻」#02です。
[MILITARY TROUSERS]
国の数だけ軍があり、軍の数だけ名作軍パンがある……。そう。さながら軍パンは国の個性の写し鏡。となれば、どの国の軍パンをベースに選び、どういうアプローチでTRADトラウザーズ化を果たすか……それこそがミリタリーに精通するブランドの腕の見せどころ。ここではその術に長けたミリトラ四天王の渾身作を買い説します。
[其ノ一]キレイに穿けるテーパードシルエット
[其ノ二]クリースまたはタック入りで“キチンと見え”すること
→英国圏で使われる言葉で、要は“カチッとした長ズボン”のこと
1.フランス陸軍のM-47にウエポンをオン
インディビジュアライズド シャツのシャツ2万8600円、トリーレザーのベルト9900円(メイデン・カンパニー) クラークスの靴2万5300円(クラークス ジャパン)
幅の狭いウエストバンドでタックインもスマート
Cantate[カンタータ]
M‐48 フィールドパンツ
かのマルジェラからも寵愛された仏の伝説的軍パン、M-47。その初期モデルと後期モデルのポケットの作り方(前者は袋縫い仕立て、後者はロック始末)を、あえてミックスしたマニアな手法がM-48という名前の所以。
トラッド化の秘密は独自の生地にあり。強撚糸でウエポンを織り上げてからコールドマーセ加工を施す、というこれまた手間のかかる段取りを経ることで、この艶やか~な光沢を実現してるんです。
また極太なウエストベルトを、一般的なジーンズと同じくらいの幅に変更してるのも特筆点。品を添えるだけじゃなく、ハイウエスト一択だったM-47の弱点を克服し、着こなしの幅を広げる手腕も敬礼ものです! 4万1800円(カルネ)
其ノ一:ストレート微テーパード
其ノ二:センタークリース
2.アメリカ海軍のチノショーツがフルレングスに
アイク ベーハー×シップスのシャツ1万8920円(シップス 渋谷店) G.H.バス×セプティズの靴2万5300円、バロンズハンターのベルト8910円(セプティズ)
裾までステッチを施した永久クリース
ANATOMICA[アナトミカ]
チノ 1959
ひょっとしたら寒い時季に作られていたのでは?というユニークな発想のもとに誕生したのがこちら。USMC=米国海兵隊が1950年代に採用していた名作チノショーツのフルレングス版です。
このショーツの最も特徴的な部分が、ステッチが施されたセンタークリース。これをフルレンの裾までしっかり表現することでお手入れは簡単、永久にビシッ! 背面のフラップ付きポケットはオリジンを再現しつつも、腰裏にマーベルトを付けて仕立てるなどドレスパンツ由来のアプローチも見事。
ゆったり&緩やかなテーパードがかかった現代的なシルエットに調整しているのも、品よく装いたい大人には嬉しいですよね。2万9700円(アナトミカ 東京)
其ノ一:ワイドテーパード
其ノ二:タック+永久クリース
3.スウェーデン陸軍のユーティリティトラウザーズをダブルスラックスに
ソンリーサのシャツ3万1900円(エスディーアイ) サンダースの靴5万600円(グラストンベリーショールーム)
あえてのベルトレス&サイドベルトで上品に
MOVER GARMENTS[ムーバーガーメンツ]
1タック ミリタリーモデル
カジュアルとドレスを時代に合わせて融合させる日本の新鋭が選んだのは、1980年代にスウェーデン軍が採用していたユーティリティパンツ。
もとより街着として取り入れても違和感ゼロのベーシック顔がウリですが、シルエットをどストレートからややテーパードさせ、裾は4.5cm幅のダブル仕立てに変更。骨太なベルトループは排除&サイドアジャスターも追加し、国内の老舗スラックス工場で仕立てれば、ご覧の通りどこから見ても端正な顔立ちに。
一方で厚手のコットンカツラギを採用、ミリタリー然とした佇まいはキープするなどバランス感覚はピカイチ。日本製でこの価格ってのも企業努力がうかがえます(涙)。1万5180円(ムーバー)
其ノ一:ストレートテーパード
其ノ二:1タック+センタークリース
4.イギリス陸軍のオフィサートラウザーズの上質ブラック
ビッグヤンクのシャツ2万3100円(アール 柳橋) レッド・ウィングの靴3万8500円(レッド・ウィング・ジャパン) アンダーソンズのベルト2万900円(エスディーアイ)
美しいドレープを描く究極のヘンプウール
Nigel Cabourn[ナイジェル・ケーボン]
ジェントルマン パンツ
コーヒー豆を詰め込んだ麻袋をアイデア源として開発した……な~んて出自を持つこの虎の子生地こそが、トラッド化のキモ。
1940年代に英国陸軍士官が着用していたパンツを元ネタに、タテ糸にヘンプ、ヨコ糸にウォッシャブルウールを採用したこのオリジナル生地で仕立てることで、かくも品があって深い~いブラックを表現してるってわけ。
インタックや懐中時計用ポケットなどはオリジンを踏襲しながら、ボタンフライからファスナーに変更、ワタリはほんのり細身にと、使いやすさを考慮したアレンジ力もさすがのひと言! ハリのあるヘンプ混だからこそ生まれるドレープ感も、すこぶる洒脱です。4万8400円(アウターリミッツ)
其ノ一:ワイドテーパード
其ノ二:センタークリース
※表示価格は税込み
[ビギン2021年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。