特集・連載
アウトドアコーディネーター 小雀陣二さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #014
100人をめぐる、これからのシン・スタンダード モノを持たない風潮の今、本当に価値のあるモノってなんだろう? 身の丈に合わないモノはいらないし、ファストな使い捨てモノなんてもっといらない! とはいえ一切無駄を省いた生活もなんだか味気ないような……。大切なのは、何を所有するかよりも、どう向き合うかという視点。モノ選びの賢人たちは今、何を選び、どんなライフスタイルを志向するのか? 100人への取材を通じて、これからのスタンダードを探ります。 この記事は特集・連載「100人をめぐる、これからのシン・スタンダード」#14です。
「打ち込みが違う無垢鉄製だとただの目玉焼きすら旨い!」
アウトドアコーディネーター 小雀陣二さん
アウトドア料理歴は30年。これまで数百種類のフライパンを試してきました。なかでも今最も気に入っているのが「ゆきぱん」です。
これは鍛冶職人に弟子入りして鉄の装飾品を手掛けてきた、広島のアーティスト岡本祐季さんによる鍛造フライパン。カヤックガイドをしている友人のすすめで入手したところ、予想を裏切る男くささに痺れました。
鉄のフライパンの作り方は、型抜きによるプレスか熔かした鉄を型に流し込む鋳造が一般的ですが、ゆきぱんは無垢鉄を一枚ずつ真っ赤になるまで熱し、叩いて形作る鍛造製。女性の力では何度も叩く必要があるため、ハンマーの荒くれた跡が刻まれ、他の鍛造フライパンにはない無骨さがある。
筒状に形作った原始的な柄は、棒に差せば槍としても使える猟師の山刀にも似て、そこも山道具好きの僕がグッときたポイントですね。
実際、よく鍛錬された鉄は密度が高く締まっているからか、火の通りが抜群によく、目玉焼きも白身はカリッ、黄身はトロッと焼き上がります。
焼くことに特化した平べったい形や小ぶりのサイズ感(直径約18cm)も、パンケーキやベーコン、カマンベールチーズなど、ちょっとしたものを焼くのにちょうどいい。そのまま器になるため、アウトドアでも重宝しています。
la forgerone decoration[ラフォルジュロンデコラシオン]
鍛造フライパン“ゆきぱん”
食材の美味しさを引き立てる、装飾を排したシンプルなデザイン。分厚い鉄板を手打ちで何度も鍛錬するため、堅牢でまず割れない点も魅力。IH使用可能。約Φ18×H1cm。2万3100円(ラフォルジュロンデコラシオン)
アウトドアコーディネーター
小雀陣二(こすずめじゅんじ)
1969年生まれ。本誌で「入れるだけ~♪のダッチオーブンレシピ」を連載中のアウトドアコーディネーター。三崎港でカフェ「雀家」を営むほか『焚き火料理の本』(山と渓谷社刊)など著書も多い。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。