オールブラックス復活へ! 南半球4カ国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」がおもしろい
長年人気の大学ラグビーが開幕し、楕円球ファン待望の季節が到来した。感染対策として無観客での開催が多い状況ではあるものの、ひたむきな真剣勝負を間近で、あるいはテレビでつぶさに見る機会が増えたこともあり、競技の魅力をあらためて堪能できるシーズンに突入した幸せを実感しているファンも多いことだろう。
一方で海外へと目を移すと、8月に開幕した南半球4カ国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」がおもしろい。地球上最強クラスの代表チームによる真剣勝負だけに世界中のファンを沸かせているが、同時に、WOWOWが全試合放送・配信していることから、日本のラグビー通もうならせるような試合が続いている。
ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチンの強豪4カ国が総当たり戦を行い(ワールドカップイヤーを除きホーム&アウェイ方式で行われる)勝ち点により優勝を争う大会で、アルゼンチンを除く3カ国で初開催されたのは1996年。当時は「トライ・ネーションズ」という大会名で、2012年からアルゼンチンが加わり現在の4カ国対抗の形となった。
昨年は新型コロナウイルスの影響を受けていた南アフリカが不参加となり、例外的に3カ国で開催された。今年は2019年の同大会とラグビーワールドカップでともに優勝し、以来世界ランキング1位を守ってきた南アフリカが2年ぶりに参戦。ワールドカップから2年を経た今、現在の最強国がどこなのか決める戦いが続いている最中だ。
4カ国の中で最も充実しているのは「オールブラックス」の愛称で知られるニュージーランド代表だろう。
昨年の3カ国によるトライ・ネーションズでは優勝こそしたものの、アルゼンチンに史上初黒星を喫したほかオーストラリアにも1敗し、最終的には2勝2敗と精彩を欠いた。その教訓が生きたのか、今大会は日本で活躍したLOブロディ・レタリックやSOボーデン・バレット、日本移籍がささやかれるFB/SOダミアン・マッケンジーらを中心にオーストラリアとアルゼンチンを圧倒。それぞれに2連勝し、第4節時点で唯一無敗の首位に立っている。世界ランキングも2位から1位へ浮上。かつての定位置に返り咲いた。
そのニュージーランドに開幕2連敗し苦しいスタートとなったのが、隣国の好敵手「ワラビーズ」ことオーストラリア代表だ。
2023年のラグビーワールドカップを見据えて若手を積極起用したが、ニュージーランド戦は22-57、21-38と2戦連続で完敗。そこから南アフリカとの連戦ということで先行きが不安視されたが、SOクウェイド・クーパー(花園近鉄ライナーズ)、CTBサム・ケレヴィ(東京サントリーサンゴリアス)ら経験値の高いプレイヤーが出色のパフォーマンスを見せ、最強だったはずの南アフリカに見事2連勝。世界ランキング1位から陥落させ、当のオーストラリアは1勝目で7位から5位、2勝目で5位から3位に急浮上した。なお、10月23日(土)には日本代表と大分で対戦する。
アルゼンチンに開幕2連勝し好スタートを切ったかに見えた南アフリカ代表「スプリングボクス」は、前述のとおりオーストラリアに2連敗。第5節と最終節のニュージーランド戦2連戦で優勝を争うはずが、第5節は負けか引き分けで戴冠を逃すこととなり、もし勝ったとしても3トライ差で得られるボーナスポイントを獲得しない限り優勝の望みは断たれる。HOマルコム・マークス(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)やFBウィリー・ルルー(トヨタヴェルブリッツ)など日本で活躍中の、あるいは活躍した経験を持つ選手が数多くいることもあり、ぜひ本領発揮を期待したいところだ。
唯一4連敗中で引き続き今大会初勝利を目指すアルゼンチン代表「ロス・プーマス」も含め、最後まで強豪としての誇りをかけて戦い抜こうとしている南半球4カ国によるザ・ラグビーチャンピオンシップ。残り2節となったが、その熱い真剣勝負は最後まで見逃せない。
齋藤龍太郎
《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。
文・撮影/齋藤龍太郎