【希少種“チェビオットウール”をご存じ?】ナイジェル・ケーボン渾身のミリタリースラックスは傑作です!
寡聞にして存ぜず、恥ずかしながら本件で初めて知ったウールの希少種、それが「チェビオットウール」でした。本来ツイードなどのタフな生地に用いられる原料を、ビジネスにも応用可能なスラックスとして作ってもらったのが、ナイジェル・ケーボンのBegin別注「ウール版ブリティッシュアーミーパンツ」。その渾身別注について、メインラインのチーフデザイナーであり、ナイジェル氏の右腕として活躍するZUKIさんに、ビギンマーケット担当サトミが改めてお話をうかがいました。
今回ZUKIさんに伺ったお話は、本誌やサイトだけでは伝えきれなかった、細か~いエピソードも含んでいます。これぞナイジェル・ケーボン!とも言うべき、服飾知識と愛にあふれたこだわり満載の一品であることがおわかりいただけると思いますので、ぜひ余すところなくご覧くださいませ!
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本作のキーマンはこの人!
ナイジェル・ケーボン
メインライン チーフデザイナー
ZUKIさん
ヴィンテージの知識はもちろん、ブランドの肝であるテキスタイルにも精通。15年以上にわたり、ナイジェル本人の右腕としてブランドを支え続けている。
トクベツな原料、トクベツな糸、そして
トクベツな生地のトクベツすぎる一本!
これが渾身の別注パンツ!
ベースは、もともとブランドでも定番品として展開している「ブリティッシュアーミーパンツ」。それを“ビジネスでも穿けるように”という発想で、生地やらディテールやらを練りに練ってアレンジしていただきました!
編集部サトミ(以下 サトミ):ここ数年、本当にビジネス服のカジュアル化が進んでいますよね。今回は、ナイジェルさんで何かそういった方向性のアイテムができると意外性もあって面白いと思ったんです。
ZUKIさん(以下 敬称略):実は相談いただいたのがとてもいいタイミングだったんです。今進行中の2022年の春夏企画では、1940~1950年代のイギリス国民が着用していた(ドレス)クロージングに着目し、それらを現代に見合った衣服となるように再構築の設計をしている最中でした。今回の別注企画はその走りとなる、ある意味では実験的に先行したアイテムとも言えると思います。
「チェビオット」という羊の毛を使っているんです
とにかく生地がすごくイイ!(編集部サトミ)
程よい強度もあり、しなやかさもあり

サトミ:それにしてもご提案いただいた「チェビオットウール」の生地には驚きました。無骨ではあるんですけど、絶妙にスラックス然とした品よいタッチも併せ持っているんですよね。
ZUKI:チェビオット羊毛は流通のほとんどが紡毛紡績による太番手のものが主流です。ファブリックとしてはブリティッシュ・ツイードなどが代表的なものとなります。
サトミ:本来はガサっとした肉厚な生地に用いられる糸なんですね。
ZUKI:しかし、今回の生地はチェビオット100%の梳毛紡績によるもので、原料の中でもファーストカット(=生まれて初めての散髪)の毛のみで構成されています。
この素材との出会いが本作最大のポイントでした
“生まれて初めての散髪”ってめっちゃ柔らかそう!
サトミ:通常はガサっとした紡毛の糸しか撚れないのに、ファーストカットの原毛を使用することで、スーツに使われるようなツルっとコシのある梳毛紡績が可能になる、と。
ZUKI:そうですね。子どもの原毛は繊度が細く、かつ繊維長が長いんです。よって梳毛紡績が可能となり、さらに28番手という世界的にも稀なヘビースペシャルな糸となっています。この素材に巡り合えたことが、今回一番のキーポイントと言っていいかもしれません。
サトミ:おお! やはりかなりスペシャルな糸なんですね。スペシャルな原毛がスペシャルな糸になり、さらにはスペシャルな生地が生まれた、と。実際、間近で見たり触ったりすると、「なんだこの生地!(驚)」ってなりますもんね。一方で、ビジネスにも対応できるということで、この「ブリティッシュアーミーパンツ」を採用した狙いもきっとあるんですよね?
ミリタリーの無骨さとエレガントさを併せ持つ

ZUKI:はい。まず本作は、1940年代英国のバトルドレスパンツと1960年代の(アフリカ)ローデシア軍のバトルドレスの折衷デザインになっています。ポイントは、軍パンながらマチ付き大容量のカーゴポケットのディテールがないこと。機能的で簡素化されたアシンメトリーなマチ無しポケットを有するデザインが、今回のコンセプトに合致すると考えました。
サトミ:確かに大きなマチ付きポケットがあると、途端にミリタリー感が強まる気がします。
ZUKI:そうなんです。さらに、本来はピストルベルト用とされていたベルトループの向きを逆にしてよりベルトループとして使いやすくしたり、裾のタブはシルエット改良したことにより不要になったため取り除いたりしています。また、ベルト裏の仕様は1940年代のオフィサーパンツの仕立てを分析・採用しており、元となるデザインはファティーグパンツの域でしたが、オフィサー(将校)パンツの域まで引き上げ、価値転換を図りました。
ディテールにも一切の妥協なし

“兵士のパンツ”を“将校のパンツ”へと価値転換しました
練りに練られた作り込み……本当に頭が下がります!
サトミ:ここまでくると細かすぎて伝わらない選手権の様相ですが(笑)、細部に至るまでこだわりが詰まりまくっているということですね。そのほかにこだわった点や、苦労した点などありますか?
ZUKI:当ブランドは比較的に太いシルエットが多いのですが、今回のコンセプト(=ビジネスでもOK!?)に合うような股ぐりの形状、膝幅、裾幅などのシルエットは熟考しました。また簡素化できるディテールも再検討するなど、何度も設計をし直しながら、再構築した賜物となります。
サトミ:もう本当に頭が下がります。“なんとなく”で作られているところなど、何ひとつないということですね。ちなみに、ちょっと聞くのが怖い気もしますが、出来栄えに対する満足度はいかがでしょうか?
ZUKI:よいものが出来たと考えております。
サトミ:よかった! その言葉が聞けてよかった(安堵)! 今回は本当にありがとうございました。個人的にはチェビオットウールのトップスを今度はぜひ!と思っていますが、それはまたのお話ということで。改めましてありがとうございました。
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他のどこにもない一本(のはず)です!
