特集・連載
ウエストオーバーオールズ 大貫達正さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #002
100人をめぐる、これからのシン・スタンダード モノを持たない風潮の今、本当に価値のあるモノってなんだろう? 身の丈に合わないモノはいらないし、ファストな使い捨てモノなんてもっといらない! とはいえ一切無駄を省いた生活もなんだか味気ないような……。大切なのは、何を所有するかよりも、どう向き合うかという視点。モノ選びの賢人たちは今、何を選び、どんなライフスタイルを志向するのか? 100人への取材を通じて、これからのスタンダードを探ります。 この記事は特集・連載「100人をめぐる、これからのシン・スタンダード」#02です。
「小さな襖工場が生み出したアートの和洋折衷」
ウエストオーバーオールズ デザイナー 大貫達正さん
古来から部屋の仕切りとして親しまれてきた襖。年々和室が洋室に変わる昨今、需要は少なくなり生産も決して活発とは言えません。60年以上の歴史を持つ『大場紙工』もそのひとつ。その3代目後継者が生み出したのがこの襖絵アートなんです。
個人的に今まで“和”モノに触れる機会はあまりなかったんですが、日本人として伝統文化はやっぱり残ってほしい。そこで知り合いの点描画家を紹介し、意見を交換し合ってできたのが、絵画のように壁に掛けられるこの襖絵。伝統的な襖はキャンバスサイズにアレンジされ、50年以上現役で活躍する印刷機で刷られた点描画は、旧来の襖絵とはまた違った“洋”な趣でしょ?
この風景、じつはナバホ族の聖地、モニュメントバレーで僕が撮ったもの。サンダーバードの形の雲が浮かぶ奇跡の一枚を使ってもらったんです。
家にいる時間が増えた今、やっぱりインテリアは重要です。あえて木枠を無垢にしたこの襖絵は、ネイティブアメリカンテイストのラグやオブジェが並ぶ僕の家にすんなり溶け込むのに、日本の伝統文化らしい厳かな迫力もある。
もともと絵画を飾ることに興味がなかった自分に、今まで持ち合わせていなかった新しい価値観をもたらしてくれたのが、この襖絵アートだったんです。
FUSUMA
襖絵アート“モニュメントバレー”
枠に檜を、骨組みに秋田杉を使い伝統の手法で作られるキャンバスサイズの襖に、点描画を印刷した壁掛け絵画。裏の吊り紐には京組紐をあしらった。W57×H46×D2cm。「Monument Valley」8万8000円(サンタセッ)
ウエストオーバーオールズ デザイナー
大貫達正(おおぬきたっせい)
1980年生まれ。小学生からヴィンテージデニムに傾倒し古着業界へ。その後ブランドを立ち上げデザイナーとして活動する。現在ウエストオーバーオールズの他、知識と経験を活かしたギャラリーも運営。
※表示価格は税込み
[ビギン2021年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。