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2014年タイでの18Uアジア選手権での日本代表 写真左から6番目が岸田、7番目が岡本、8番目が香月

新型コロナウイルス感染症の影響による障壁や制約がありながらも、細心の対策を講じて開幕した今年のプロ野球ペナントレース。今年はメジャーリーグから田中将大(楽天)が日本球界に復帰するという大きなトピックがある一方、各球団における若手~中堅どころの世代交代が徐々になされていると感じている。特に目につくのが、1996年生まれ(早生まれなら1997年)の選手の台頭だ。

たとえば、西武の髙橋光成は、自身初の開幕投手に抜擢されて勝利投手になり、以後、エースとしての風格を帯びつつある。

また、前年ブレイクした栗原陵矢もこの年の生まれだが、王者ソフトバンクにあって4番に入るケースが増えた。打線の中核である柳田悠岐を2番に配する新時代的オーダーを組む事情もあるが、栗原の持つ勝負強さと長打力が認められての抜擢と見ていいだろう。

そして、すでに巨人の4番として完全に定着している岡本和真も1996年生まれである。他にも、ロッテの先発ローテーションを堅守している左腕の小島和哉や、今年は開幕から打撃好調で外野の一角に食い込んでいる淺間大基(日本ハム)も同じ学年だ。

彼らは2014年18Uアジア野球選手権の高校ジャパンの一員だった

実をいうと、いま名前を挙げた選手たちは、同学年ということ以外にもうひとつ共通点がある。それは、2014年9月に開催されたBFA 18Uアジア野球選手権に出場した侍ジャパン高校日本代表チームのメンバーであったことだ。

今をさかのぼること7年前の夏。高校3年生だった彼らは、甲子園球場で開催された全国高等学校野球選手権大会が閉幕して間もない8月下旬に招集され、国内での強化合宿を数日間こなしたのちに、開催国のタイへ飛んだ。

熱帯地域独特の蒸し暑さの中で、高校日本代表はフィリピン、スリランカ、中国にオール大差の完封勝ちで一次予選を突破。準決勝の台湾戦では、1対2で迎えた9回裏に逆転サヨナラ勝ちを収めた。

しかし、宿敵・韓国との決勝は内野のミスによる失点が響いて1対2で惜敗し、アジアナンバーワンの座につくことはできず。選手たちは「国際大会で日の丸を背負うのは、甲子園よりも重い」とプレッシャーの大きさについて語り、試合後はしばし呆然としていた。

不慣れな役割も難なくこなす印象の強い世代

この2014年の高校日本代表チームでは、投手陣のエースは髙橋光成だった。そして、当時から右方向へ大飛球を飛ばせた岡本が不動の4番。「打てる捕手」として評価されていた栗原は、キャプテンとしてチームをまとめた。余談だが、岡本と栗原は、強化合宿の初日から互いに檄を飛ばし合い、大会の閉幕式直後も別れを惜しむようにじゃれ合っていたほど仲がよかった。

岡本の背中に飛び乗ってじゃれる栗原岡本の背中に飛び乗ってじゃれる栗原

ただ、このときの栗原は、大会途中から右ヒジ痛によりフル出場が難しくなってしまう。そこで臨機応変に対応したのが、現在、巨人の控え捕手として定着しつつある岸田行倫だ。

岸田は当初、栗原の控えという位置づけだったが、代表監督の高橋広は、岸田の打撃を生かしてほとんど守備経験のない一塁に抜擢。岡本はDHに固定した。そして、栗原故障後の準決勝、決勝では、急遽本来の捕手として先発させている。岸田はどちらもこともなげにこなした。

さらに、岡本の次を打つ5番には、大阪桐蔭高校の主力として甲子園で活躍した香月一也(巨人)が入り、3番岸田(打率.411)、4番岡本(.474)、5番香月(.411)の並びで好結果を残した。

その他にも、明徳義塾で下級生時代から4度甲子園の土を踏んだ岸潤一郎(西武)が、外野手と投手を兼任する二刀流で随所に勝負強さを発揮。左腕の小島は、ほとんど経験のないはずのショートイニングのリリーフをこなすなど、総じてフレキシブルに力を発揮する選手が多いという印象が強く残っている。

運命的なめぐり合わせもあった代表メンバーたちの野球人生

当時の彼らの戦いぶりをベースにして、その後歩んできた野球人生を重ねると、面白いものが見えてくる。

2014年タイでの18Uアジア選手権での岡本和真2014年タイで開催された18Uアジア選手権での岡本和真 Ⓒ Getty Images

アジア選手権後のドラフトでは、岡本、髙橋光、栗原、淺間、香月と、投手陣の一角を担った飯塚悟史(DeNA)、外野手の脇本直人(元ロッテ)がプロ入りを果たした。

一方、岸田は社会人の大阪ガスでプレーし、3年後、岡本のいる巨人に入団。早稲田大のエースとして神宮を沸かせた小島は、4年後に香月のいるロッテに入った。

そして、2020年のシーズン途中、澤村拓一とのトレードで香月が巨人へ移籍するという運命的な出来事が発生。岸田、岡本、香月の高校日本代表クリーンナップがプロで再び揃ったのである。

また、二刀流の活躍を見せた岸は、大学中退など紆余曲折の末、2019年秋のドラフトで指名され西武に入団。それ以外の代表メンバーの多くは社会人で野球を続けており、まだドラフト指名される可能性を秘める選手もいる。

いずれ「○○世代」と呼ばれる日が来るか?

たかだか、ひとつの学年。その中でも十数名のごく一部に限定された範囲だというのに、7年後には多種多様に枝分かれしていた。

そもそも、2014年の高校代表は、大谷翔平(エンゼルス)、藤浪晋太郎(阪神)ほか有望選手が多かった2012年や、松井裕樹(楽天)、森友哉(西武)のバッテリーが話題だった2013年の高校代表と比べると、注目度はそれほど高くはなかった。それでも、岡本らトップクラスの選手がプロの世界で存在感を示しつつあるのだから、人の運命はわからない。

そういえば、この世代にはまだ名前がない。すでに球界を代表する主砲に育った選手の名から「岡本世代」とするのが有力だろうが、この場で命名すべきことでもない。気運が高まれば、自然とふさわしい名前で呼ばれるだろう。

彼らが、いずれプロの日本代表の主要メンバーになる日も、そう遠くはない。

フリーライター
キビタキビオ

《野球をメインに媒体の枠を超えて活動》
2003年より専門誌『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を務める傍ら、様々なプレーのタイムを計測する「炎のストップウオッチャー」を連載。12年にフリーとなり、インタビュー、データ、野球史の記事や選手本の構成など幅広く担当。『球辞苑』(NHK-BS1)にも出演中。

文/キビタキビオ

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