時代のニーズや変化に見事に応えた優れモノが、日々私たちの周りで続々と誕生しています。そんな心を踊るアイテムは、どのようにして生み出されたのか? 本連載「ビギニン」では、そんな前代未聞の優れモノを“Beginした人”を実際に訪ね、その誕生の深層に迫ります。目からウロコな制作秘話やモノ作りに込められた思いを、まっすぐに紹介。ビギニンの発想、言葉、生き方に触れれば、そのモノがより魅力的になるだけでなく、きっと私たちの生活のヒントになるでしょう。

今回門を叩いたのは、1887年創業の誰もが知る日本の大手消費財化学メーカー「花王」。その歴史は、「低価格で販売できる高品質な洗顔用石けん」の開発からはじまり、現在では洗剤やシャンプーはもちろん、歯磨き粉や化粧品など、多岐にわたって商品を展開。取材後、わたし(筆者)が自宅の洗面台で花王製品を数えたら、「あっ!これも花王か!」なんて6つも発見。知らぬ間にヘビーユーザーになっていたことに気がつきました(笑)。
そんな花王ですが、来年35周年を迎えるトータルメンズケアブランド「サクセス」から派生した、「サクセス24」を2019年にスタート。「24時間、清潔感を持続する」というコンセプトのもと、これまでにシャンプーや洗顔シートをリリースしています。

そして今春、満を持して同シリーズからメンズ用ヘアワックスが登場しました! 数多あるメンズヘアワックスと違うところは、髪
に触れるたびに香る!ということ。このワックスのために開発された新技術「アロマスイッチテクノロジー」により、朝から夕方まで髪にタッチする度にこだわりのフルーティフローラルの香りが広がります。
同製品は2021年の3月に発売したばかり。それにもかかわらず、「香水をつけてないのに、いい香りがすると褒められた!」「朝セットした香りが帰宅中にも風が吹くたび感じる!」などなど、ユーザーからは香りに対する喜びのコメントが多数届いているんだそうです。

そこで今回は、アイデアを思いついた上田 紘暢さんと、ワックスの肝となる香りを研究した粕尾 優衣さんの両名にお話を伺います。

わたし(筆者)も試してみたところ、前評判が大げさなものではないことを実感。原稿に行き詰まるとつい髪を触ってしまう癖があるのですが、その度爽やかなフルーティフローラルの香りに救われました。この記事を読めばきっとあなたもドラッグストアへ直行です!!

今回のビギニン


花王 サクセス24 プロジェクトチームの2人

左:花王株式会社 研究開発部門 感覚科学研究所 粕尾 優衣さん。入社4年目。神奈川県出身。趣味は料理本片手にレパートリーを増やすこと。最近はスパイスから作るバターチキンカレー作りに夢中。
右:花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 上田 紘暢さん。入社8年目。大阪府出身。硬式テニスをして汗を流すのが休日の定番。練習後のシャワータイムに良いアイデアが浮かぶんだとか。

idea:
いい香りに包まれて暮らしたいと思った


入社後、歯磨き粉などオーラル系のブランド担当を経て、2018年から「サクセス」チームに合流した上田さん。

 

「近年のメンズコスメの注目もありながら、日中の清潔感、香りは今の若い男性を中心に昔と比べ関心が高まってきているしから、次は香りのいいワックスで行こう!」とチームで新商品開発の方針が決定。そのコンセプトを上田さんが考えることに。しかし、良いアイデアはなかなか上田さんの元に降りてきませんでした。

「“いい香りって部分を、とにかく打ち出せばイイんだ!”なんて雑な提案をしてみたり……(笑)。」

続けて、「それだと、サクセス24の製品でもなくていいという話になりますから、すぐ考えを改めました。」と上田さん。この期間中は、とっても苦しかったと教えてくれました。

同社として男性用ワックス市場は未墾地。前例のデータなどもなく、まさに一からの商品作りが行われていました。時期的にもコロナウイルス感染症が蔓延し閉塞感のある毎日で、とうとう上田さんの考えも煮詰まってしまいます。
そこで上田さんは、商品のコンセプトを考える前に、香りを感じたい場面ってどんなところだろう?と考えました。異性が近ずいてきた時、勉強や仕事で行き詰まった時、コロナ禍のリフレッシュ効果のひとつとして…。コロナ禍において、リフレッシュできる空間が少ない今、自分自身の気分を変えるためにも香りって重要なんだ!と気づいたんです。そして、コンセプトを何十回も考え直すなかで、“髪にタッチするたび、香り生まれる”という案にいきつきました。日中でも鏡があるところで男性が髪型を整えているので従来の行動に落とし込める点と、香りを感じたい時に感じられるのが面白いとメンバーの中でもなりました。

「煮詰まった自分自身をリフレッシュするためにも、いい香りに包まれて暮らしたい。と思うことが増えてきました。」

trigger:
世間もワックスに”香り”を求めていた!

ちょうどその頃、花王は男性のヘアスタイリング剤に対する香りの意識調査を実施。すると「日中もスタイリング剤の香りを感じたい」という回答が78%、加えて「朝のセット時にはワックスの香りを感じても、日中は期待ほど香りを実感できていない」という人も多数いることが判明しました。

「いい香りに包まれて、香りを感じたいときに感じられる暮らしをしたいという自分の気持ちと、ワックスにも香水のような香りの持続性を求めるユーザーのニーズをどちらも満たす“香りが1日中継続し、タッチするだけで香るワックス”を作りたいと思いました。このテーマが決まったときはとても嬉しかったですね。開放感に包まれました。」

しかし、果たしてそんなことが出来るのか、同時に少し不安にもなったのだとか。そこで相談を持ちかけたのが粕尾さんでした。この日を境に、「いいものを作るためには、どんなことができるのだろうか……」なんて思いながら、粕尾さんは試行錯誤を繰り返す日々に巻き込まれていきます。

後編:わたし史上、一番男性について考えた日々 に続く

豆知識:三日月の顔は子ども!?


花王の企業ロゴには“美と清浄”の象徴として月のマークが使われています。月は、1890年に考案された初代ロゴにも使用されており、同社の原点、「洋小間物商・長瀬商店」で取り扱っていた輸入品の鉛筆のデザインにインスパイアされたんだとか。そこで1つ豆知識。この月の顔、実は子どもの表情をイメージしているらしいのです。しかも、時代によって「男性→女性→子ども」と表情を変えているという(驚)。知っていました? 明日のこぼれ話にでも、ぜひ!

サクセス24
フレグランスワックス

髪に触れると香りを感じる自社開発の「アロマスイッチテクノロジー」を採用。その効果により、朝から夕方まで日中の清潔感を演出できる。香りは、ほんのり甘い爽やかなフルーティフローラル。ワックスの種類はキープ力やツヤ感などで違いのある「マットハード」・「グロッシーハード」・「エアリーミディアム」の3種類。香りは共通。ともに80g 各1,408円(税込)

(問)
花王消費者相談室
☎0120-165-694
https://www.kao.co.jp/success/products/success24/hairwax/

写真/宮前一喜 文妹尾龍都

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