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日本代表は2019年のワールドカップ以降は活動ができておらず、強化への影響が懸念されている

「ONE TEAM」の旗印のもと、2019年秋に開催されたラグビーワールドカップ日本大会で悲願の8強入り、すなわち決勝トーナメントへの進出を初めて達成した日本代表。ラグビーが初見に近かった人々、当時の言葉を借りるならば「にわかファン」からしても一目で素晴らしいとわかる数々のプレーは、日本にとどまらず世界中を感動させるものだった。

だが、国内においてラグビーが人気スポーツへの仲間入りをする契機となったラグビーワールドカップから約1年半の間、日本代表は新型コロナウイルス感染拡大の影響で一度も活動できていない。

2019年のラグビーワールドカップ日本大会で日本代表の指揮を執ったジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチとキャプテンを務めたリーチ・マイケル
引き続き指揮を執る日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(左)はまだ来日できていない

日本代表の大半が活躍の場としているジャパンラグビートップリーグ(以下トップリーグ)は、コロナ禍に見舞われ始めた昨年2月に2020シーズンが中断となり、そのまま中止となった。今年1月に開幕予定だったトップリーグ2021シーズンも開幕が延期となり、当初の予定から1か月遅れの2月20日に開幕を迎えた。海外に移籍した選手を除けば大半のプレーヤーは自身のパフォーマンスを見せる場を失い、長いブランクを過ごすこととなった。

その一方で、日本代表と南アフリカ代表を除く世界ランキング上位国はハイレベルなテストマッチを続けている。特にシックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗戦)、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(南半球4カ国対抗戦。昨年は南アフリカ代表以外の3カ国により「トライネーションズ」として行われた)はコロナ禍の中でも大会が遂行され、ワールドカップ上位入りの常連国の強化は着実に進んでいる。

一昨年から時計が止まったままの日本代表にとって(もちろん選手はトップリーグなどの実戦を通じて研鑽している最中ではあるが)、2023年のラグビーワールドカップフランス大会開幕までに残された期間は約2年半。そのため今年6月、7月は確実に試合を行い、またそれに向けた事前合宿も実施し、何としてもチームとしての第一歩を踏み出さなければならないわけだ。

2021年3月現在、今夏は以下の2試合の開催が決定している。

■6月12日(土)日本代表強化試合 ※対戦相手未発表(静岡県・エコパスタジアム)
■6月26日(土)ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズvs日本代表(スコットランド・BTマレーフィールド)

ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(以下ライオンズ)とは、ラグビーの発祥国であるイングランド、そして同じく伝統国であり永年のライバル同士であるスコットランド、ウェールズ、アイルランドの4協会が4年に一度編成するチームのことで、1888年の初結成以来130年以上の伝統を有している。グレートブリテン島とアイルランド島のトップ選手にとって選出はこの上ない名誉である“ドリームチーム”、ライオンズは4年おきに南半球の強豪国(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ)へ遠征し各代表や現地チームと対戦する。今年は南アフリカに遠征するが、その出発前に日本代表とスコットランドで対戦するというプランが早々に発表された。

2019年まで日本代表キャプテンを務めたリーチ マイケル(中央)。早くファンの前で勇姿を見せたい

日本代表がライオンズと対戦するのは初めてのことだ。今後二度と実現しない可能性もあり、まさに千載一遇のチャンスと言える。2019年のワールドカップでの躍進がこの誉れ高い対戦の実現に結び付いたことは想像に難くない。日本代表はこの歴史的な一戦に向けて十二分に強化を進めたうえで臨む必要があり、その2週間前にエコパスタジアムで行われる強化試合は極めて重要な一戦となる。ただ、他国の代表を招いて試合を行うのは状況的に難しく、トップリーグを中心に国内で活躍する有力選手によるコンバインドチームと対戦するのが現実的な線だろう。

また、今夏の日本代表の試合はこの2試合にとどまらない予定だ。日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は、

「(今夏の日本代表は)4試合を予定している」
「我々のスタンスとして、7月は日本でゲームがしたい」

と語っており、7月に他国の代表を招いてもう2試合行うプランを進める一方で、

「6月26日にヨーロッパ(スコットランドでのライオンズ戦)にいる以上、(帰国するには)隔離の問題が生じる。日本代表が日本に戻ってこられない状況も想定し、いくつかのオプションを用意する必要がある。その点、ワールドラグビー(世界のラグビーの統括団体)やいくつかの国とオプションを話している」

とも明かしている。つまり、ライオンズ戦の後もそのまま英国に留まり、現地か現地に近い国の代表チームと対戦するというオプションも視野に入れているということだ。

2023年のラグビーワールドカップフランス大会で、日本代表はプール戦でイングランド代表とアルゼンチン代表、他2カ国と対戦することがすでに決まっている。極端に短くなることがあった試合間隔が正常化したことで、過去2大会連続でキャプテンを務めたリーチ マイケル(東芝)も「フェアな状況で戦える。フレッシュな状態で戦えるのは楽しみ」と語っている。その一方で、日本代表が活動を本格化しない限りそのような強豪に勝つことは難しく、強化の第一歩となる今年6月、7月のマッチメークは極めて重要であり、大きな意味を持つことになるわけだ。

日本代表が再び「ONE TEAM」となり世界の強豪と渡り合う日が来ることを、強い希望を持って待ちたい。

編集者兼ライター
齋藤龍太郎

《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。

文・撮影/齋藤龍太郎

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