wook vol.11

腕時計

本間昭光

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカス。その魅力&エピソードを語っていただく連載、♯05は時計です!!

山下達郎さんの時計姿に憧れて……

Patek Philippe パテック・フィリップ ゴンドーロ

レクタンギュラー(長方形)型ケースに独特の個性があるパテック・フィリップ「ゴンドーロ」。スモールセコンドを備えた、クラシックな趣のする時計だ。

山下達郎さんがライブをするとき、いつも黒い革ベルトの四角い腕時計を着けているのに気づいたんです。カッコいいな〜と思っていろいろ調べていると、かのエリック・クラプトンも時計好きだというじゃないですか。なんでもパテック・フィリップのコレクターだそうで、ウン億円の時計を売りに出したこともあるとか(!)。ボクはエリック・クラプトンを崇拝していたわけではありませんが、クラプトンモデルのマーティンのアコギ「OOO-28(トリプルオー28)EC」を買ったりはしていて、憧れの存在ではある。これはボクも欲しいぞ!と思いまして、20年前くらいにがんばってパテック・フィリップの「ゴンドーロ」という時計を買いました。四角いケースと黒いベルトは、達郎さんに倣ったものですね。

楽器を演奏するミュージシャンが時計を身に着けるのを珍しく感じる方もいるかもしれませんが、リチャード・ティーというキーボーディストなんかは腕時計をしたうえで全部の指に指輪をして最高の演奏をしていましたから、慣れの問題なのでしょう。ただ、さすがにクラシックのピアニストで時計を着けて演奏している人を目にしたことはありませんね。

すべての生き物にとって、時間は平等に流れる

昆虫だろうとどこかの国の大統領だろうと、生きとし生ける者にとって時間は平等に、止まらず流れていきますよね。若い頃は考えもしませんでしたが、50も半ばを超えると先輩が次々と亡くなってしまったり、友人にも亡くなる人が出てきて、自分にも終わりがあるんだなということに思いを巡らすようになります。同時にボクは、自分が生きているうちに何が残せるか?ということを考えるようになりました。作品だけに限らず、言葉や、仕事に対する姿勢を後輩たちにどうアーカイブしていくかについて考えるんです。人間は一度満足して歩みを止めてしまうと、成長もストップしてしまう。だからこそ、ゼンマイを巻いて動き続ける機械式時計のように、ボクらは常に歩みを止めてはいけない。腕時計は、時間を見る度にそんなことを思い出させてくれる気がします。スマホだとどうも無機質で、こうはいきませんね。

余談ですが、ボクの先輩の作曲家、武部聡志さんは、7つも年上なのに自分が未だに追いつけないスゴいペースで仕事をされています。「限られた時間の中で最高のものを生み出さないといけない」という価値観を体現する方なので、打ち合わせをするにも緊張感があります。

本間昭光 武部聡志

先日も膝を突き合わせて楽曲制作の打ち合わせをしたのですが、時間が限られているので音を鳴らしながらというのではなく、ココはミ・シ・ミかな、ラ・シ・ミかなというのを、譜面を見ながら頭の中で共有し、決めていく作業がありました(※言うなればプロ棋士のエア将棋のようなもの)。すべてをコンピュータベースで作曲をする昨今ではありえない光景だと思いますが、一日ですべてを(アナログで)完成させなければならなかった時代を生きた人間は、当たり前のようにこれが出来る。

ボクが先輩からたたき込まれたように、この時間の大切さについてはぜひ後輩へ伝えたいと思っています。ひいては、やっぱり先輩には追いつけないな、悔しいなと思わせたいので(笑)、彼らにはひたむきに頑張っている姿勢を見せたいですね。

“同い年”の時計を記念に購入

ROLEX ロレックス エクスプローラーⅠ

1964年製のロレックス「エクスプローラーⅠ」。「大きなのっぽの古時計」ではないけれど、自分の生まれた年に製造され、時を刻み続けてきた時計だ。

時計だとロレックスの「エクスプローラーⅠ」もお気に入りで、こちらはボクの生まれ年の1964年モデルを購入。買ったのはちょうどポルノグラフィティの「アポロ」を書いたあたりなので1999年頃。最近は価格が高騰していますが、当時は今ほど高くなかったんですね。当時少々雑に扱ったせいでキズがついてしまって、とても後悔しています(笑)。それと、修理に出したら性能上の問題とかでドーム風防をフラットに替えられてしまったのも悲しかったですね……。

それはさておき、この時計は本当に時計らしい時計といいますか、シンプルな顔がステキだなと。アラビアインデックスのフォントが丸みを帯びていて、この独特の感じもイイんですよね。ホントは蛍光インデックスなんですが、ボクがおじさんになるのと歩調を合わせてか、光を失ってしまいました(笑)。

日本で初めてCMに音楽を当てたのは「セイコー」

SEIKO セイコー 手巻き式時計

祖父の形見として譲り受けたセイコーの時計。レアもレアな、国鉄の退職記念品だ。

それからもう1つ、ボクの大切にしている時計がセイコーの古い手巻き式時計です。国鉄に勤めていた祖父が退職の際に貰ったものを形見に譲り受けて、今もときどき時計屋さんで油を差してもらいながら使っています。裏蓋を見ると「日本國有鉄道」と刻印されているんですけど、かなりレアですよね。

SEIKO セイコー 手巻き式時計

セイコーさんがコマーシャル提供している音楽番組に出演する際はコレを着けて臨むのですが(笑)、じつは日本初のTVコマーシャルはセイコーといわれています。そのときの楽曲を作曲されたのは服部良一先生。国民栄誉賞を受賞された方です。セイコーは創業者が服部さんで、後に服部セイコーを社名にしていた時代もありますから、ご縁というものですよね。以上、音楽と時計にまつわる小話でした。

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)
1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。’96年に自身のプロダクション「bluesofa」を設立する。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。2021年3月24日、アレンジを手掛けた筒美京平先生のトリビュートアルバム『筒美京平SONG BOOK』が発売予定。2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題に。2020年12月には、2ndミニアルバム「メイクアップ」がリリース。「メイクアップ」より、「真冬のシアーマインド」のMVはこちら↓↓↓

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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