特集・連載
戦後豊かになった米国のミッドセンチュリーブーム
インテリア傑作家具のB面年表 家で過ごす時間が増えた今、置いとくだけでサマになる傑作インテリアが気になる!って、どうやって生まれたの? 誰が作ったの? そもそも傑作たる所以は? 傑作インテリアの裏側にあった、知られざるエピソードにフォーカス。今欲しい正統が学べる、裏話年表をとくとご覧あれ! この記事は特集・連載「インテリア傑作家具のB面年表」#03です。
世界大戦で飛躍的に成長した軍事技術や素材を応用したインテリアが急増。豊かさを手に入れたアメリカの家庭は、よりラグジュアリーな家具を求め、ミッドセンチュリーブームの火付け役に。こうしてデザインの本場はアメリカに移ることになりました。
[1944]当時から変わらず77もの工程を守り続けるタフな軍用チェア
emeco[エメコ]
ネイビーチェア
潜水艦用に開発された軽量で超タフなチェアは、ハンドメイドゆえ作業工程は77にも及ぶのだとか。無駄のない造形はアルマーニ氏も大ファンで、エメコ社倒産の危機を救ったという逸話も。W39×H86×D50cm。9万8000円。(ロイヤルファニチャーコレクション)
country:アメリカ
軽量で超タフなチェアの作業工程は77にも及ぶ
[1945]知人のために作った常識を覆す楕円形テーブル
Vitra[ヴィトラ]
コーヒー テーブル
彫刻を得意とするノグチの作は、一枚の楕円形ガラス板と彫刻のような脚が特徴。W128×H40×D93cm。22万4000円~。(ヴィトラ)
country:スイス
イサム・ノグチ
[1945]物資不足のアメリカを支えた!? 成形合板チェアの先駆け
Herman Miller[ハーマンミラー]
イームズ プライウッド ラウンジチェア(左)
イームズ プラスチック シェルサイドチェア(右)
世界大戦で物資が不足するなか、建築資材だった合板に着目し成形技術を開発。そしてできたチェアがコレ。体にフィットする3D設計ながら大量生産可能で、戦後の米国の急成長に貢献したのだ。W55.9×H67.4×D61.6cm。15万3000円~。(ハーマンミラージャパン)
country:アメリカ
合板の成形技術を開発し大量生産可能に
チャールズ&レイ・イームズ
[1950]徹底的に機能美を追求したデンマークの一脚
CARL HANSEN & SØN[カール・ハンセン&サン]
CH24 /Yチェア
背もたれの笠木をY字にした代表作。W55×H76×D51cm。8万5000円~。(カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア東京)
country:デンマーク
ハンス・J・ウェグナー
[1951]日本で生まれた世界を照らす名作照明
Ozeki[オゼキ]
アカリ
岐阜提灯に魅せられたデザイナーが何度も日本を訪れ製作した、和モダン照明。Φ55×H52cm。1万9000円。※ランプ別売り(ヤマギワ)
country:日本
イサム・ノグチ
[1952]ヒビ割れに悩んだ末に辿り着いたアリのような独特フォルム
Fritz Hansen[フリッツ・ハンセン]
セブンチェア(右)
アリンコチェア(左)
合板の一体成形技術が進歩し、背もたれと座面が一体のチェアが可能に! しかし当時の技術ではヒビは避けられず、それをくり抜いたのが本作。その形状をそのまま「アリンコ」という名に。W52×H81×D48cm。3万7000円~。(フリッツ・ハンセン 青山本店)
country:デンマーク
ヒビをくり抜いた形状が「アリンコ」という名に
アルネ・ヤコブセン
[1952]2015年に復刻したインドの伝統的なイス
Phantom Hands[ファントム・ハンズ]
PH28
チークなど地産素材を使ったインド家具。モードを牽引するあのデザイナーも愛用者だ。W52×H78×D58.5cm。32万円。(五割一分)
country:インド
[1953]アームランプの弱点を克服した美シルエット
Jielde[ジェルデ]
4040 デスクランプ
アーム内部に電気系統を埋め込み故障を減らした名作。Φ16×アーム44+44cm。6万500円~。(パシフィックファニチャーサービス)
country:フランス
[1954]学生のために作られた変幻自在スツール
Wohnbedarf[ヴォーンベダルフ]
ウルムスツール
ウルム造形大学でイスやテーブルなど多用途に使えるよう考案。バウハウスを継承。W39×H44×D29cm。3万7000円。(メトロクス)
country:スイス
マックス・ビル
[1954]デザインを削ぎ落とした近代的スツール
Vitra[ヴィトラ]
エレファント スツール
積み重ねが可能で象のような柳宗理のスツール。屋外でも使えるポリプロピレン製。W51.5×H37×D46.5cm。1万3000円。(ヴィトラ)
country:スイス
[1956]有名デザイナーの寵愛も受けた英国発のスタッキングチェア
ERCOL[アーコール]
スタッキングチェア
終戦後まだ物資不足だった英国。伝統的な家具を作りにくい状況下、構造がシンプルで大量生産しやすいことが受けて人気に。マーガレット・ハウェルが復刻を依頼したことから、近年また人気に火が付いた。W45×H77×D50cm。7万2000円。(ダニエル)
country:イギリス
マーガレット・ハウェルが復刻を依頼し近年また人気に
ルシアン・アーコラーニ
[1956]2つの合板を合わせた独特フォルム
Tendo[天童木工]
バタフライスツール
イームズ夫妻の成形合板に影響され、柳の手遊びから誕生。蝶のような形が画期的。W42.5×H38.7×D31cm。4万7000円。(天童木工)
country:日本
[1957]イタリア家具人気のきっかけを作った超軽量チェア
Cassina[カッシーナ]
スーパーレジェーラ
伊のデザイナーが開発に5年を要した本作は、約1.7kgと超軽量で、子どもが片手で持ち上げられるほど! 秘密は三角形に削ぎ落とされた脚で、耐久性と軽量性を絶妙なバランスで実現する。W40.5×H83×D45cm。16万6000円~。(カッシーナ・イクスシー青山本店)
country:イタリア
子ども片手で持てる軽量性をアピールした
脚を三角形に削ぎ落とすことで超軽量を実現! 開発に5年を要した
ジオ・ポンティ
[1958]前衛的フォルムのために仕事をお持ち帰り!?
Fritz Hansen[フリッツ・ハンセン]
エッグチェア
一度見たら忘れない本作は、コペンハーゲンのSASロイヤルホテルのためにデザイン。超特徴的フォルムを実現するため、ヤコブセンは自宅ガレージでいくつもの試作品を手作りしたとか(汗)。W86×H107×D79cm。78万2000円~。(フリッツ・ハンセン 青山本店)
country:デンマーク
ヤコブセンは自宅ガレージでいくつもの試作品を手作り
直線を主体にしたAJテーブルランプも有名
アルネ・ヤコブセン
※表示価格は税抜き
[ビギン2020年12月号の記事を再構成]文/編集部 イラスト/TOMOYA