人生100年時代のゴアテックス考
2004年に東京・代官山にオープンしたセレクトショップ、ナナミカ。その名を世に知らしめたアイテムがゴアテックスステンカラーコートだ。今回はあまり知られていない、このコートのリペアサービスに注目。作り手の熱い思いとともにサステイナブルなモノとの付き合い方を考えよう。
「機能も廃れずエイジングも望める。二重の意味で100年選手です」
―ナナミカ ディレクター 今木さん・談
年月とともに実感する“綿ゴア”の真価
ナナミカの代名詞といえばゴアテックスファブリクスが使われたステンカラーコート。2008年の発売当初から、このコートのリペアサービスを続けています。
『えっ、ゴアテックスの服って修理できるの!?』と驚かれる方も多いですが、もともと過酷なアウトドアフィールドで使われてきた素材ですから、リペアできるのは当然といえば当然のことなんです。
シームテープが剥離しても専門工場で何度でもリペアできる
とはいえ、ゴアテックス自体が複雑な構造を持つ素材のため、修理には特別な技術と経験を要します。担当するのは富山県にあるゴールドウインのリペアオペレーションセンター。
費用は内容により異なりますが、シームテープの剥がれの補修や袖口の擦り切れ等にも対応します。ときには身頃に開いた大きな穴を修理することも。その場合は裏側から別のゴアテックス生地を貼って補修します。
ただ、依頼の数自体はそれほど多くありません。ゴアテックスのコアであるePTFEメンブレンシートは元来丈夫で理論的には劣化しません。メンテナンスも、ときどき表面を撥水スプレーでケアするくらいで十分なんです。
にもかかわらず、リペアサービスを続けている理由は、とにかく長く着続けてほしいという思いから。『外見はクラシックだけど機能は現代的。それでいて流行に左右されず、長年着ることができる服』。そんなディレクターとしての私の理想をカタチにしたのがこのコートなんです。
3レイヤー構造のゴアテックス
コットンとの3レイヤーにこだわったのもそのため。ゴアテックスはポリエステル生地などと組み合わせるのが一般的で、この綿ゴアはかなり珍しい仕様です。
またコットンとゴアテックスを貼り合わせるのは難しく、手間もコストもかかります。とはいえ、着続けるほどに愛着が深まっていくコートにしたかったので、自然な味わいや経年変化が楽しめる綿ゴアにこだわりました。
オンオフ問わずずっと着られるベーシックなデザインに、優れた防水透湿機能を持つゴアテックスファブリクス。そこにいざというときも安心なリペアサービスが加われば……100年選手も夢じゃない! って本気で思うんです。
nanamica[ナナミカ]
ゴアテックス ステンカラー コート
綿ゴアならではのハリが、流麗なAラインシルエットを際立たせるオンオフ兼用コートで、エイジングも十分楽しめる。腕の可動域を高めるスプリットラグランスリーブもポイントだ。リペアサービスはショップで見積もりのうえ、工場で修理を行う。納期は内容にもよるが、およそ3週間程度。6万5000円。(ナナミカ 東京)
雨をしっかり弾くから通勤にも最適
ナナミカ ディレクター
今木高司さん
ナナミカの創業メンバーであり、ゴアテックス ステンカラーコートの生みの親。トラッドやアイビー、アウトドアをこよなく愛する。
※表示価格は税抜き
[ビギン2020年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。