特集・連載
1859年~ 家具が世界に広まったトーネット革命
家具が世界に広まったトーネット革命
傑作インテリアの“実は”な実話年表 ミッドセンチュリー、バウハウス、イームズ、ヴィトラ……etc. インテリアの歴史に残る名作家具にはちゃ~んとそのワケがあるんです! そこで今回は傑作家具の歴史を振り返りつつ、見た目ではわからない“実は〇〇”な知られざる裏話を紹介します。 この記事は特集・連載「傑作インテリアの“実は”な実話年表」#01です。
トーネットが開発した、木を蒸して曲げる新技術の誕生により効率がグッと上がり、工場で大量生産が可能に。まさにここから家具産業が飛躍的に発展しました。
1859年
実は……木を蒸して曲げた最初の椅子がコレ!
THONET[トーネット]
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トーネットが開発した、蒸気で蒸した木を機械で曲げる“曲木”技術により、椅子が大量生産されるようになりました。生産効率が上がる利点だけでなく、椅子の部品を船で輸送し目的地で組み立てることも可能となり、1930年までに5000万脚!も販売されました。W43×H84×D52cm。13万1000円。(ヤマギワ)
ミヒャエル・トーネット(ドイツ)
1902年
実は……背もたれが高いのはガウンを掛けるため!?
Cassina[カッシーナ]
ヒルハウス,1
別荘「ヒルハウス」のベッドルームに置くために作られた、極端なハイバックデザインが特徴のチェア。座るのが目的ではなく、靴下の着脱やガウンを背もたれに掛けるなど、着替え時の台として行き着いた形状なのだとか。W41×H140×D35cm。35万2000円。(カッシーナ・イクスシー青山本店)
チャールズ・レニー・マッキントッシュ(スコットランド)
1905年6月30日
アインシュタインが「特殊相対性理論」を完成。
1907年
実は……デザインの発想は舞台用照明から
pallucco[パルッコ]
フォルチュニ
家用?と目を疑う斬新なデザインは、デザイナーが写真家・舞台美術など多彩な顔を持っていたから。その経験を活かし、カメラの三脚やステージ用照明をベースに、インテリア照明としてアレンジし発売された名作照明です。W93.5×H190~240×D82cm。69万円。(ルミナベッラ)
マリアノ・フォルチュニ(スペイン)
1914年
実は……美術館で絵画を鑑賞するために作られた
CARL HANSEN&SON[カール・ハンセン&サン]
KK96620 フォーボーチェア
デンマークにあるフォーボー美術館のために作られた椅子。欧州の美術鑑賞は展示品の前に座りゆっくり眺める習慣があり、なんと今でも最初に製作された18脚が展示室で使用されているというから驚き。W70×H73×D55cm。36万5000円~。 (カール・ハンセン&サン)
コーア・クリント(デンマーク)
1918年11月11日
第1次世界大戦が終結。
1925年
実は……光が眩しくない照明として誕生!
louis poulsen[ルイスポールセン]
PHランプ
裸電球だと光が直接目に入って眩しすぎるという問題に、それまでの照明思想と全く異なる、計算された形のシェードで電球を覆う「PHランプ」を発表。まさに近代照明の礎を築いたと言っても過言ではない発明でした。写真は「PH3/2ペンダント」。Φ29×H24.2cm。9万1000円~。(ルイスポールセン ジャパン)
ポール・へニングセン(デンマーク)
1925年
実は……世界で初めてスチールパイプを曲げて家具に応用!
Knoll[ノル]
ワシリーチェア
曲木技術が世に与えた衝撃と同じくらい、鋼管を曲げて家具にするのは革新的でした。当時最先端だったアドラー社の自転車ハンドルから着想を得て製作され、今でもモダンなチェアのアイコン的存在として継承されています。W79×H73×D69cm。32万9000円。(ノルジャパン)
マルセル・ブロイヤー(ハンガリー)
1927年
実は……恋人のために作った!?
ClassiCon[クラシコン]
アジャスタブルテーブル
高さ調整ができるだけでなく、ベッドなどの下に脚を入れ、どこでもトレイ代わりに使えるという多機能テーブル。4本脚というテーブルの固定観念を覆した利便性の高いテーブル、実は恋人と暮らす邸宅のベッドの上で、食事をとるために作られたもの。Φ52×H55~102cm。15万円。(インターオフィス)
アイリーン・グレイ(アイルランド)
自ら設計した、南仏の別荘「E1027」
1929年、“恋人と暮らしやすい”を第一に考えた、南仏の海沿いに建築された別荘。室内は時代に先駆けた名作家具が揃い、そのお洒落な空間は雑誌でも度々取り上げられるほど!
1929年10月24日
ブラックサーズデー(世界恐慌)
1929年
実は……20世紀最高の傑作ソファも最初は不人気
Cassina[カッシーナ]
LC2
スチールパイプの中に5つのクッションをはめ込んだシンプルな構造。今ではお洒落な高級デザイナーズチェアの筆頭として知られるソファも、木の家具が主流だった当時は、ほとんど売れなかったのだとか(汗)。W76×H66×D70cm。57万2000円~。(カッシーナ・イクスシー青山本店)
ル・コルビュジエ他(スイス)
1930年7月13日
サッカー第一回W杯ウルグアイで開催。
1932年
実は……結核患者のために作られた!
Artek[アルテック]
41 アームチェア パイミオ
建築を手掛けたフィンランド・パイミオの結核患者の療養所、その患者を少しでも癒やしたいという思いから誕生。呼吸が楽になる背もたれの角度や、一体となった背と座に成形合板を使うなど、アアルトを一躍有名にした名作です。W60×H64×D80cm。43万7000円。(アルテック)
アルヴァ・アアルト(フィンランド)
1932年4月
ダイヤル式公衆電話機が登場。
1933年
実は……後世のデザインに多大な影響を与えた画期的チェア
温かみのある無垢材を使用
Artek[アルテック]
スツール60
バーチの無垢材を直角に曲げた“L-レッグ”。このスツールが発表されると、バウハウス出身のデザイナーたちが、それまで鉄で作っていた製品を木材で作り直すに及んだほど。誕生から90年近くモデルチェンジしないタイムレスな普遍性。まさに傑作チェアと呼ぶに相応しい! Φ35×H44㎝。各2万4000円~。(アルテック)
アルヴァ・アアルト(フィンランド)
1933年
実は……製造をヤマギワに逆指名!
YAMAGIWA[ヤマギワ]
タリアセン3
誰もが一度は目にしたことがある?傑作照明、タリアセン。そこで本家の財団が復刻モデルを製作する際、世界中から選んだのがヤマギワ。巨匠の品質を実現できるのは、やはり世界に誇れる日本のモノ作りというわけ(アッパレ!)。W21×H75.2×D21cm。11万円。(ヤマギワ)
フランク・ロイド・ライト(アメリカ)
1934年
実は……自由な動きのモチーフは人間の腕!
ANGLEPOISE[アングルポイズ]
オリジナル1227
2本のアームが腕、重量バランスをとる3本のスプリングが筋肉という、腕の動きを照明の機構に取り入れて具現化! 光源を自由に移動でき、しかも必要な所で止められるだなんて。これを超えるシステムは、いまだないと称えられるほど。Φ14.2×アーム30.2+32.4cm。4万円~。(リンインクープ)
1227はバネの品番
ジョージ・カワーダイン(イギリス)
1934年
実は……大学のコンペがきっかけで誕生!
Vitra[ヴィトラ]
スタンダード
仏のナンシー大学都市のコンペをきっかけにデザイン。特徴である幅広に作られた三角形の後ろ脚は、荷重負荷のかかるこの部分を太さのある中空の鋼板にすることで椅子への負担を床に逃す構造ゆえ。これぞ構造美学を形にした一脚。W42×H82×D49cm。7万8000円。(ヴィトラ)
ジャン・プルーヴェ(フランス)
1934年
実は……デザイナーはトタン技術の開発者
TOLIX[トリックス]
Aチェア
デザイナーは元々、金属細工師職人として活躍。その経験から、薄い鉄板に亜鉛メッキを施したトタンを巧みに曲げて強度をもたせた椅子を開発。軽くて積み重ねが可能な省スペースな点も◎。W45×H85×D46cm。6万4000円。(ロイヤルファニチャーコレクション)
スタッキングしてカフェ前に置かれている
グザビエ・ポシャール(フランス)
1935年12月
地震表示に「マグニチュード」を新たに採用。
1936年
実は……不規則な形状が世界に衝撃を与えた!
iittala[イッタラ]
アアルトベース
それまでフラワーベースといえば四角か丸が当たり前だった時代に、まさかの歪んだ形状で発売され、世間は騒然! この不規則なフォルムのモチーフは湖? 等高線? オーロラ?と諸説はありますが真相は……? W19.5×H16×D18.5cm。2万2000円。(イッタラ フィスカース ジャパン)
アルヴァ・アアルト(フィンランド)
レストランで一躍有名に
自身が内装を手掛けた、フィンランドの高級レストラン「サヴォイ」で使用。
1938年
実は……20世紀で最も売れた!
CUERO[クロエ]
BKFチェア
ハンモックの原理を利用した、1枚の革シートと2つの金属のパーツを組み合わせただけの椅子。リラックス感が話題となり、’50年代だけで約500万脚も販売! また商品名より“バタフライチェア”の愛称が有名。W85×H90×D85cm。5万9000円。(ロイヤルファニチャーコレクション)
アントニオ・ボネット他(アルゼンチン)
※表示価格は税抜き
[ビギン2020年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。