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今さら聞けないサングラスの歴史〈前編〉

まだまだ猛暑と照りつける太陽。サングラスなしでの外出など、もはや考えられないほど。眩しさを抑え、紫外線をカットするという機能はもちろん、ファッション的な面でもサングラスはかつてなく重要な役割を担うアイテムになりました。しかし、改めてサングラスはどうやって生まれ、現在のように普及していったのでしょう。グローブスペックス代表の岡田哲哉氏とオプテックジャパンの川崎浩司氏に伺いました。

(上)1940年代のヴィンテージで、アメリカン・オプティカルのパイロットグラス。卓越したレストア技術によって新品同様に。ザ・スペクタクル/7万1000円。(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377 (中)イタリアのラッティ社が手掛けていた頃のペルソールは、現在でも根強いファンが多い。こちらは’70年代のヴィンテージで#649モデル。5万4000円。(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377 (下)’80年代のレイバンのヴィンテージで、まだボシュロムの刻印が入る。アヴィエイターの流れを汲むシューターというモデル。ザ・スペクタクル/21万2000円。(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377

 

現代のサングラスの源流は第二次世界大戦に遡る

今や誰もが当たり前のように使っているサングラスですが、一般的に広まったのは第二次大戦後のこと。それまでにも、メガネに色付きレンズを入れてサングラスとして使うこともありましたが、ごく限られた人のみだったのです。それは20世紀初頭まで、レンズが高額だったことが要因です。眩しさを抑え、目に有害な紫外線を遮断する役割のサングラスは、航空パイロットのために進化したのです。特に大量の戦闘機が投入された第二次大戦において、サングラスの開発と量産は急務であったのです。

「現在一般的になったサングラスの源流は、やはりパイロット用サングラスと言えるでしょう。特に大きな功績を残したのが、ミルスペックの代表格でもあるアメリカン・オプティカル、そしてレイバンとペルソールです」(岡田氏)

アメリカの総合光学製品メーカーであったボシュロム社が、1937年にレイバンを設立。空軍へサングラスを納入し、マッカーサーでお馴染みのティアドロップ型をはじめ、数種の傑作パイロットグラスを開発しました。ヨーロッパでは、イタリア空軍にも納入していた光学製品メーカーのラッティ社が、1938年に設立したペルソールが有名。第二次大戦後、両社が生み出したパイロット用サングラスが一般市場にも流通し、映画俳優や文化人がこぞってサングラスを掛けるようになると、一般層にも急速に広まっていきました。

 

フレームはメタルからプラスチックへ

当然ながらメガネの歴史はサングラスにも及びます。第二次大戦後から’60年代までのアメリカ黄金期に、現在クラシックと呼ばれているメガネの定番デザインが確立されました。それまでフレームは金属製がほとんどでしたが、物性が安定して着色が容易、かつ大量生産に向いたプラスチックの加工技術が飛躍的に向上したからです。さらに多品種少量生産にも対応できるアセテートが、フレーム素材として利用されるようになります。いわゆるウェリントンやボストン、サーモント型のメガネが、大小さまざまなメーカーから生み出され、カラーレンズを入れたサングラスも広まっていきました。

「こうしたプラスチックフレームの代表作であり、サングラス史上に残る傑作が、1953年にレイバンから発売されたウェイファーラーです。ボブ・デュランをはじめとするミュージシャンや俳優に愛用され、大ヒットしました。さらに、レイバンのライバル会社であったアメリカン・オプティカルからは、ウェイファーラーによく似たサラトガというモデルが発売され、ジョン・F・ケネディが愛用していたことでも知られます。また、俳優のスティーブ・マックィーンが着用していたペルソールも、現在まで続くクラシックデザインの傑作を数多く残しました」(岡田氏)

 

レイバン
RAYBAN /レイバン
こちらは1961~’89年に製造されたヴィンテージをレストアした、ザ・スペクタクルのウェイファーラー。15万1000円。(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377
※現行モデルは2万1000円。(問) ミラリ ジャパン℡03-3514-2950

 

アメリカン・オプティカル
AMERICAN OPTICAL/アメリカンオプティカル
ジョン・F・ケネディが愛用していたのは、ウェイファラーよりも全体的に細身のシェイプが特徴のサラトガ。こちらは希少なグレー系のデミ柄(マーブル模様)。参考価格9万3000円〜13万3000円。(問)ソラックザーデ℡03-3478-3345

 

ペルソール
PERSOL/ペルソール
映画『華麗なる賭け』の劇中はもちろん、マックィーンがプライベートでも愛用していたのは、ペルソール の714というモデル。こちらは、ほぼ当時そのままを再現した現行品で折り畳み式。3万5000円。(問)サンライズ℡03-6427-2980

 

アメリカ主導の時代からデザイナーズへ

’60年代から’70年代にかけての大きな出来事として、新素材の登場と西ドイツブランドの隆盛がありました。オートバイやスキー用ゴーグルを専門的に手掛けていたオーストリアのカレラ社が、1964年に発明したオプチルがそれに当たります。セルロイドやアセテートよりも物性が安定して軽量、そして芯金がなくても作れることから、メガネやサングラスの新素材として大きな注目を集めるようになります。

 


テンプルにクロコダイル柄をあしらったクリスチャン・ディオール(右)と、ストライプ柄フレームのダンヒル(左)の’70年代のヴィンテージ。ともに素材はオプチルで、経年変化によるへこみや白濁もなく、非常に状態がいい。クリスチャン・ディオール6万7000円、ダンヒル5万2761円。以上(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377

 

「オプチルを発明したウィルヘルム・アンガー氏が、クリスチャン・ディオールとダンヒルの名を冠したデザインの製造権を得ていたので、この2ブランドがアイウェアの世界に於ける最初のライセンスブランドだったのです。こうしてこの2ブランドが世界中の眼鏡店で取り扱われるようになりました。また、この頃はカール・ツァイス、ローデンストック、マールヴィッツ・ハウザーといった西ドイツのブランドが人気でした。レンズとフレームともに高品質で、個性的なデザインのサングラスが次々と生み出され、アメリカブランドを凌駕するようになりました」(岡田氏)

「’60年代までのメガネとサングラスはガラスレンズのみでしたが、CR39レンズと呼ばれるプラスチックレンズが次第に普及していきました。ガラスレンズの染色や加工は非常に難しく、レンズ径も限られていたのですが、CR39レンズの登場によって、より大型なフレームデザインにも対応できるようになったのです」(川崎氏)

 

ボストン、ウェリントンという名称が生まれる

欧米のトレンドは上記の通りですが、’70年代前半の日本はまだトラッド人気が根強く残っていました。アイヴァンから派生した、アイビーリーガーズという学生向けブランドが1975年に発売されると、一大ヒットとなりました。このブランドの成功が、ファッションとしてのメガネの重要性を知らしめるとともに、日本のアイウェア業界におけるエポックメイキングな出来事をもたらしたのです。

「ウェリントン、ボストンというフレームの名称は、当時アイヴァンのデザインと企画を手掛けていた山本哲司会長が名付けたものです。アイビーリーガーズを売り出す際に、丸みを帯びた逆三角形型にはボストン、スクエア型にはウェリントン、横長のスクエア型にはレキシントンというように、アメリカの土地名とレンズシェイプを結び付けたのです。いずれも○○トンが共通するように名付けたのは、山本会長のユーモアです。これが日本の眼鏡業界に広まり、いつの間にか定着して現在まで続いています。残念ながらレキシントンは定着しませんでしたが(笑)。これらのフレーム名称は日本独自のもので、海外では全く通用しません。ちなみに海外でボストン型は、パントまたはP3と呼ばれています」(川崎氏)

 

クラシックなフレームデザインはこの4つ

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ボストン型EYEVAN 7285/アイヴァン 72854万7000円。(問)アイヴァン 7285 トウキョウ℡03-3409-7285

ボストン型
EYEVAN 7285/アイヴァン 7285
4万7000円。(問)アイヴァン 7285 トウキョウ℡03-3409-7285

ウェリントン型EYEVAN 7285/アイヴァン 72854万7000円。(問)アイヴァン 7285 トウキョウ℡03-3409-7285

ウェリントン型
EYEVAN 7285/アイヴァン 7285
4万7000円。(問)アイヴァン 7285 トウキョウ℡03-3409-7285

サーモント型MOSCOT/モスコット3万1000円。(問)モスコット トウキョウ℡03-6434-1070

サーモント型
MOSCOT/モスコット
3万1000円。(問)モスコット トウキョウ℡03-6434-1070

ボスリントン型MOSCOT/モスコット3万円。(問)モスコット トウキョウ℡03-6434-1070

ボスリントン型
MOSCOT/モスコット
3万円。(問)モスコット トウキョウ℡03-6434-1070

ちなみに「ボスリントン」という名称はボストン型とウェリントン型のハーフということで、本誌Beginが命名!!

 

’80年代にヨーロッパブランドが急成長

こうしてクリスチャン・ディオールとダンヒルを筆頭に、ファッションブランドが次々とアイウェア分野に進出していきます。また、’70年代後半から’80年代前半にかけては、カレラ、ポルシェ デザイン、アルピナ、カザールといったヨーロッパブランドが人気を博すようになります。特にアルピナはマイケル・ジャクソンが愛用していたことで有名で、ハービー・ハンコックはカレラの大型サングラスを好んで着用していました。

 

「’80年代のアメリカはレイバン全盛の時代で、サングラスでは圧倒的なシェアを誇っていました。一方のヨーロッパや日本では、アルマーニやジャン=ポール・ゴルチェなど、ブランドアイデンティティが反映されたライセンスブランドが猛威を振るうようになります。また、マツダ、バダという日本発のアイウェアブランドが、海外で高い評価を得たのもこの頃でした」(岡田氏)

’80年代に流行したサングラスといえば、こちらのようなビッグシェイプ。(上)’80年代前半にヒットした、カザールのタルガというモデル。大きくカーブしたフロントフレームと、ブリッジ一体型の大型ノーズパッドが面白い。5万4000円、(中)マイケル・ジャクソンが愛用したことで有名になったのがアルピナ。ティアドロップ型フレームにゴールドのリベットをあしらった強烈なデザイン。7万7047円、(下)かなり横長のグラデーションレンズを使ったカレラのヴィンテージ。ブリッジの間隔がほぼなく、左右のレンズがつながったようなユニークなデザイン。5万6000円。以上(問)グローブスペックス ストア℡03-5459-8377

 

アイウェア専業ブランドが乱立した’90年代

’90年代に入ると、アラン ミクリ、ロバート ラ ロッシュといったアイウェア専業のデザイナーズブランドが頭角を表すようになります。近未来的なデザインを得意とするクリスチャン・ロスを含め、アイウェア専業の独立系ブランドが次々とデビューしました。ファッションアイテムとしてのサングラスの重要性が高まり、人と違うデザイン、ブランドを追い求めました。

「たくさんのブランドが乱立して、アイウェア業界を取り巻く状況が混沌としていました。複雑で難易度の高いデザインが評価され、チャイというドイツのブランドや、テオというベルギーのブランド、北欧デザイナーの独立系新興ブランドが注目されたのも’90年代の特徴です。ファッショントレンドとは関係なく、斬新なデザインや奇抜さで競い合うような現象がしばらく続き、2000年代前半に落ち着いてきたという印象です」(岡田氏)

 

’00年代後半のクラシック回帰から現在

ヒップホップ系アーティストがカザールを再評価するなどの動きが一部で見られ、デザイナーズブランドとアイウェア専業ブランドがそれぞれ人気を誇っていました。しかし、’00年代後半にファッション界でトラッド復権とも言える動きが注目され、次第にクラシックなメガネとサングラスが再評価されるようになりました。

「グローブスペックスは1998年にオープンしました。我々は当初から本物のクラシックスタイルを提案してきました。ヴィンテージを卓越したレストア技術で現代に蘇らせるスペクタクルズを現在まで取り扱っているのはそのためです。何か問題があった場合でもパーツ交換もしくは、丸ごと一本交換するサービスが完備されているブランドです。2010年以降は、ウェリントン、ボストン、サーモントといったクラシックなフレームデザインが再評価され、現在ではすっかり当たり前のものとして受け入れられています。特にメタルフレームやコンビネーションが人気で、オリジナルブランドのグローブスペックスでも、こうしたデザインを豊富に取り揃えています」(岡田氏)

「メガネもサングラスも、5年前までは圧倒的にウェリントン型が人気でしたが、現在はボストン型に集中しています。’90年代後半から’00年代は、全く売れなかったメタルフレームやコンビネーションのボストンが受け入れられているのも特徴です。メガネやサングラスのトレンドは、ファッショントレンドとかなり時間差があったのですが、ようやくその差が縮まってきたのかもしれません。また、ボストン型人気とともに、ガラスレンズを再評価する動きが一部で見られるのも興味深いですね」(川崎氏)

 
 

※表示価格はすべて税抜き

 
サングラス選びは形&色が重要、そしてコダワるならヴィンテージか!?〈後編〉

 


写真/植野 淳 構成・文/川瀬拓郎 スタイリング/榎本匡寛 イラスト/田中 斉

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