コードバン財布は抜群に美しい!……けど、アレって高いしキズにも弱いんだよなぁ……。この先入観を払拭すべく立ち上がったデザイナーの奮闘記をご紹介。史上初?となる型押しコードバン財布の誕生秘話に迫ります。
 

イメージ

傷もシミも価格も気にならないように型押ししてみました
(談・クベラ 9981 デザイナー 鶴見正臣)

丁寧にお手入れしながら使い込めば艶がどんどん増していく……けどその反面、価格が高めだしキズに弱くてデリケート。これが、多くの人がコードバンに対して抱いているイメージではないでしょうか。

コードバン財布を製作しようと思ったとき、まず考えたのは、こうした世間一般に浸透した常識を覆すこと。

艶が増す、という特性は活かしたまま、価格は手頃でキズも気にせずガシガシ使える、イイことずくめの財布を作ろうと思ったんです。

そこで最初に始めたのが理想の革探し。まだ見ぬ名革を発掘するため、国内のコードバン専業タンナー、レーデルオガワを訪ねることにしました。

ここは革好きなら誰もが知る名門。門外不出のレシピで染色&仕上げられたコードバンは、個人的に世界で一番色艶が美しいと思っています。

が、やっぱり優秀な職人が手塩にかけて仕上げたコードバンは値が張るもの(苦笑)。懇意のスタッフに相談しながら、一緒に工場を歩き回って目ぼしい革を物色していると、ふと片隅に置かれたブルーシートが目に入ったんです。

中を見せてもらったら、見るからに良質なコードバンが積まれてるじゃありませんか! ただよ〜く見ると、どれも採り都合が悪くて皮革製品メーカーが敬遠する小ぶりサイズの革ばかり。スタッフさんも“この大きさだとどこも買ってくれないんです(萎)”と、困ってる様子でした。

そこで、図々しくも“全部買うからディスカウントしてください!”と交渉し(苦笑)、かなりのお得プライスで購入させていただくことになったんです。

こうしてまず“良質なコードバン=高い”の壁を取り除くことができたんですが、“デリケート”という弱点は残ったまま。そこで次に思いついたのが“型押し”という手法だったんです。

が、そもそもコードバンに型押しなんてできるかどうかわからなかったので、東京・墨田区にある国内有数の型押し専門業者さんに相談することに。すると、やっぱり“コードバンになんて型押ししたことないよ”と(苦笑)。

ただ熱意を伝えると協力してくださることになり、そこから試行錯誤の日々が始まりました。革の種類によって型をプレスする際の温度や圧力はまったく異なるもの。

職人さんに何度も何度も調整を繰り返してもらい、コードバンに最適な型押し手法を導き出してもらったんです。こうしてようやく完成したのが、おそらく史上初?の型押しコードバン。

前述の通り、使うほど艶は増すのに型押しのおかげでキズは目立たないと、まさにパーフェクトな名革。これを国内の実力派工場で縫製し、全工程をジャパンメイドにこだわった型押しコードバン財布が完成したんです。

本来は捨てられる小判コードバンを使う。さらにそれを型押しする。この2つに挑戦したからこそ、“高い”と“繊細”というコードバンの常識を覆せたのではないでしょうか。

クベラ 9981 型押しコードバンシリーズ
A・3つ折り財布/B・マルチカードケース/C・キーケース付き財布

KUBERA 9981[クベラ 9981]
型押しコードバンシリーズ

採り都合が悪いため、生産効率を重視する皮革製品メーカーから敬遠されがちな小判革を採用。それを型押しすることでキズに強く価格も手頃に。3つ折り財布各2万8000円、キーケース付き財布2万8000円、マルチカードケース各1万7000円。(林五 プレスルーム)

内張りは全面レザーでカードスリットも豊富
内張りは全面レザーでカードスリットも豊富

型押しのおかげでキズが目立ちにくい!
型押しのおかげでキズが目立ちにくい!

鶴見正臣/クベラ 9981 デザイナー

クベラ 9981 デザイナー
鶴見正臣

25年以上にわたって皮革製品に携わってきたスペシャリスト。2018年に「クベラ 9981」をスタートし、企画とデザインに携わる。各工程の工場へ、自ら頻繁に足を運ぶ現場主義者。

 
※表示価格は税抜き


[ビギン2019年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

特集・連載「最小投資のハッピーライフ実例」の最新記事

傷もシミももう気にならない! 史上初!?型押しコードバン財布の誕生秘話

Begin Recommend

facebook facebook WEAR_ロゴ